27 / 33
第一章 馴染むところから始めます
27.異能にまつわる談話
しおりを挟む
津賀留はとっても不安そうに息吹戸を見つめたあと、説明をまとめるために少し黙る。
第一印象は大事だ。しかしどう説明してもちょっとした悪口になってしまいそうだった。
「東護龍弥さんです。討伐対策部第一課のエースで……」
言葉を濁すと、息吹戸が「東護龍弥さん?」と復唱した。
誰だっけと言わんばかりに「???」を頭に浮かべて腕を組んでいる。
津賀留は眉間に手を当てて呻いた。
「お忘れですか?」
信じられないという気持ちが含まれているのを感じて、息吹戸は苦笑いを浮かべて頷く。
「うん。誰?」
「東護さんは同じ職場の男性で……目立つ方です。兎に角イケメンで。女性にとても人気です。でもこう言っては身も蓋もないですが、性格がちょっと、難ありというか。ええと」
津賀留はまた言葉を区切った。
「強くて、自分にも他人にも厳しい方です。自分と同じレベルでないと許せないというか。意見の相違を認めないというか……」
「津賀留ちゃん虐められてるの?」
「いいえ滅相もない! 寧ろ守られています。申し訳ないくらいに!」
歯切れの悪さに尋ねると、慌てて否定された。
それならいいけど。と呟く。
「寧ろ、息吹戸さんが嫌われているというか。お互いが嫌っているというか」
「そーなの? 分かった」
職場で好かれていないのは明白だ。特に驚く事はないが、津賀留の様子から推測するに、いざこざや衝突する程度はありそうだなと思案する。
あっさりと頷かれてしまったので津賀留は返答に困った。
「ええと。それで……東護さんは和魂を扱います。最も得意なのは水神の力と聞いています」
「なんと!?」
ヲタ心をくすぐられた息吹戸は気持ち分、前のめりになると、津賀留は吃驚して背中をそらせた。
一般的備わっている、ありふれた力に食いつきが良いとは予想外だ。
「水神ってことは神霊を扱える人ってことかー! 凄いねこの世界! 能力も神聖な感じがする!」
神の子孫なので『神の御魂・神の能力』を使えるとのだと瞬時に理解する。
「なら荒魂を扱える人もいるってことだね」
「あ、はい。玉谷部長が荒魂と和魂の両方と神獣を扱える方です」
「わぁ。魔術系召喚士みたい。部長かっこいいね!」
若い頃はさぞかし活躍したんだろうなぁと想像して頬を染めると、津賀留は「?」と首を傾げた。
「ええと。そう、ですね。荒魂と和魂は両方使える方もいれば、どっちかに特出してたりと様々ですが。カミナシ所属の方、八割強は備わっている一般的な能力です」
「式神とかも使える人いる?」
「呪具を専門に扱う方ですね。勿論いらっしゃいますよ」
「そっかー。式神は呪具扱いになるんだ」
「式神は創られた生命体です。それを何代も使役されていたり、その都度作りだしたりと様々です。神獣を式神にしている方もいるそうですよ」
「神獣ってどんな生き物?」
「菩総日神様から承った神聖な獣です。私はそのあたりは詳しくありませんので、オフィスに置かれている本を読むことをお勧めします。お時間があるときに目を通してみて下さい」
「うん、わかった」
息吹戸はお弁当を片付けてからお茶を飲み、はぁっとため息を吐く。端的に聞いてみても、覚える事は沢山在りそうだ。
(でもまぁ、ヲタ心刺さりまくって凄く楽しい)
津賀留もお弁当を食べ終え、お茶をゆっくり飲みこんでいる。
息吹戸が「片づけていい?」と空の弁当箱を示すと、彼女は頷いた。一緒に袋に入れて口を縛る。燃えるゴミとして捨てておこう。
「あ。そうだ。私はどんな能力使ってたの?」
「息吹戸さんは、主に和魂でしょうか。別属性を同時に何体も出現させていました」
「よくある使い方なの?」
津賀留は慌てたように首を左右に振る。
「とんでもない!? 同時に出現させるなんてよほどのキャパシティと精神力がなければ扱えません! そして無理をする分、寿命も縮みます」
「寿命ねぇ。そんなことよりも任務達成を選ぶタイプなんだ」
「そんなことって!? あ。いえ。その通りだと思います。無計画で動くことありませんが、いざ行動を起こすと敵を倒すことを第一に考えていたようですから」
(なんか。そこら辺のこだわりちょっとだけ似てる。私もミッション成功させるためなら無茶しちゃうし)
初めて親近感が湧いた瞬間だった。
「ありがと。じゃぁ最後に。津賀留ちゃんはどんな力があるの?」
津賀留は「ええと、私は……」と少し言い淀んでから、首を左右に振った。
「私は、戦闘に不向きな力です。能力は『底力』です」
聞き慣れない言葉に息吹戸が首を傾げると、津賀留は少し恥ずかしそうに視線をそらした。
「平たくいえば、仲間の身体的能力及び潜在能力を、二倍から三倍に飛躍させる力です」
津賀留は仲間と認識している者たちの潜在能力をノーリスクで大幅に上昇することが出来る。彼女が意識している間は効力が続き、疲労蓄積も少ないという。
「え! すごいじゃん! 傍に居るだけでパワーアップするってことだよね!」
目を輝かせて褒める息吹戸に、津賀留は何とも言えない表情を浮かべた。
第一印象は大事だ。しかしどう説明してもちょっとした悪口になってしまいそうだった。
「東護龍弥さんです。討伐対策部第一課のエースで……」
言葉を濁すと、息吹戸が「東護龍弥さん?」と復唱した。
誰だっけと言わんばかりに「???」を頭に浮かべて腕を組んでいる。
津賀留は眉間に手を当てて呻いた。
「お忘れですか?」
信じられないという気持ちが含まれているのを感じて、息吹戸は苦笑いを浮かべて頷く。
「うん。誰?」
「東護さんは同じ職場の男性で……目立つ方です。兎に角イケメンで。女性にとても人気です。でもこう言っては身も蓋もないですが、性格がちょっと、難ありというか。ええと」
津賀留はまた言葉を区切った。
「強くて、自分にも他人にも厳しい方です。自分と同じレベルでないと許せないというか。意見の相違を認めないというか……」
「津賀留ちゃん虐められてるの?」
「いいえ滅相もない! 寧ろ守られています。申し訳ないくらいに!」
歯切れの悪さに尋ねると、慌てて否定された。
それならいいけど。と呟く。
「寧ろ、息吹戸さんが嫌われているというか。お互いが嫌っているというか」
「そーなの? 分かった」
職場で好かれていないのは明白だ。特に驚く事はないが、津賀留の様子から推測するに、いざこざや衝突する程度はありそうだなと思案する。
あっさりと頷かれてしまったので津賀留は返答に困った。
「ええと。それで……東護さんは和魂を扱います。最も得意なのは水神の力と聞いています」
「なんと!?」
ヲタ心をくすぐられた息吹戸は気持ち分、前のめりになると、津賀留は吃驚して背中をそらせた。
一般的備わっている、ありふれた力に食いつきが良いとは予想外だ。
「水神ってことは神霊を扱える人ってことかー! 凄いねこの世界! 能力も神聖な感じがする!」
神の子孫なので『神の御魂・神の能力』を使えるとのだと瞬時に理解する。
「なら荒魂を扱える人もいるってことだね」
「あ、はい。玉谷部長が荒魂と和魂の両方と神獣を扱える方です」
「わぁ。魔術系召喚士みたい。部長かっこいいね!」
若い頃はさぞかし活躍したんだろうなぁと想像して頬を染めると、津賀留は「?」と首を傾げた。
「ええと。そう、ですね。荒魂と和魂は両方使える方もいれば、どっちかに特出してたりと様々ですが。カミナシ所属の方、八割強は備わっている一般的な能力です」
「式神とかも使える人いる?」
「呪具を専門に扱う方ですね。勿論いらっしゃいますよ」
「そっかー。式神は呪具扱いになるんだ」
「式神は創られた生命体です。それを何代も使役されていたり、その都度作りだしたりと様々です。神獣を式神にしている方もいるそうですよ」
「神獣ってどんな生き物?」
「菩総日神様から承った神聖な獣です。私はそのあたりは詳しくありませんので、オフィスに置かれている本を読むことをお勧めします。お時間があるときに目を通してみて下さい」
「うん、わかった」
息吹戸はお弁当を片付けてからお茶を飲み、はぁっとため息を吐く。端的に聞いてみても、覚える事は沢山在りそうだ。
(でもまぁ、ヲタ心刺さりまくって凄く楽しい)
津賀留もお弁当を食べ終え、お茶をゆっくり飲みこんでいる。
息吹戸が「片づけていい?」と空の弁当箱を示すと、彼女は頷いた。一緒に袋に入れて口を縛る。燃えるゴミとして捨てておこう。
「あ。そうだ。私はどんな能力使ってたの?」
「息吹戸さんは、主に和魂でしょうか。別属性を同時に何体も出現させていました」
「よくある使い方なの?」
津賀留は慌てたように首を左右に振る。
「とんでもない!? 同時に出現させるなんてよほどのキャパシティと精神力がなければ扱えません! そして無理をする分、寿命も縮みます」
「寿命ねぇ。そんなことよりも任務達成を選ぶタイプなんだ」
「そんなことって!? あ。いえ。その通りだと思います。無計画で動くことありませんが、いざ行動を起こすと敵を倒すことを第一に考えていたようですから」
(なんか。そこら辺のこだわりちょっとだけ似てる。私もミッション成功させるためなら無茶しちゃうし)
初めて親近感が湧いた瞬間だった。
「ありがと。じゃぁ最後に。津賀留ちゃんはどんな力があるの?」
津賀留は「ええと、私は……」と少し言い淀んでから、首を左右に振った。
「私は、戦闘に不向きな力です。能力は『底力』です」
聞き慣れない言葉に息吹戸が首を傾げると、津賀留は少し恥ずかしそうに視線をそらした。
「平たくいえば、仲間の身体的能力及び潜在能力を、二倍から三倍に飛躍させる力です」
津賀留は仲間と認識している者たちの潜在能力をノーリスクで大幅に上昇することが出来る。彼女が意識している間は効力が続き、疲労蓄積も少ないという。
「え! すごいじゃん! 傍に居るだけでパワーアップするってことだよね!」
目を輝かせて褒める息吹戸に、津賀留は何とも言えない表情を浮かべた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜
星影 迅
ファンタジー
およそ30年前、地球にはダンジョンが出現した。それは人々に希望や憧れを与え、そして同時に、絶望と恐怖も与えた──。
最弱探索者高校の底辺である宝晶千縁は今日もスライムのみを狩る生活をしていた。夏休みが迫る中、千縁はこのままじゃ“目的”を達成できる日は来ない、と命をかける覚悟をする。
千縁が心から強くなりたいと、そう願った時──自宅のリビングにダンジョンが出現していた!
そこでスキルに目覚めた千縁は、自らの目標のため、我が道を歩き出す……!
7つの人格を宿し、7つの性格を操る主人公の1読で7回楽しめる現代ファンタジー、開幕!
コメントでキャラを呼ぶと返事をくれるかも!(,,> <,,)
カクヨムにて先行連載中!

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』
ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。
誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる