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ダーマフィーバーのつかの間
③
しおりを挟む武藤先生がドアを開けてくれたのに、腕に抱えるものが落ちないよう脇を締めつつ「申し訳ありません」と俺は頭を下げた。
顔を上げれば、武藤先生が驚いたように鉢の花を見ていたので「これは、王子から」と差しだして見せる。
「大使館のほうでトラブルが起きて、対処しなければならないらしく、一時間ほど遅れてしまうとのことです。
花は王子からのお詫びだそうで」
「お詫びに花とは」とまだ驚いているようながら「日本とは感覚が違うんだな」と武藤先生は苦笑をした。
俺がほっと息をつくと「ああ、すまない、入ってくれたまえ」とドアの前から退いてくれ、でも、部屋に入る前に「あの、花にメッセージカードがあると思うんですけど」と言う。
「ああ、これだね」とメッセージカードが取られてから、室内に入って、それを読みながら歩く武藤先生の後につづいた。
短いメッセージではないのか。
テーブルのある部屋にきたなら、武藤先生はメッセージカードに見入ったまま、足を留めてしまった。
いつまでも動こうとしないので、しかたなく脇を通りすぎ、テーブルに鉢を置く。
「ここでいいですか?」と振りかえろうとしたら、後ろから抱きすくめられた。
もちろん、武藤先生に、だ。
瞬間、高梨の言った「セクハラ」が頭がよぎったものを、まさかと、思い「武藤先生、どうかされましたか?」と顔を振りむけた。
俺の肩に埋めたまま、顔を上げないで武藤先生が言うことには「君も、私と同じ思いだったとは」と。
高梨の「セクハラ」との忠告もあって、鈍感な俺でも、その言葉の意味することに、気づかないわけがなかった。
咄嗟に否定をしようとして、生温かい舌で首を、ぴちゃぴちゃ舐められて、言葉を失くす。
メッセージカードを読んでからの豹変ぶりからして、武藤先生の思いを知っていた王子がけしかけたのだろう。
要は、王子に俺は売られたわけだ。
現状をすぐには受け入れられないで、呆然としているところで、武藤先生は片腕で抱きしめたまま、もう片手を体の下へと這わせていった。
へそのあたりまできて、はっとし、その手首を両手で掴む。
腕から逃れたかったけど、元柔道日本代表にして、今も鍛錬をしている武藤先生には敵わずに「先生、だめです、こんな」と片手を掴む両手にしろ、ぎりぎりで食い止めている具合だ。
武藤先生を思いとどまらせねばと思いつつ、適当な言葉が浮かばない。
というか「王子がしかけたことなんです」と言えない。
武藤先生に恥をかかせるわけにいかない、というのもあるけど、それだけではなくて・・・。俺が言葉を探しあぐねていると、武藤先生は首を舐めあげて、耳に口を寄せ囁いた。
「君が身を預けてくれたら、国交賛成を表明する」
獣のように荒い息遣い交じりの言葉が、にわかには信じられなかった。
俺の体なんか欲しいがために、政治方針を変えるとは思いもしなかったから。
とはいえ、武藤先生に理性を失うほどの劣情があるのを王子は見抜いていたし、こうなることも想定していたのだろう。
キマシアのために、俺に身を捧げろというのか。
マスコミのカメラの前で頬に口づけされるは、連絡役にさせられて、周囲から睨まれるは、挙句の果てに身売りをさせられるという。
ここまでさせられて、王子の念願を叶えてやる義理はない。
ないと思うのだけど、ダーマの夜の町を連れ回されたときのことを思い出すに、国を憂いていた王子の横顔を思い出すに、掴む手の力が抜けていった。
ついには手を放してしまうと、了承と受け取った武藤先生が、さらに息を荒くしながら、片手を股間に滑らせた。
はじめは、おそるおそる撫でていたのが、息を乱すにつれ手つきも荒っぽくして、全体を包みこんで揉みしだいてくる。
身を固くして、歯を食いしばっていた俺だけど、興奮を抑えきれないといった性急な手の動きに耐え切れなくて「う、んっ」と声を漏らしてしまう。
声が漏れたのに驚いたように、武藤先生は手を止めたかと思いきや、耳にしゃぶりつきだし、もう片手も下ろして、かちゃかちゃと、ベルトを外しにかかる。
じれったそうにズボンのフックも外し、チャックを下ろそうとしたものを、途中で留め、耳にしゃぶりつくのもやめた。
チャックが開いたところから覗く、白のブリーフに見入っているのだろう。
王子が日本にきて、俺は連絡役にさせられただけでなく、白のブリーフをいつも履くようにも命じられていた。
ダーマの王宮で散々いたずらをしてから、大層、気に入ったようで、おかげで今では、替えの白いブリーフを二、三枚、持ち歩く羽目になっている。
トイレをするときに人目が気になるから嫌だったのだけど、今となっては、ありがたかった。
セックスをするときに白のブリーフを見せられたら、普通、萎えるだろうと思ったから。
王子は燃えるらしいものの、すくなくとも、日本では白のブリーフはダサいとの認識だったし。
だった、はず、なのだけど。
「しゃぶりたいな・・・」
武藤先生の荒い息遣いはおさまるどころか、熱い吐息交じりに、とんでもない言葉を囁かれた。
白いブリーフを履いていたら、女性なら引くだろうに、男にすればセクシーに見えるのか。
俺の認識不足だったのか。王子や武藤先生の性癖が特殊なのか。
どちらにしろ、見込みは外れて、がっくりときた俺は、投げやり的な思いになって、武藤先生の手が白いブリーフに伸びるのを、阻止しようとはしなかった。
そのとき。
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