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第一章 馴染むところから始めます
21.馴染みがなさすぎて
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用件を済ませて会議スペースから出ていった玉谷に手を振りながら、息吹戸は渡された本のタイトルを見た。
『こども歴史書』、『上梨卯槌の狛犬社員用説明書』、『禍神および従僕辞典』と書かれている。文字が読めるか心配したが杞憂であった。
(ともあれ、ひらがな漢字カタカナ英語。全部入り混じっている。ほんと、神の侵略や異能がなければ私が居た世界と変わらない)
まず簡単そうなこども歴史書を捲ってみた。
『この世界は菩総日神が創り、体の一部を用いて人を創る。神の子は与えられた土地を住み易い環境へ変えていき、その変化を神は見守っていた』
『菩総日神は毎日世界を眺めている。一年の内、三か月。この世界に降りてきて休憩をしたり遊んだりする。神が思う存分休める世界にするべく、人間達は頑張る』
『二千年後、神の子孫が繁栄する天路の地に異界のモノが現れる。異界のモノは他の世界の神の子孫だ。彼らはこの地を乗っ取るべく、攻撃を仕掛けてきた』
『菩総日神の力を強く得た人間たちは、それに全力で抗っている。力が弱い者は、異界のモノに飲まれないよう一致団結をして、この世界を守っている』
『神々の戯れは、今尚続いている』
ざっとそこまで流し読みして、パタンと本を閉じた。
脳内で何度か反芻してみる。
(歴史書じゃねぇよこれ……)
誰かのツッコミが欲しいと息吹戸は思った。
気を取り直して二冊目に移る。今度は禍神および従僕辞典だ。
分厚い辞書のような、図鑑のような内容をササッと目を通す。小説をよく読む上、動体視力がいいので速読はお手の物だ。
『菩総日神が想像し天路《あまじ》世界の周囲に四つの世界が存在する。
北の世界はツァフォン・コハブ・シャマイム(略してコハブと呼ばれることもある)。
西の世界はマラークダテ。
南の世界はアスマイド。
東の世界はシドエドと呼ばれる』
『ツァフォン・コハブ・シャマイム、マラークダテ、アスマイドは禍神が頻繁に侵略を行う傾向があり攻撃的。シドエドの侵略頻度は少なく友好的』
『禍神。四方に存在する世界からやってくる強大な力を持った者を示す侵略神の総称。
天路国の摂理を破壊・転化・創生し、故郷の世界に変化させることを目的とする。こちらに殺意を持つ者が多い。
速やかに討伐もしくは送還すること』
『従僕。その性質から仕えている神、世界が特定できる。二つの世界が混ざった従僕も存在する。
天路の人間を転化させる特性をもつ者いる。
召喚されたモノと、転化したモノの二種類存在する』
ざっくりと異世界項目があり、そこからあいうえお順に名前が並ぶ。
化け物、モンスター、死霊など、ゲームでおなじみの見慣れた敵キャラが記載されていた。
身長体重、生息しやすい場所、性質、出遭った時の対処法、戦闘時の注意点や効果的攻撃方法まで。細かく載っている。しかし名前と姿があっても攻撃方法や討伐方法が載っていない箇所もあったので、知っているモンスターは書き込みたい衝動に駆られた。
ささっと読み終わって本を閉じる。
これが生死を別けるほど重要な資料だとわかってはいるものの、息吹戸はなんともいえない表情を浮かべていた。
(有名所のRPGの攻略本かなって思っちゃった……)
やっぱり夢の中だよこれ、という気持ちがますます強くなる。
「これで最後」
上梨卯槌の狛犬社員用説明書を開いた。入社する際の説明みたいだ。
『上梨(神成)卯槌の狛犬。菩総日神の力を強く持った者を中心とした組織である。五つの市にそれぞれ拠点があり、対策討伐部、諜報部、開発部、医療部の大きく四つに分類される。
禍神の侵略・策略を妨害し、世界を守るのを目的とする(中略)時折、異界の住人が紛れ込むことがあり。
好戦的ではない場合は保護し、元の世界に送る為、逆召喚を行う事』
『アメミットは天路国家が所有する防衛組織。選りすぐりの精鋭で構成されている。大規模な禍神の侵略時に率先して動く。連係組織の一つである(中略)』
『藤見教。禍神との共存と交流が叶う事を信じる組織。菩総日神が保護した禍神および、アメミット・カミナシが保護した従僕を監視・日常生活を送るよう支援する役目も担う。
思想によっていくつか分類されている。(中略)
友好的な従僕が集まりやすいが、何かのスイッチが入ると侵略者に変貌することがあり注意が必要。連携組織の一つである』
『辜忌。反天路国組織。祖が一人。幹部は七人という情報がある。潜伏場所は特定されていない。一枚岩ではなく、何層か折り重なったような組織統制。天路の国を内側から攻撃する者達。
禍神の召喚を行う他、敵対する者の排除、天路の民を攫い、転化・召喚の材料・生贄など非道な行いをする。
把握している幹部名:燐木一族、普村一族、阿子木一族、久井杉一族。彼らは異界の神の血を継承した人間と言われているが真偽を確かめるすべはない』
『地界と死者の国。死んだ魂が集う世界。
地界は通常の死を遂げた者が逝くとされ、死者の国は転化した人間が堕ちる世界とされる。現世と繋がる入り口があり、稀に生者が紛れ込むこともある。現世に戻るのは可能であるが、長期滞在は死を招くので早々に脱出するのが望ましい』
あとはカミナシの拠点やら就業時間やら休みやら保険やら色々書かれていた。
ここら辺はまぁいいかな。と息吹戸は本を閉じた。
『こども歴史書』、『上梨卯槌の狛犬社員用説明書』、『禍神および従僕辞典』と書かれている。文字が読めるか心配したが杞憂であった。
(ともあれ、ひらがな漢字カタカナ英語。全部入り混じっている。ほんと、神の侵略や異能がなければ私が居た世界と変わらない)
まず簡単そうなこども歴史書を捲ってみた。
『この世界は菩総日神が創り、体の一部を用いて人を創る。神の子は与えられた土地を住み易い環境へ変えていき、その変化を神は見守っていた』
『菩総日神は毎日世界を眺めている。一年の内、三か月。この世界に降りてきて休憩をしたり遊んだりする。神が思う存分休める世界にするべく、人間達は頑張る』
『二千年後、神の子孫が繁栄する天路の地に異界のモノが現れる。異界のモノは他の世界の神の子孫だ。彼らはこの地を乗っ取るべく、攻撃を仕掛けてきた』
『菩総日神の力を強く得た人間たちは、それに全力で抗っている。力が弱い者は、異界のモノに飲まれないよう一致団結をして、この世界を守っている』
『神々の戯れは、今尚続いている』
ざっとそこまで流し読みして、パタンと本を閉じた。
脳内で何度か反芻してみる。
(歴史書じゃねぇよこれ……)
誰かのツッコミが欲しいと息吹戸は思った。
気を取り直して二冊目に移る。今度は禍神および従僕辞典だ。
分厚い辞書のような、図鑑のような内容をササッと目を通す。小説をよく読む上、動体視力がいいので速読はお手の物だ。
『菩総日神が想像し天路《あまじ》世界の周囲に四つの世界が存在する。
北の世界はツァフォン・コハブ・シャマイム(略してコハブと呼ばれることもある)。
西の世界はマラークダテ。
南の世界はアスマイド。
東の世界はシドエドと呼ばれる』
『ツァフォン・コハブ・シャマイム、マラークダテ、アスマイドは禍神が頻繁に侵略を行う傾向があり攻撃的。シドエドの侵略頻度は少なく友好的』
『禍神。四方に存在する世界からやってくる強大な力を持った者を示す侵略神の総称。
天路国の摂理を破壊・転化・創生し、故郷の世界に変化させることを目的とする。こちらに殺意を持つ者が多い。
速やかに討伐もしくは送還すること』
『従僕。その性質から仕えている神、世界が特定できる。二つの世界が混ざった従僕も存在する。
天路の人間を転化させる特性をもつ者いる。
召喚されたモノと、転化したモノの二種類存在する』
ざっくりと異世界項目があり、そこからあいうえお順に名前が並ぶ。
化け物、モンスター、死霊など、ゲームでおなじみの見慣れた敵キャラが記載されていた。
身長体重、生息しやすい場所、性質、出遭った時の対処法、戦闘時の注意点や効果的攻撃方法まで。細かく載っている。しかし名前と姿があっても攻撃方法や討伐方法が載っていない箇所もあったので、知っているモンスターは書き込みたい衝動に駆られた。
ささっと読み終わって本を閉じる。
これが生死を別けるほど重要な資料だとわかってはいるものの、息吹戸はなんともいえない表情を浮かべていた。
(有名所のRPGの攻略本かなって思っちゃった……)
やっぱり夢の中だよこれ、という気持ちがますます強くなる。
「これで最後」
上梨卯槌の狛犬社員用説明書を開いた。入社する際の説明みたいだ。
『上梨(神成)卯槌の狛犬。菩総日神の力を強く持った者を中心とした組織である。五つの市にそれぞれ拠点があり、対策討伐部、諜報部、開発部、医療部の大きく四つに分類される。
禍神の侵略・策略を妨害し、世界を守るのを目的とする(中略)時折、異界の住人が紛れ込むことがあり。
好戦的ではない場合は保護し、元の世界に送る為、逆召喚を行う事』
『アメミットは天路国家が所有する防衛組織。選りすぐりの精鋭で構成されている。大規模な禍神の侵略時に率先して動く。連係組織の一つである(中略)』
『藤見教。禍神との共存と交流が叶う事を信じる組織。菩総日神が保護した禍神および、アメミット・カミナシが保護した従僕を監視・日常生活を送るよう支援する役目も担う。
思想によっていくつか分類されている。(中略)
友好的な従僕が集まりやすいが、何かのスイッチが入ると侵略者に変貌することがあり注意が必要。連携組織の一つである』
『辜忌。反天路国組織。祖が一人。幹部は七人という情報がある。潜伏場所は特定されていない。一枚岩ではなく、何層か折り重なったような組織統制。天路の国を内側から攻撃する者達。
禍神の召喚を行う他、敵対する者の排除、天路の民を攫い、転化・召喚の材料・生贄など非道な行いをする。
把握している幹部名:燐木一族、普村一族、阿子木一族、久井杉一族。彼らは異界の神の血を継承した人間と言われているが真偽を確かめるすべはない』
『地界と死者の国。死んだ魂が集う世界。
地界は通常の死を遂げた者が逝くとされ、死者の国は転化した人間が堕ちる世界とされる。現世と繋がる入り口があり、稀に生者が紛れ込むこともある。現世に戻るのは可能であるが、長期滞在は死を招くので早々に脱出するのが望ましい』
あとはカミナシの拠点やら就業時間やら休みやら保険やら色々書かれていた。
ここら辺はまぁいいかな。と息吹戸は本を閉じた。
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