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どうしようもなく彼のあれに惹かれている
しおりを挟む俺は彼に惹かれている。初めて一目、見たときから惹かれている。
入社したばかりのころ、指導役になった先輩が彼だった。誰にでも気さくでフレンドリー。一方、仕事では仲間や後輩を庇い、助けるためなら上司やお偉いさんにも噛みつく、頼もしさからして「大関」との愛称で呼ばれていた。
愛嬌がありつつ、どっしりとかまえ、体格も迫力満点だったから。それこそお相撲さんに劣らず百キロオーバーのわがままボディ。
お菓子を常備して、会社にいる間、ほとんど口をもごもごさせている印象。有名店のお菓子を、いつも新作や異なるものを差し入れるあたり、スイーツ店巡り、発掘が趣味という隙のなさ。
人望が厚い大関先輩は、また、いつも体から甘い香りを漂わせていることでも「見た目も体臭も癒し」「空気洗浄器」と慕われていた。という一般社員以上に、彼に惹かれていた俺は、ぜひとも、お近づきになりたく、お菓子のおそそわけや差しいれを積極的に食べ「おいしー」「おいしー」と連呼。すこしもすれば「お前もスイーツ好きなの?」とうきうきと休日のスイーツ店巡りにつれていってもらえるように。
そして、ついには先輩のマンションにお邪魔することになった。スイーツ店巡りをしている途中、晴天が一転、どしゃ降りになり、辺りに適当な店がなかったことから「うち、近くだから!」と招かれたのだ。
そりゃあ、玄関からあがるだけで、どきまぎして「シャワー先浴びなよ、下着と服、貸すから」と云われて頭を沸騰し、目を回しそうになったもので。「落ちつけ、まだ時機が早い」と滝行のようにシャワーを浴びて、暴れる心臓を宥めてから(先輩サイズではない、平均的な男物のサイズの)下着と服をはき、リビングへ。
扉を開けたとたん、湿った風が吹いてきたに、先輩がべランダに通じる窓を全開にし、その敷居の前に佇んでいた。「先輩、風邪ひきますよ。早くシャワーを」と呼びかけるも「んー、俺この体だから、むしろ熱いんだよ。だからへーきー」とくすくす。
はじめて俺を家に招き、先輩も浮き足立っているのか。子供のように、ふざけているらしく、俺も愉快になって「へーきーじゃないですよ。せっかくシャワー浴びた俺を、結局、風邪を引かせたいんですか」と笑いつつ、窓へとつかつかと。
俺のほうが背が高いとあって、先輩の肩越しに腕を伸ばし、窓を閉めようとしたら、先に縁をつかまれた。大関とあって、俺よりは力があり、窓を引けない。
といって圧倒的ではなく、力んでぷるぷるとする先輩。なめらかな曲線を描き、しなやかに揺れる贅肉に目を眩ませつつ、欲に負けないよう「先輩!いい加減にしてください!」と声を張る。
じゃれあいのはずが、にわかに怒気を放ったのに驚いてだろう。思わず先輩は手を放したようで、俺もつい窓を叩きつけてしまった。
しまった、せっかくのいい雰囲気が。「やっちまった」と気落ちする間もなく、目にとびこんできた、ぷるんとした薄紅の二の腕。濡れたことで、濃くなったような甘い匂いにも当てられて、我慢できずに、二の腕にかぶりついた。
俺は彼に惹かれている。彼の豊満な二の腕に、どうしようもなく惹かれていた。
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