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第九話
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目を開けた瞬間、見慣れた路地裏に戻ってきた。
それどころか、路地を抜けて目指していた大通りに出ている。夕飯の買い物に、学校の帰宅にと、戻っていく人々の姿が目に入る。
「え? あれ……?」
まるで狐につままれたような気分だったが、すぐに我に返った。
「ひ、ひよこさん!? それにおにいさんは!?」
少年は辺りを見回して探すが、着物姿の人間は誰もいない。途方に暮れて立ち尽くしていたが、家に帰ることを思い出し、とぼとぼと知っている道を歩く。
自宅の玄関に着いてチャイムを押すと、中から40代の女性が顔を覗かせる。不安そうにしていたが、少年を見ると安堵した表情へ変わった。
「お帰り。お使いありがとう」
「うん! ただいまお母さん!」
少年はエコバックを母親へ差し出す。
「卵、買ってきたよー!」
「どれどれ?」
エコバックの中身を確認した母親は「あ」と声に出す。少年は不思議そうに「どうしたの?」と聞くと、母親は少し苦笑いをした。
「卵が一個、割れちゃってるわ」
「えー!? 見せてー!?」
少年は母親からエコバックを受け取って中身を見ると、有精卵と書かれた卵パックの端っこにある卵が一つ、割れている。
「ほんとだ……」
しょんぼりした少年に、母親はフォローを入れた。
「卵は割れやすいから仕方ないわよ。どこかでぶつけたんでしょう」
「そんなぁ……」
「ほら。貸して。その卵はすぐ料理しないとダメになっちゃうからね」
「はぁい」
少年はエコバックを返し、母親と共に玄関からリビングへ移動した。
それどころか、路地を抜けて目指していた大通りに出ている。夕飯の買い物に、学校の帰宅にと、戻っていく人々の姿が目に入る。
「え? あれ……?」
まるで狐につままれたような気分だったが、すぐに我に返った。
「ひ、ひよこさん!? それにおにいさんは!?」
少年は辺りを見回して探すが、着物姿の人間は誰もいない。途方に暮れて立ち尽くしていたが、家に帰ることを思い出し、とぼとぼと知っている道を歩く。
自宅の玄関に着いてチャイムを押すと、中から40代の女性が顔を覗かせる。不安そうにしていたが、少年を見ると安堵した表情へ変わった。
「お帰り。お使いありがとう」
「うん! ただいまお母さん!」
少年はエコバックを母親へ差し出す。
「卵、買ってきたよー!」
「どれどれ?」
エコバックの中身を確認した母親は「あ」と声に出す。少年は不思議そうに「どうしたの?」と聞くと、母親は少し苦笑いをした。
「卵が一個、割れちゃってるわ」
「えー!? 見せてー!?」
少年は母親からエコバックを受け取って中身を見ると、有精卵と書かれた卵パックの端っこにある卵が一つ、割れている。
「ほんとだ……」
しょんぼりした少年に、母親はフォローを入れた。
「卵は割れやすいから仕方ないわよ。どこかでぶつけたんでしょう」
「そんなぁ……」
「ほら。貸して。その卵はすぐ料理しないとダメになっちゃうからね」
「はぁい」
少年はエコバックを返し、母親と共に玄関からリビングへ移動した。
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