7 / 33
序章 いつものホラーアクション夢
7.回収したけどこの神様見覚えある、ゲームで
しおりを挟む
縄を外さずそのまま肩へ担ぐ。両肩へ担ごうとしたが、津賀留は「あ、の人も、お願い、します」と、足で蛇に絡まれている人を示した。
「絡まれている人? 知り合い?」
「は、い。小鳥さんも、助けてください。お願いします!」
津賀留の口からぽろっと何かが落ちると、途端に滑舌が良くなった。
「りょ!」
『私』は津賀留を左肩にかけて急いで小鳥の救出に向かう。走った勢いで蛇を蹴ると、サンドバックのような感触が伝わった。
(あれ? 半透明で気づかなかったけど、これ蛇だ)
この段階でやっと『私』は蛇だと気づいた。蛇なら目を攻撃すれば離してくれるかもしれない、という理由で、蛇の目の部分を蹴り上げる。
一度目で緩んだ締め付けが、二度目でするっと離れた。
(今だ!)
離れた瞬間、小鳥を思いっきり蹴って屋上の出入り口方向に飛ばした。その姿を見て「ああああ!」と、担がれている津賀留が安否を気にするような悲鳴をあげた。
「よしよし。ドアまで転がってけー!」
『私』は嬉々としながらゴロゴロゴロと滑っていく小鳥を追いかけ、転がる勢いが無くなってから途中で拾い上げる。
(ん? 軽い?)
ローブの形から、おそらく成人男性の体格と思っていたが、予想以上に身は軽かった。津賀留と同じくらいかもしれない。
(これなら楽だね!)
小脇に抱えて『私』は全力でドアへ走った。
「ヤンキーお兄さん! 撤収ーー!」
「!」
前側の魔法陣の周囲でドンパチやっている祠堂《しどう》に声をかける。
大量の炎や風や水の攻防が、特撮映画のエフェクトのようで派手だ。熱も風圧も振動もあり、とてもリアルに作り込まれていると『私』は思った。
「分かった!」
祠堂がこちらを一瞥《いちべつ》して右腕を天に伸ばした。彼の体から一つの淡い球体が浮き上がり、輝きを放つ。
「刃!」
祠堂の体を軸にして風圧が四方に広がった。
天から伸びる六本の半透明な蛇と、黒ローブ達が吹き飛ぶ。
蛇がするすると天に戻り、黒いローブ達が宙に浮き地面に激突。倒れたまま動かない事を確認して、祠堂もドアへ駆けだした。
儀式を遮っただけで中断にまでは至っていないが、生贄を二名救出した以上、時間が立てば儀式は破綻する。儀式が破綻すれば禍神はこの地に降りられない。
犠牲者はいるが、被害を最小限にできたことで良しとしよう。と祠堂は割り切った。
「おい。二人を抱えてすぐにビルから逃げろ」
「うわ!? ビビった!」
距離があったにも関わらず、真後ろから祠堂の声が聞こえて、『私』は大いに驚いた。
「このビルはまだあれの支配領域だ。俺が殿をしとくから先に脱出しろ。そいつらが奪われたら元の木阿弥だ」
『私』が振り返ると彼の肩越しから、交叉した骨の刺繍があるスカートがひらりとはためいたのが見えた。
女神の足先が、こちらに一歩踏み出したことに吃驚して声をあげる。
「わ! 神が動いた!」
「なんだと!?」
慌てて祠堂が振り返る。
「動ける段階まで進んでたのか!?」
祠堂の視線が奥の魔法陣に注がれる。座っていたはずの白いローブ達が半分ほど蛇に飲まれたまま天に昇っていた。残り半分もすぐに同じ運命をたどるだろう。
「わあ。これはマズイね」
女神が一歩足を進め、体を、腕を、頭をこっち側に降ろしているのが感じられる。
ぶわわわ!
風圧をつけながら中腰になった女神は、頭に蛇を置いた老婆だった。片手に水瓶を抱えている。『私』には見覚えがあった。
(……あれ。もしかしてイシュ・チェル?)
ぱっと浮かんだのは、マヤ神話。
虹の婦人・月の女神と異名をもつ、洪水・虹・出産を司る女神だ。
怒ると天の水瓶を用いて地上に大雨を降らせ、空の虹に助力して洪水を引き起こすため、怒れる老婆とも呼ばれ破壊神としての面を持つ。
(うん? ゲームでちょこちょこ名前あったから知ってるけど、ギャップすごい)
この場合のギャップは若さだけど。と心の隅でこっそり思った。
(しかし、このチョイス。出演者もなんでもありってことなのかな?)
まあ夢だし、と割り切る。
(はてさて、どうやって切り抜けようかな)
召喚失敗でこのままお帰り願うのが一番だが、残念な事に女神はそんな気分にならなかったらしい。
眼下の小さな人間達に怒り心頭のようで、目を吊り上げている。
パノラマに広がる巨大な老婆の顔、ましてや鋭く睨まれるなんて、腰を抜かすような景観だ。
女神なりの計画があり、小賢しい人間に邪魔をされて怒っているのかもしれない。
ンンンンンン!
口を開け、音のような、声のような、地響きのような音を発した女神は、たっぷりの水が入った水瓶をひっくり返した。
どうやら洪水を起こす気満々だ。屋上で大量の水に飲まれれば、滝に落ちるがごとく地面まで真っ逆さまになる。
「やっば!」
『私』は津賀留と小鳥をドアの奥へ投げ入れた。
「お兄さんも中へ入って!」
「んな!?」
女神の動きに対処しようと手をかざした祠堂の首を、猫の子を掴むようにひょいっと掴んで通路へ投げ入れた。
乱暴に入れたにもかかわらず、綺麗に足から着地した祠堂は『私』に非難の声をあげる。
「何するんだ!」
「いいから!」
なんとなく、彼では敵わないと思った。かといって『私』でも敵わない。
(でも勝てなくても良い。負けなければいい。逃げ切ればいい)
一時的にでも、相手の攻撃を回避するか無効化すれば、洪水を、女神の侵攻を回避できるはずだ。
(夢なら、強い想いとイメージを明確にすれば何でもできる。今までだって出来たから、今回もきっと大丈夫! 私ができる最善策は、神の力をはじき返すイメージだ!)
確固たるイメージを思い浮かべる。
(はじき返す、反射、バリアー、あ! 鏡! 鏡ならイメージしやすい。ええと、力のある鏡、神様の力を持った鏡……)
パッと閃く。
「八咫鏡!」
パァ!
身の丈四メートルもある大きな青銅鏡が視界に広がった。
「絡まれている人? 知り合い?」
「は、い。小鳥さんも、助けてください。お願いします!」
津賀留の口からぽろっと何かが落ちると、途端に滑舌が良くなった。
「りょ!」
『私』は津賀留を左肩にかけて急いで小鳥の救出に向かう。走った勢いで蛇を蹴ると、サンドバックのような感触が伝わった。
(あれ? 半透明で気づかなかったけど、これ蛇だ)
この段階でやっと『私』は蛇だと気づいた。蛇なら目を攻撃すれば離してくれるかもしれない、という理由で、蛇の目の部分を蹴り上げる。
一度目で緩んだ締め付けが、二度目でするっと離れた。
(今だ!)
離れた瞬間、小鳥を思いっきり蹴って屋上の出入り口方向に飛ばした。その姿を見て「ああああ!」と、担がれている津賀留が安否を気にするような悲鳴をあげた。
「よしよし。ドアまで転がってけー!」
『私』は嬉々としながらゴロゴロゴロと滑っていく小鳥を追いかけ、転がる勢いが無くなってから途中で拾い上げる。
(ん? 軽い?)
ローブの形から、おそらく成人男性の体格と思っていたが、予想以上に身は軽かった。津賀留と同じくらいかもしれない。
(これなら楽だね!)
小脇に抱えて『私』は全力でドアへ走った。
「ヤンキーお兄さん! 撤収ーー!」
「!」
前側の魔法陣の周囲でドンパチやっている祠堂《しどう》に声をかける。
大量の炎や風や水の攻防が、特撮映画のエフェクトのようで派手だ。熱も風圧も振動もあり、とてもリアルに作り込まれていると『私』は思った。
「分かった!」
祠堂がこちらを一瞥《いちべつ》して右腕を天に伸ばした。彼の体から一つの淡い球体が浮き上がり、輝きを放つ。
「刃!」
祠堂の体を軸にして風圧が四方に広がった。
天から伸びる六本の半透明な蛇と、黒ローブ達が吹き飛ぶ。
蛇がするすると天に戻り、黒いローブ達が宙に浮き地面に激突。倒れたまま動かない事を確認して、祠堂もドアへ駆けだした。
儀式を遮っただけで中断にまでは至っていないが、生贄を二名救出した以上、時間が立てば儀式は破綻する。儀式が破綻すれば禍神はこの地に降りられない。
犠牲者はいるが、被害を最小限にできたことで良しとしよう。と祠堂は割り切った。
「おい。二人を抱えてすぐにビルから逃げろ」
「うわ!? ビビった!」
距離があったにも関わらず、真後ろから祠堂の声が聞こえて、『私』は大いに驚いた。
「このビルはまだあれの支配領域だ。俺が殿をしとくから先に脱出しろ。そいつらが奪われたら元の木阿弥だ」
『私』が振り返ると彼の肩越しから、交叉した骨の刺繍があるスカートがひらりとはためいたのが見えた。
女神の足先が、こちらに一歩踏み出したことに吃驚して声をあげる。
「わ! 神が動いた!」
「なんだと!?」
慌てて祠堂が振り返る。
「動ける段階まで進んでたのか!?」
祠堂の視線が奥の魔法陣に注がれる。座っていたはずの白いローブ達が半分ほど蛇に飲まれたまま天に昇っていた。残り半分もすぐに同じ運命をたどるだろう。
「わあ。これはマズイね」
女神が一歩足を進め、体を、腕を、頭をこっち側に降ろしているのが感じられる。
ぶわわわ!
風圧をつけながら中腰になった女神は、頭に蛇を置いた老婆だった。片手に水瓶を抱えている。『私』には見覚えがあった。
(……あれ。もしかしてイシュ・チェル?)
ぱっと浮かんだのは、マヤ神話。
虹の婦人・月の女神と異名をもつ、洪水・虹・出産を司る女神だ。
怒ると天の水瓶を用いて地上に大雨を降らせ、空の虹に助力して洪水を引き起こすため、怒れる老婆とも呼ばれ破壊神としての面を持つ。
(うん? ゲームでちょこちょこ名前あったから知ってるけど、ギャップすごい)
この場合のギャップは若さだけど。と心の隅でこっそり思った。
(しかし、このチョイス。出演者もなんでもありってことなのかな?)
まあ夢だし、と割り切る。
(はてさて、どうやって切り抜けようかな)
召喚失敗でこのままお帰り願うのが一番だが、残念な事に女神はそんな気分にならなかったらしい。
眼下の小さな人間達に怒り心頭のようで、目を吊り上げている。
パノラマに広がる巨大な老婆の顔、ましてや鋭く睨まれるなんて、腰を抜かすような景観だ。
女神なりの計画があり、小賢しい人間に邪魔をされて怒っているのかもしれない。
ンンンンンン!
口を開け、音のような、声のような、地響きのような音を発した女神は、たっぷりの水が入った水瓶をひっくり返した。
どうやら洪水を起こす気満々だ。屋上で大量の水に飲まれれば、滝に落ちるがごとく地面まで真っ逆さまになる。
「やっば!」
『私』は津賀留と小鳥をドアの奥へ投げ入れた。
「お兄さんも中へ入って!」
「んな!?」
女神の動きに対処しようと手をかざした祠堂の首を、猫の子を掴むようにひょいっと掴んで通路へ投げ入れた。
乱暴に入れたにもかかわらず、綺麗に足から着地した祠堂は『私』に非難の声をあげる。
「何するんだ!」
「いいから!」
なんとなく、彼では敵わないと思った。かといって『私』でも敵わない。
(でも勝てなくても良い。負けなければいい。逃げ切ればいい)
一時的にでも、相手の攻撃を回避するか無効化すれば、洪水を、女神の侵攻を回避できるはずだ。
(夢なら、強い想いとイメージを明確にすれば何でもできる。今までだって出来たから、今回もきっと大丈夫! 私ができる最善策は、神の力をはじき返すイメージだ!)
確固たるイメージを思い浮かべる。
(はじき返す、反射、バリアー、あ! 鏡! 鏡ならイメージしやすい。ええと、力のある鏡、神様の力を持った鏡……)
パッと閃く。
「八咫鏡!」
パァ!
身の丈四メートルもある大きな青銅鏡が視界に広がった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
妻は異世界人で異世界一位のギルドマスターで世紀末覇王!~けど、ドキドキするのは何故だろう~
udonlevel2
ファンタジー
ブラック会社を辞めて親と一緒に田舎に引っ越して生きたカズマ!
そこには異世界への鏡が納屋の中にあって……異世界に憧れたけど封印することにする!!
しかし、異世界の扉はあちらの世界にもあって!?
突如現れた世紀末王者の風貌の筋肉女子マリリン!!
マリリンの一途な愛情にカズマは――!?
他サイトにも掲載しています。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる