裏路地の道

森羅秋

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第八話

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 ヒヨコは青年の手から飛び降りて、少年の肩に止まり、すりっと頬に体を擦り寄せる。

 「ありがとね」

 もふっとした感触が頬に伝わると、すぐにヒヨコは肩から飛び立ち、青年の肩へ止まる。

 「君に出会った時から、僕はこちら側なんだ」

 「ひよこさん! やだよ! 一緒にいてよ!」

 ぽろぽろと泣きながら、手を伸ばしてヒヨコを握ろうとする少年。青年の体を登ろうとして足をかけたところで、容認されず肩を押さえられ制させる。

 「やだよー! やだよおおお!」

 勘尺玉がはじけたように泣き叫ぶ少年に、ヒヨコは困った様に青年を見ると、青年は首を傾げた。
 ヒヨコは「うーん」と唸りながら少年を見下ろして、ピンと閃く。

 「じゃぁさ! こうしよう! 僕と一緒に居たいなら、僕を食べて!」

 「え!?」

 驚いて泣くのをやめる少年。
 
 「食べる? どうやって食べるの? 焼くの?」

 「煮ても焼いても、今なら生も美味しいよ」

 「生……?」
 
 ヒヨコを丸かじりするシーンが浮かんで、少年が引きつった。驚きすぎて涙が引っ込む。

 「生は……」

 「なんでもいいよ。君の一部になるなら、きっと悪くない」

 ひよこは丸い目を細くして、最後に「ぴよ」と鳴いた。
 そのままスッと、姿が消える。
 
 「ひよこさん! どこいったの?」

 少年は青年の周りをぐるぐる歩いて、足元を見たり肩を見たり、青年の手を取ったり袖や羽織を捲ってヒヨコを探すが、どこにもいない。

 「おにいさん、ひよこさんどこへ行ったの?」

 探してもいないと判断して、少年は青年に向き直る。
 すると、青年は一本指を少年の額に当てた。

 「紛れし者。路に戻るがいい」

 きょとんとして、瞬き一回。
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