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序章 いつものホラーアクション夢
へるぷみー!
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考えた結果、悪いことが起こったけど状況は何も変わらないし変えられない、という結論に達した。
これからどうしようと不安になり、『私』は思わず涙ぐむ。
「おい! 儂の声が聞こえているか息吹戸! しっかりしろ!」
明らかに様子がおかしいと、男性は焦燥感を強くする。『私』の肩を揺らして正気に戻そうと何度も呼びかけた。
(……私より慌てている)
慌てている男性を見ていると、徐々に『私』が冷静になっていった。
自分以上に慌てる人の姿を見ると、逆に冷静になっていくあの心境である。
「聞こえてます」
返事をすると、男性がホッとしたように息を吐いた。そしてすぐに険しい表情となる。
「何があったのか説明してくれないか?」
『私』はそれに返事を返さず、片手を顔に当てて声に出さずに「うーん」と呻いた。
(とりあえず、これからを考えよう)
混乱に身を任せてこの場から逃げたところで得るもの|はない。
知らない世界を右往左往しても、碌《ろく》なことにはならないのは火を見るよりも明らかである。
(私が『自分』を覚えてない以上、『私が息吹戸本人』なのか、『息吹戸に憑依した人間』なのか、判断出来ないのもネックだなぁ)
だが幸運にも知り合った人達は『私の外見』と面識がある。
知り合いの元に身を寄せられるなら、ある程度の情報を得ることも出来るはずだ。
今後の事を考える時間が出来るだろう。
(あとは衣食住の問題)
安心できる食べ物、安らげる寝床、清潔な環境。これがあってこそ、充実したライフスタイルを送れる。
『私』は周囲をぼんやり眺める。
店の名前に馴染みはないが『きっとこんな商品を扱っている』とか『おそらくこんなサービスを行うお店だ』という事が理解できた。
(生活環境は似てるからなんとかなりそう。記憶なくても生きられる…………よし!)
『私』はここで生きていくことに決めた。
(もう一つの問題は、この体だ)
『私』と『息吹戸《いぶきど》』のギャップである。
(夢だからと散々スルーしてきたけど。この息吹戸は一般常識とずれているのは間違いない)
普通に会話しただけで警戒されるし、勝負挑まれるし、怯えた視線や嫌悪の視線も来る。仲間の中でもボッチっぽい。
(奇人変人ならなんとでもできるけど、おそらく、暴君に近い女王気質か、俺様主義っぽい。そして、それが許されるというか、目を瞑ってもらえるほどの立場か、実力者って推測できるけど。そんな人間の真似は絶対に無理だ!)
彼らが知る『息吹戸』の真似はできないと、演じる前から分かった。
(素でいこう。そうするしかない。それで許されるパターンはもう、今の状態で)
「こら! 何か反応を示さんか!」
痺れを切らして男性が怒鳴った。
『私』の反応が希薄なため戦闘中にどこか損傷したのかと心配して、ずっと声をかけ続けていた。
(イケメンボイス最高)
耳元で低音のイケメン怒鳴りボイスが『私』の耳に心地よく響く。
勇気をもらった気持ちになり、『私』はゆっくりと男性と視線を合わせた。
「やっと目があったな」
男性に少し安堵の色が浮かぶ。
『私』は憂いと優しさを兼ね備えたダンディな微笑みに見惚れてしまった。
(はわわわわ。めめっめめ、めっちゃイケメン。すっごいイケメン。ダンディって最高。それを超至近距離から拝めるなんて贅沢すぎる。頭一個分以上背が高くて最高な角度だし色々完璧だ!)
記憶のり弁で不安になっていた気持ちが即座に持ち直し、眼福最高と拳を握りしめる。
「息吹戸……何があったのか話してくれないか? 錯乱するほどことがあったのだろう? どんな話でも信じる。言いなさい」
男性は少し違和感を覚え、警戒した様に眉を潜めた。
「そーこまで言うのなら……ええと、あの、大変言いにくいんですが……」
言い淀むと、男性は「大丈夫だ」と頷いた。
『私』は意を決して自分を指で示した。
「私が何者か思い出せないんですけど。この場合、どうしたらいいでしょうか?」
突然のカミングアウトを聞いた男性は、目を落ちそうなほど見開き、「なん、だって?」と聞き返すように呟いた。
これからどうしようと不安になり、『私』は思わず涙ぐむ。
「おい! 儂の声が聞こえているか息吹戸! しっかりしろ!」
明らかに様子がおかしいと、男性は焦燥感を強くする。『私』の肩を揺らして正気に戻そうと何度も呼びかけた。
(……私より慌てている)
慌てている男性を見ていると、徐々に『私』が冷静になっていった。
自分以上に慌てる人の姿を見ると、逆に冷静になっていくあの心境である。
「聞こえてます」
返事をすると、男性がホッとしたように息を吐いた。そしてすぐに険しい表情となる。
「何があったのか説明してくれないか?」
『私』はそれに返事を返さず、片手を顔に当てて声に出さずに「うーん」と呻いた。
(とりあえず、これからを考えよう)
混乱に身を任せてこの場から逃げたところで得るもの|はない。
知らない世界を右往左往しても、碌《ろく》なことにはならないのは火を見るよりも明らかである。
(私が『自分』を覚えてない以上、『私が息吹戸本人』なのか、『息吹戸に憑依した人間』なのか、判断出来ないのもネックだなぁ)
だが幸運にも知り合った人達は『私の外見』と面識がある。
知り合いの元に身を寄せられるなら、ある程度の情報を得ることも出来るはずだ。
今後の事を考える時間が出来るだろう。
(あとは衣食住の問題)
安心できる食べ物、安らげる寝床、清潔な環境。これがあってこそ、充実したライフスタイルを送れる。
『私』は周囲をぼんやり眺める。
店の名前に馴染みはないが『きっとこんな商品を扱っている』とか『おそらくこんなサービスを行うお店だ』という事が理解できた。
(生活環境は似てるからなんとかなりそう。記憶なくても生きられる…………よし!)
『私』はここで生きていくことに決めた。
(もう一つの問題は、この体だ)
『私』と『息吹戸《いぶきど》』のギャップである。
(夢だからと散々スルーしてきたけど。この息吹戸は一般常識とずれているのは間違いない)
普通に会話しただけで警戒されるし、勝負挑まれるし、怯えた視線や嫌悪の視線も来る。仲間の中でもボッチっぽい。
(奇人変人ならなんとでもできるけど、おそらく、暴君に近い女王気質か、俺様主義っぽい。そして、それが許されるというか、目を瞑ってもらえるほどの立場か、実力者って推測できるけど。そんな人間の真似は絶対に無理だ!)
彼らが知る『息吹戸』の真似はできないと、演じる前から分かった。
(素でいこう。そうするしかない。それで許されるパターンはもう、今の状態で)
「こら! 何か反応を示さんか!」
痺れを切らして男性が怒鳴った。
『私』の反応が希薄なため戦闘中にどこか損傷したのかと心配して、ずっと声をかけ続けていた。
(イケメンボイス最高)
耳元で低音のイケメン怒鳴りボイスが『私』の耳に心地よく響く。
勇気をもらった気持ちになり、『私』はゆっくりと男性と視線を合わせた。
「やっと目があったな」
男性に少し安堵の色が浮かぶ。
『私』は憂いと優しさを兼ね備えたダンディな微笑みに見惚れてしまった。
(はわわわわ。めめっめめ、めっちゃイケメン。すっごいイケメン。ダンディって最高。それを超至近距離から拝めるなんて贅沢すぎる。頭一個分以上背が高くて最高な角度だし色々完璧だ!)
記憶のり弁で不安になっていた気持ちが即座に持ち直し、眼福最高と拳を握りしめる。
「息吹戸……何があったのか話してくれないか? 錯乱するほどことがあったのだろう? どんな話でも信じる。言いなさい」
男性は少し違和感を覚え、警戒した様に眉を潜めた。
「そーこまで言うのなら……ええと、あの、大変言いにくいんですが……」
言い淀むと、男性は「大丈夫だ」と頷いた。
『私』は意を決して自分を指で示した。
「私が何者か思い出せないんですけど。この場合、どうしたらいいでしょうか?」
突然のカミングアウトを聞いた男性は、目を落ちそうなほど見開き、「なん、だって?」と聞き返すように呟いた。
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