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大団円
しおりを挟むシスターにお茶を入れてもらい、大人数のテーブル席が全て埋まったその中央に座らされたフェールは目を真っ赤にはらして鼻をすする。
一人で孤児院に残っていた彼女の話を聞いて、それぞれがフェールを慰め、家を守ってくれてありがとうとお礼を言った。
少し落ち着いたフェールは疑問を口にする。
「でも何でみんな同じタイミングで帰ってきたの??」
聞くと、皆首を捻って分からないと答える。
「急にここが懐かしくなって戻らなきゃって思って」
「うん、僕も同じ」
「私もよ! 急にあの丘に行きたくなって、気づいたらここに来てたわ」
子供達の話に、シスターも頷く。
「実は私もです。意識がはっきりしたら突然、ここに戻らなければと決意して。フェールの元に行かなければと思ったんです。そうしたら、怖いものが頭から消えていました」
「え。おかあさんも!? 僕もフェールに逢いに行かなきゃ! って思った」
すると残りの子供達も「私も!」「僕も!」「俺も!」と手をあげる。
「そんなことって」
フェールは出来事についていけず、呆然としていた。
「嘘、みたい」
一人だった家に、家族が揃った。
欲しかったぬくもりが現実のものとなった。
「夢じゃ、夢じゃないよね」
「そうだよフェール。夢じゃないよ」
「ちゃんと戻ってきたのにー」
「ねー、おかあさん」
「フェールは嘆き岩に負けず、この家を守ってきたのです。いつか家族が揃う事を夢見て。その願いが叶った事が信じられないのです。だから、みんなで抱きしめてあげましょう!」
「だねー!」
フェールはまたもみくちゃにされた。
暖かい一肌と笑顔に囲まれて、
「夢じゃ、ないんだね」
そう確信してフェールはやっと笑顔を浮かべた。
家族が揃ってウキウキ気分で廊下を歩く。
ふと、壁に掲げられている立派な額縁に描かれた人物画に視線を止めた。
白い髭に包まれ、優しそうな金色の瞳を持っている威厳がにじみ出ている老人だ。彼は神々しい銀色のローブを着て、先端が5つに割れている杖を持っている。
「そういえば、この服って」
あの少年が着ていた服と持っていた杖にそっくりだ。と思った。
脳裏に彼の最後の言葉が蘇る。
『目の前であれだけしっかり信仰されたら、なるほど、君を愛おしく感じてしまうね』
「あ!?」と、声をあげる。
「霧を発生させたり、丘の上だけ暗くしたり、普通の人じゃできないけど、もしかしてオーさんは」
フェールは興奮してその場をぐるぐると回った。
「もしかして、名前だと思っていたけど、オーじゃなくて、王? だったら、空飛ぶ魚も人語を話していた鳥も説明がつくわ。あの人達は神の騎士だったのよ。おとぎ話では神の騎士が人間界に降り立つ姿は神獣って伝えられてる。でもアレ神獣だったの? 凄く可愛い姿だったけど」
感情豊かな魚を思い出し、フェールはクスッと笑い、ネックレスを握りしめる。
「だったら、セルジオさんに王と呼ばれていたラルさんは、もしかして調和の……」
「フェ―ル何してるの? 早くおいでよ~!!」
呼ばれてハッと我に返る。
「あ、う、うん! 今行く!!」
答えはもう分からないが、多分そうなんだと思う。
彼女は調和の王がかかれた絵に深々とお辞儀をすると、家族のもとへ向かった。
「お待たせ」
「もー、遅いよー。そういえば、静かね。嘆き岩どうなった?まだある?」
フェールは首を横に振った。
「えへへ。もう無いよ! だから静かでしょ!」
「良かった! 嘆いていたら戻らない所だったもん。あの岩どうなったの? 何が原因であんな音だしてたんだろうね」
「教えてあげよっか」
フェールが得意げに言うと、兄弟たちは「うんうん」と頷く。
「それはね」
フェールは不思議な出会いと体験した出来事。俄かには信じられない夢物語のような話を始めた。
その昔、丘の上に突然現れた、嘆き岩の真実の物語である。
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