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第二章
五
しおりを挟む――着いたのは、陣の中央にある大きな屋敷だった。
「随分、遅い到着だな、允殿」
陰陽允である咲久夜をそう呼び、蒼紺の装束を纏った男は鋭い視線を向けた。
「定刻には間に合ったと思うが、待たせたのであれば詫びよう、須佐殿……いや、鎮守府将軍とお呼びしたほうがよいか」
須佐は応えず――けれど、周りの兵士達の僅かな変化、殺気に似た感情が宿ったのをキキはすぐに感じ取った。
咲久夜がわざと位で呼んだのも理解している。怒らせるため……も少しはあったかもしれないが、自分に須佐のことを分からせる為だろう。
「咲久夜様」
「一人にさせて悪かったな、那都」
那都が照灯と同じく咲久夜の後ろに控える。こちらに一瞬だけ視線を向け微笑み、キキも微笑み返した。
成程……キキは内で頷いた。那都を一人で先に行かせた理由も分かった。武家の動きと感情を探る為だ。つまりは、武家のことをそれだけ警戒しているともいえる。
(……それに)
視線だけで周りを探る……それは咲久夜達に出会った時から感じていたこと。陰陽師の数は武家に比べて圧倒的に少ない。
ここで陰陽師の白の装束を着ているのも自分達四人だけ。他は全て蒼紺の兵士達だった。
「……何故、こんなところに子供がいる」
しばらくの沈黙の後、そう声を上げたのは須佐だった。実をいえば、キキ自身も周りから見られているのは気付いてはいたのだが。
「おお、紹介が遅れたな。この子は、我らの新しい仲間だ。名はキキという、宜しく頼む」
「ほう……お前があの『鬼気持ち』か」
「これは、須佐殿。そちらの隊に居たにも関わらず、今まで知らなかったとは」
「陰陽師に比べて人が多いからな。一人一人を見るほど暇ではない……だが、評定の前に話しておかなければなるまい」
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