ダーマの休日

ルルオカ

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ダーマの平日

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アラブ系、ヒスパニック系と想像する前に、ドアがノックされた。

各国の男に犯されるタカハシサンを脳内から打ち消し、日本では「男も女もいちころ」とされるダーマスマイルを浮かべ「どうぞ」と応じる。

おずおずとドアの隙間から顔を覗かせたタカハシサンは、頭を下げたなら、躊躇しつつ、室内に踏みこんだ。

リクエスト通り、ほんのりグラデーションがかった藍色の浴衣に、黒に白い線が入った帯を締め、ベージュの雪駄を履いている。

日本人といっても、今やほとんど、洋服で過ごしている。
と知っていたので、タカハシサンに完成度を求めていなかったものを、思ったより、趣がある、着こなしをしていた。

くたびれたスーツ姿も、悪くないとはいえ、浴衣姿のほうが、童顔なのは変わりないながら、年相応の熟した色香を放ち、未亡人のような儚げな色気を醸しているような。

「着慣れているようだね?」

舌なめずりしたいのを堪えて、にこやかなまま問えば、ほっとしたように、すくめていた肩を落とし、でも「実家が酒蔵なんで」と目を泳がせるタカハシサン。

「昔からイベントとかあると、着せられていたんですよ」

疚しがる内容でもないものを、中々、僕と目を合わせようとしない。
首を傾げつつ「そう」と寄っていって、心持、内股になっているのを見止める。

目の前までくると、帯の下の裾をめくり上げた。「わ!」とより内股になったとはいえ、白い下着が丸見え。

白いブリーフではないし、Tバックでもない。
その二つを掛け合わせたようなデザインのものだ。

股間を覆うところは、ゆったりしつつ、腰に巻きついている紐部分は、肌に食いこんでいる。

もの珍しくて「これ、なんていうの」とめくったまま、しげしげと股間を覗きこめば、落着かなさそうに、太ももを擦りつつ「褌といいます」と返してきた。

「昔、パンツがなかったころ、日本人が身につけていました。
一枚の布を、巻きつけるんです。

今では祭りとかでしか、褌を絞めませんし、俺も初めてしました。

正直、嫌だったんですけど『日本の文化を忠実に見せねば!』って父親が張りきって、浴衣を用意するどころか、褌もしろと、しつこくて」

「一枚の布を巻くとはな」と感心しながら、裾をさらに高くめくって、後ろを覗いてみる。

紐状になった布が尻の割れ目に食い込んでいるのと、微かに腰が震えているのを見て、生唾を飲みこんだ。

「・・・・今日は、やっぱり浴衣はやめようか」とぼそりと呟くと、とたんに「あ!やっぱ、褌、引きましたよね!すみません!」と尻が跳ねる。

弾力があるそれに、噛みつきたい衝動に駆られながらも、上体を起こして、めくっていた裾を元にもどし「そうじゃないよ」と惜しみなく、ダーマスマイルをふりまいた。

「その逆なんだけどね」

これまで散々、白ブリーフ着用を強要され、揉みしだれ濡らされたはずが「逆?」とタカハシサンはぴんときてないらしい。

あどけなく、不思議そうにするのが、地獄に叩き落とされるような目に合い、どこまで乱れるやら。想像するだけで堪らなく。
「逆」の説明をせずに「とりあえず、着替えようか。僕が見繕ってあげるから」と腰に手を回し、隣の部屋へと誘った。

僕はダーマの王子になりたくて、なったわけでないし、国王になりたくもない。

といって、王室を抜けだせない以上、他の王子や、その手下、不信感が根強い国民の手にかかり、むざむざ死にたくはない。
緑の瞳をした僕は、そのためには、とくに手段を選んでいられない。

だからといって、むざむざと妥協するのも、今となっては癪なように思える。

好き好んで王子をやっているのでも、次期国王になる意欲がないといっても、僕は負けず嫌いなのだ。

そのことを、タカハシサンは改めて気づかせてくれた。なら、尚のこと、手放したくはない。

王子として保証された安定した地位と、かけがえのない恋人と、どちらも手に入れてやる。

自分の生き残りが懸かったパーティーを前にして、そう決意を新たにしたなら、隣の部屋にタカハシサンと共に踏みこんで、ドアの鍵を閉めたのだった。




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