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ダーマの休日
⑧
しおりを挟む彼が若いからか、この国の人間は精力が強いのか。
あの後、何度も濡れたパンツの中を犯された。
大して鍛えていない中年の体力と精力では、とても付き合いきれずに、途中で意識を手放してしまい。
目覚めたときには浴衣のようなものを着せられ、ベッドに横たわっていた。枕元にはメモがあって、英語で「じゃ、また」と。
いつの間に仕立てたのか。
俺の体のサイズにぴったりのオーダーメイドのようなスーツに袖を通して、外で待機していた案内係に連れられて、パーティー会場に戻ったら、すでに催しは終わっていた。
駆け寄ってきた高梨に、なんて詫びようかと思ったものの「王子から聞いたよ。話している途中で、気分が悪くなったてな」と言われた。
心配そうに見てきたものを、高級スーツに目が留まらないわけがなく「随分、気に入られたんだな」とにやりとされて、俺はなんとも言えなかった。
濡れたパンツの中を犯された以外は、国王の誕生祭の参加は外交的な成果がなければ、問題が起きることもなく、当たり障りなく終えた。
はじめから、日本側はやる気がなかったから、帰国して、味気のない報告をしても、別にお咎めを受けることはなかった。
キマシアの王子と体の関係を持ったとは口が裂けても言えなかったし、別に隠そうとせずとも、ばれることはないだろうと思った。
「じゃあ、また」と書置きをしていた割には、帰国してしばらく音沙汰がなかったからだ。
そもそも、キマシアまでは遠くて、そんなに頻繁に会いに行けないし、忙しくて暇はないし、王子にしろ「ある国」が目を光らせている以上、迂闊には来日することはできない。
あの聡い王子が、そんな現状を把握していないわけがなく、だったら、宮殿の奥の逢瀬は一度きりの思い出。
「じゃあ、また」はリップサービスのようなものと、俺は受け止めることにした。
その矢先、キマシアが日本に大使館を置くことが決まった。
国王の誕生祭での日本のふるまいに感銘を受けたのがきっかけで、これまで、あまりなかった国交や連携を強め、文化の交流を促進したいと、キマシアが申し出てきたから、とのこと。
日本としては「ある国」の顔色を窺って、表立って政治的な動きをできないところ、大使館を置くくらいならば大丈夫だろうと判断したらしい。
民主的になったキマシアからくる観光客が増え、それに対処する機関が必要との名目もあったし。
キマシアが感銘を受けたという日本のふるまい。
「ある国」の人間と揉めたことについて、その話を耳に入れた党の幹部には「よくやった」と褒められ、あのとき勇んで喧嘩を買っていた高梨は得意な顔をして、一方で俺はぎこちなく笑っていた。
高梨もはじめは「俺の手柄だな!」とご機嫌だったものの、心のどこかでは「あれくらいで大使館を作ろうと考えるものか?」と疑問を持っていたのだろう。
大使館に派遣されるのが、抱き着いてきたあの王子と知ると「お前、ほんと、なにしたんだよ」と怪訝そうに見てきた。やっぱり、俺はなんとも言えなかった。
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