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第五話
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夕日が落ちて間がないのか、明るいがどこか暗い印象である。
近くで水の音が聞こえ、少年の腰や身長を覆い隠すほどの草が至る所にある。
路地から道は続いているが、大人二人分の幅の獣道だ。道から少し脇に古びた木の電柱がぽつぽつと、道を印すように等間隔で立っていた。
「えー? なにここ……」
困惑しながら少年は周囲をぐるりと見まわす。町の中から突然見知らぬ場所に出たので、夢かと思って頬をつねる。
「痛い!! 夢じゃない?」
ヒヨコがため息を吐いた。
「あーあ。結局、こんな奥まで入っちゃった……。もしかして僕の責かな……」
「あ! あそこに人がいる!」
三メートルほど先にある、電柱に寄りかかるように着物に羽織を着た、十代後半と思われる青年が電柱にもたれながら立っていた。
黒い狐面を被り、黒いブーツを履いて、腕を組んで誰かを待っているように佇んでいる。
「聞いてみよう!」
「え!? まって!?」
「あのーーー!! おにいさーーん!!」
ヒヨコの慌てる声を完全無視して、少年は駆けだして青年の傍へ向かう。声に気づき、青年はこちらを振り向いて姿勢を正した。
「まってーーー! 止まってー!」
「こんにちは! あの、ここはどこですか?」
ヒヨコの制止もむなしく、少年は青年の正面に立つと颯爽と話しかけた。
青年は少し間を空ける。戸惑っている空気を出すが、少年に通じていない。
「ここはどこですか? ぼく迷子になっちゃったんです」
青年は怪訝そうに、ジロジロ少年とひよこを観察して小さく首を傾げたが、重々しく口を開いた。
「逝けるモノが通る路」
「いけるもの?」
「不運な小僧。生きながら逝く路を選ぶとは……」
「いきながらいく?」
理解できない少年の腕を、年が掴もうとするが、ヒヨコがぴょんと飛び跳ねて青年の手に止まった。
近くで水の音が聞こえ、少年の腰や身長を覆い隠すほどの草が至る所にある。
路地から道は続いているが、大人二人分の幅の獣道だ。道から少し脇に古びた木の電柱がぽつぽつと、道を印すように等間隔で立っていた。
「えー? なにここ……」
困惑しながら少年は周囲をぐるりと見まわす。町の中から突然見知らぬ場所に出たので、夢かと思って頬をつねる。
「痛い!! 夢じゃない?」
ヒヨコがため息を吐いた。
「あーあ。結局、こんな奥まで入っちゃった……。もしかして僕の責かな……」
「あ! あそこに人がいる!」
三メートルほど先にある、電柱に寄りかかるように着物に羽織を着た、十代後半と思われる青年が電柱にもたれながら立っていた。
黒い狐面を被り、黒いブーツを履いて、腕を組んで誰かを待っているように佇んでいる。
「聞いてみよう!」
「え!? まって!?」
「あのーーー!! おにいさーーん!!」
ヒヨコの慌てる声を完全無視して、少年は駆けだして青年の傍へ向かう。声に気づき、青年はこちらを振り向いて姿勢を正した。
「まってーーー! 止まってー!」
「こんにちは! あの、ここはどこですか?」
ヒヨコの制止もむなしく、少年は青年の正面に立つと颯爽と話しかけた。
青年は少し間を空ける。戸惑っている空気を出すが、少年に通じていない。
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