戦狂のキキ

shio

文字の大きさ
上 下
21 / 57
第二章

しおりを挟む

 ――着いたのは、陣の中央にある大きな屋敷だった。

「随分、遅い到着だな、じょう殿」

 陰陽允おんようのじょうである咲久夜をそう呼び、蒼紺の装束を纏った男は鋭い視線を向けた。

「定刻には間に合ったと思うが、待たせたのであれば詫びよう、須佐すさ殿……いや、鎮守府将軍ちんじゅふしょうぐんとお呼びしたほうがよいか」

 須佐は応えず――けれど、周りの兵士達の僅かな変化、殺気に似た感情が宿ったのをキキはすぐに感じ取った。
 咲久夜がわざとくらいで呼んだのも理解している。怒らせるため……も少しはあったかもしれないが、自分に須佐のことを分からせる為だろう。

「咲久夜様」
「一人にさせて悪かったな、那都」

 那都が照灯と同じく咲久夜の後ろに控える。こちらに一瞬だけ視線を向け微笑み、キキも微笑み返した。
 成程……キキは内で頷いた。那都を一人で先に行かせた理由も分かった。武家の動きと感情を探る為だ。つまりは、武家のことをそれだけ警戒しているともいえる。

(……それに)

 視線だけで周りを探る……それは咲久夜達に出会った時から感じていたこと。陰陽師の数は武家に比べて圧倒的に少ない。
 ここで陰陽師の白の装束を着ているのも自分達四人だけ。他は全て蒼紺の兵士達だった。

「……何故、こんなところに子供がいる」

 しばらくの沈黙の後、そう声を上げたのは須佐だった。実をいえば、キキ自身も周りから見られているのは気付いてはいたのだが。

「おお、紹介が遅れたな。この子は、我らの新しい仲間だ。名はキキという、宜しく頼む」
「ほう……お前があの『鬼気持ち』か」
「これは、須佐殿。そちらの隊に居たにも関わらず、今まで知らなかったとは」
「陰陽師に比べて人が多いからな。一人一人を見るほど暇ではない……だが、評定の前に話しておかなければなるまい」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

一宿一飯の恩義

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 妹のアイミが、一人暮らしの兄の家に泊まりに来た。コンサートで近くを訪れたため、ホテル代わりに利用しようということだった。 兄は条件を付けて、アイミを泊めることにした。 その夜、条件であることを理由に、兄はアイミを抱く。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

疲れる目覚まし時計

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 朝、僕が布団の中でまどろんでいると、姉さんが起こしに来た。 まだ時間が早いから寝ようとする僕を、姉さんが起こそうとする。 その起こし方がとても特殊で……。

選択肢に自分を入れたのが負け

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 夜、俺がのんびりとリビングで過ごしていたら、妹のマイがやってきた。 「にいさん、構ってよぉ」マイはそう言った。 じゃあ、何をするのかと問いかけると、マイは答えた。 「テレビにする? ゲームにする? それとも、わ・た・し?」

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...