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星の瞬く洞窟にて
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そこは満天の夜空の中だと錯覚させるような洞窟だった。
巨大な空間が広がり小宇宙と称しても遜色ないほど、様々な色の光がいくつも瞬き、交差していた。
満天の空を写したその洞窟の中央に、一人の青年が佇んでいた。
年齢は20代後半。高身長で体つきがよく、顔が小さい。
空色の魔術師ローブを纏い、腰まで届く銀色の長髪が水中にいるようにふわふわと揺れている。
目が細く精悍な顔つきであるが、今は険しい表情を浮かべている。ぴんと体に力を入れて、両腕は常に前方にある直径20センチの球体の前に添えられていた。
球体には赤、青、薄緑、茶色、黒、白、アクアブルー、深緑、金色、空色の10種類の色があり、混ざりあわず、オイルタイマーのようにゆっくりと浮遊を繰り返していた。
風の流れに添うように規則正しい動きを行いながら、時折戯れに互いに混じり合い、離れを繰り返し、均等に己の色を示している。
光が瞬くたびにグラスハープの音階が球体から奏でられ、洞窟に響き渡る。
夜空の演奏会を模様している幻想的で優美な空間で、その場所に佇む青年はさながら指揮者のようでもあった。
「ふぅ」
相当な集中力を使うのだろう、額に小さな汗を浮かばせながら青年が小さく息をつく。
ぐにゃ。と球体が少し歪んだ。
グラスハープの音に不快なノイズが雷鳴のように鳴く。
「くっ!」
青年は反射的にすぐに力を注ぐ。
歪んだ球体が元に戻り、綺麗な音が響き始めた。
「……はぁ。はぁ。危なかった」
青年は苦悶の表情を浮かべて、先ほどより増えた額の汗を袖で乱暴にぬぐう。
少し肩の力を抜くだけで球体はすぐに形を変えてしまう厄介な物だ。
全ての力を注がなければ形を均等に保てないため疲労は蓄積する一方。休憩する時間どころか、一息つく暇すら許されない。
己の力量を否応なくみせつけられるようだ。
「も、もう……くっ。しかし、耐えなければ……」
青年は倒れそうになる体に鞭打ちながら頭を振った。ここで力尽きるわけにはいかない。
球体を維持しなければ世界の理が崩れてしまう。
身を削ろうが、命を削ろうが、役目を与えられた以上維持し続けなければならない。
青年がそれを行える期間はおよそ一年。
その間は寝ることも休むことも一切行わず、不眠不休で力を注いでいた。
「くっう。力が……」
その一年が近付いてきて、力の枯渇を感じ始めている。
いつ意識を失うか分からない。
「ううう……自分はもう、限界です」
泣き言を言っても仕方ないと思いつつも、主の帰還を求める言葉を口にする。
「早く……早くお戻りください………王よ」
貴方の姿を見たい。笑顔を見たい。そして触れて話がしたい。
そう強い願望を浮かべると、幾分か気分がマシになった。
虚ろになっていた目に力強さが戻る。
「弱音を吐くまい。今は王を信じて、耐えるのみ……っ!」
青年は歯を食いしばる。強く噛み過ぎたせいで唇を噛み、一筋の血液がツゥっと顎下に伝わった。
巨大な空間が広がり小宇宙と称しても遜色ないほど、様々な色の光がいくつも瞬き、交差していた。
満天の空を写したその洞窟の中央に、一人の青年が佇んでいた。
年齢は20代後半。高身長で体つきがよく、顔が小さい。
空色の魔術師ローブを纏い、腰まで届く銀色の長髪が水中にいるようにふわふわと揺れている。
目が細く精悍な顔つきであるが、今は険しい表情を浮かべている。ぴんと体に力を入れて、両腕は常に前方にある直径20センチの球体の前に添えられていた。
球体には赤、青、薄緑、茶色、黒、白、アクアブルー、深緑、金色、空色の10種類の色があり、混ざりあわず、オイルタイマーのようにゆっくりと浮遊を繰り返していた。
風の流れに添うように規則正しい動きを行いながら、時折戯れに互いに混じり合い、離れを繰り返し、均等に己の色を示している。
光が瞬くたびにグラスハープの音階が球体から奏でられ、洞窟に響き渡る。
夜空の演奏会を模様している幻想的で優美な空間で、その場所に佇む青年はさながら指揮者のようでもあった。
「ふぅ」
相当な集中力を使うのだろう、額に小さな汗を浮かばせながら青年が小さく息をつく。
ぐにゃ。と球体が少し歪んだ。
グラスハープの音に不快なノイズが雷鳴のように鳴く。
「くっ!」
青年は反射的にすぐに力を注ぐ。
歪んだ球体が元に戻り、綺麗な音が響き始めた。
「……はぁ。はぁ。危なかった」
青年は苦悶の表情を浮かべて、先ほどより増えた額の汗を袖で乱暴にぬぐう。
少し肩の力を抜くだけで球体はすぐに形を変えてしまう厄介な物だ。
全ての力を注がなければ形を均等に保てないため疲労は蓄積する一方。休憩する時間どころか、一息つく暇すら許されない。
己の力量を否応なくみせつけられるようだ。
「も、もう……くっ。しかし、耐えなければ……」
青年は倒れそうになる体に鞭打ちながら頭を振った。ここで力尽きるわけにはいかない。
球体を維持しなければ世界の理が崩れてしまう。
身を削ろうが、命を削ろうが、役目を与えられた以上維持し続けなければならない。
青年がそれを行える期間はおよそ一年。
その間は寝ることも休むことも一切行わず、不眠不休で力を注いでいた。
「くっう。力が……」
その一年が近付いてきて、力の枯渇を感じ始めている。
いつ意識を失うか分からない。
「ううう……自分はもう、限界です」
泣き言を言っても仕方ないと思いつつも、主の帰還を求める言葉を口にする。
「早く……早くお戻りください………王よ」
貴方の姿を見たい。笑顔を見たい。そして触れて話がしたい。
そう強い願望を浮かべると、幾分か気分がマシになった。
虚ろになっていた目に力強さが戻る。
「弱音を吐くまい。今は王を信じて、耐えるのみ……っ!」
青年は歯を食いしばる。強く噛み過ぎたせいで唇を噛み、一筋の血液がツゥっと顎下に伝わった。
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