12 / 17
⑫
しおりを挟む明らかに、うろたえてみせたものを、眉をしかめる小山の、手をとどめることはできた。
ただ、気を逸らすためとは、勘付かなかったのか。
勘付いたとしても、その内容が聞き捨てならなかったらしく、「器用貧乏ってわけじゃないが」と語りだす。
「たまたま、近くに泳げる施設や、川、海がなかったし、小学校にプールもなかったから、中学三年になるまで、泳いだことがなかった。
で、あるとき、テレビを見ていたら、お前が写って。
俺より小さくて華奢なお前が、ぶっちぎりで優勝をした」
脇腹にある手を、どう退かせるか。
と、考えるのに頭を割いて、話半分に聞く。
「へえ」と興味深そうに反応するのを忘れないで。
「テレビにでたのが、隣町の中学の奴って分かって、クラスで騒がれた。
そのとき、友達にけしかけられた。
あんなチビが、あれだけ早く泳げるんだから、巨神兵のお前が泳いだら、もっとやばいんじゃないかって。
おだてられて、乗ったのもあるが、そういや、これまで一度も泳いだことがなかったなって、思ったからな。
結構、わくわくしながら、泳いでみたら、浮いてこれなくて、監視員に救出されたってわけだ。
友達十人が、それを見ていたから、翌日には早速、クラスで笑い者になった。
恥ずかしいとか、傷ついたというよりは、『こいつら、ずっと俺を誉めながら、けなしたくてしかたなかったんだな』って呆れたし、いっそ、せいせいとした。
ただ、好きだった女子に『ださい』って白い目で見られたのは、堪えた。
おまけに、『小さくても、早く泳げる尚樹くんのほうが、かっこいい』なんて笑われて、それで」
「へえ」「そう」と上っ面に肯いていたのが、最後になって「はあ!?」と目をかっ開いた。
黒歴史的な過去を語っていた小山にすれば、予想外の反応だったようで、びくりとして、やや上体を退かせる。
その隙に、暴れようとしたが、すかさず、また前のめって押さえつけられたので、代わりに自由の利く口で、「ふざけんなよ!」とぶちかましてやった。
「あれだけ、溺れてても頑張っているからには、よほどのトラウマがあるか、水泳に思い入れがあるのかと思ったら!
ああ?女かよ!
所詮お前も、そこらの男子と変わらず、盛りのついた犬か!
すこしでも見直して、損しただろうが、阿呆!
なんだ、女だ!?
女のために頑張ってんのかよ!
この所詮、ちんこ思考野郎が!」
なんだかんだ、パンツが消えてから、ずっと溜めこんでいたのが、今になって、噴出したらしい。
それにしたって、何が引き金になったのか、自分でもよく分からなかったが、とにかく、際限なく「女って!」と罵倒が口から跳びだしてくる。
子供が癇癪を起したようなのに、「いや、最後まで、話を・・・」とさすがのスーパーマイベース小山も、困り顔になっている。
が、そのうち、脇腹に当てていた手で、口を塞ごうとしてきて、気づいた俺は、喉を破裂させんばかりに、怒鳴りつけた。
「パンツを消したのも、女のためだってか!
なんて、つまんない奴!」
怒鳴った傍からはっとして、腰を跳ねる。
「あ、パンツを被っている」とそのさまを目にした間もなく、手ではなく、口で口を塞がれた。
驚きつつも、すぐに放れたのに、俄然、抗議しようとしたのを、再度、かぶりつくように口付けされ、舌を入れられた。
手足が拘束されているといって、抗わないわけがなく、侵入してきたのを噛もうとしたが、予想以上に舌が肉厚で大きく、実質、歯が立たなかった。
比べて、俺のほうが顔が小さいこともあり、隙間なく口内を舌で埋め尽くされる。
逃げようのない舌をもみくちゃにされ、狭苦しそうに蠢いて、絶えず口内の表面が擦られ、そのたび、こもった水音が立つのに、背筋を震わせた。
息が絶え絶えになれば、舌を退けてくれたとはいえ、口内からは、でていってくれず、舌先で唇の内側を舐めてくる。舌先に噛みつくも、跳ね返され、またもや、口の奥まで捻じこまれ犯される。
抜きそうで抜かないで突っこんでを繰り返され、さっき「女」「女」と喚いていたせいもあってか、口付けを挿入のように錯覚する。
「舌と同じように、下も大きいのかな」とつい考え、「阿呆か俺!」と自分を叱咤したも遅く、体を火照らせ「ふ、あ・・・」と喘ぎを漏らした。
聞き逃してはくれなかったようで、口内の舌が止まる。が、攻勢をかけてはこないで、舌を抜いて、頬に口付けた。
俺の喘ぎに、むしろ頭が冷えたかと思い、一息つこうとしたところで、股間に足をすり寄せられた。
思いがけなかっせいと、布が薄い体操着の短パン、しかもノーパン越しに、固い大髄四頭筋で擦られては堪らず、「あっ、はあ・・・!」と鳴き悶える。
故意に、股間に足を押しつけ擦り上げられたことはないし、ノーパン越しに扱かれるなんて、未知の感覚だ。
まるで体の制御ができないで、歯を食いしばりもできず、「あ、は、あっ、くっ、う・・・は、ああ!」と突き上げてくる快感に、鳴かされるまま、だらだらと涎を垂らしてまう。
ノーパンの股間をいたぶられながら、耳をしゃぶられ、首を舐め上げられ、シャツに浮きでたそれを食まれて、ひたすら、あんあんと善がる。
「俺は小山の好きな女子ではないのに」と泣きつつ、腰を揺らしたら、股間から足が退いた。
「小山!」とすがるように声を上げるも、体を下にずらして、さらに遠のく。
それに合わせて、舌を胸から腹に滑らせ、しばし、へそをえぐるように舌先を捻じこんだ。
「あ、ああ、や、あ、ん!」と甘い痺れを覚えつつ、物足りなくて、腰をくねらせる。
「こ、やま、あ・・・!」と切羽詰って呼びかければ、へそから舌を抜き、同時に膝の裏を持って、もう片方の足も持ち上げ、開脚をさせた。
へそから滑っていった舌が、短パンのウェスト部分に至って、生唾を飲み込んだものを、ゴムをずらすことなく、布の上を通過していく。
落胆したのもつかの間、「ちょ、あ、だ・・・・!」と背中をしならせて、股間のほうに顔を向けた。
膨らみに届くか届かないのところで、舌を止めた小山と視線がかち合う。
足の間から、パンツを被った顔を覗かせるさまは、滑稽というか、おぞましかったが、てらてらと濡れる肉厚の舌を目にしたなら、どうしようもなく、固くなったのが打ち震える。
「いや、ノーパンしゃぶしゃぶじゃなくて!」と頭を振って、垂れそうになった涎を飲み、口を開けようとしたとき。「せんせー!頭いたーい!」と扉が開く音と、喚きが耳を打った。
カーテンを閉めてあったので、真っ先に発見されることはなかった。
とはいえ、「せんせー?」と室内を歩き回りだしたようとなれば、時間の問題だったが、泡を吹きそな俺が使い物にならない一方で、小山はしれっとしたもので、まず、めくれたシャツを直して、パンツを脱ぎ、枕元に置いた。
そして、かちこちに固まった俺を抱きしめるようにして、手首を縛っていたネクタイをほどくと、上体を起こす前に「ベッドの端に体を寄せろ」と囁いてきた。
ネクタイを首にかけて早々に、ベッドから立ち上がって、カーテンを開ける。
慌てて起き上がり、体育座りして縮こまれば、「おー、悪い。起してしまったかあ」と相手からは見えなかったようで、「平気。それより、どうした?」と何気ないように小山が応じて、カーテンを閉めてくれたおかげで、覗きこまれることもなかった。
「頭痛がひどくって、授業どころじゃなくってさ。
すこし、寝させてくれねえかなって」
「あー、そりゃ、タイミング悪かったな。
怪我した奴に病院まで付き添うってんで、俺に鍵を預けて、さっき、行ってしまったんだ。
ベッドを直したら、鍵かけて、扉にかけてあるやつを、『保険医不在中』にひっくり返しといてくれって、言われてさ。
今、でてくところ」
「マジ?どーしよー。
倒れるってほどじゃないけど、机で大人しく座ってられないくらいの、頭痛なんだよ」
「俺、頭痛薬持ってるから、分けてやるよ。
それ飲んで、しばらく、静かなところにいたらどうだ?」
「いいのか?ラッキー!
じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ!」
つい先まで、パンツを被って人の股間に顔を埋めていた奴とは思えないほど、そつなく応対して、まんまと相手を口車に乗せてみせた。
いや、丸々、ほらを吹いたわけではないらしく、鍵が閉まる音がしたからに、保険医に指示されたのは事実なのだろう。
それでいて、指示にすぐに従わず、「先生が戻ってくるまで、寝てていいだろう」と居座っていたに違いない。
相手に薬を渡したら、戻ってくるだろうか。
まさか、先のつづきをするとは思えないが、一応、保険医に鍵を託された以上、確認しにくるかもしれない。
そのときに、顔を合わせたくなかった。
ノーパンしゃぶしゃぶをされる前に、伝えたいことがあったように思うものを、今となっては、ただただ羞恥心を掻きたてられ、消入りたくあるだけだ。
早く保健室を後にしたいならば、固さを保っているのを、処理しないといけない。
中々、萎えそうにないし。
いくら授業中で、辺りに人気がないといって、短パンで膨らせたまま、外をほっつき歩く勇気もないし。
ズボンを下ろし、申し訳なくも、ティッシュを拝借して、尻の下に敷く。
普段から、お盛んなほうでなく、これといった鉄板のおかずがなかったものを、どうにか、作業的に扱いて済まそうとした。
が、気がつけば、ずらした短パンをはき直し、その上から揉みこんでいた。
そう経たずに「あ、や、そん、あ、ああ、舐め、んあ、こ、やま、あ、あん、ああっ!」と果てる始末で、ますます顔向けできなくなった俺は、その日、部活を休んだ。
藤子の件について、問いつめられたり、糾弾されるのから、逃げたものと、周りからは見られ、物笑いの種にされただろうが、おかげで、急に休んだのを、勘ぐられもしないから、むしろ、助かった。
ただ、藤子の件を、そう引きずることはできない。
そう、いつかは、再会しなればならない。そのときパンツを消されて、「堂々過ぎるパンツ泥棒め!」となんだかんだ、どこか遊んでいたようなのを、継続できるか、心配でならなかった。
下手したら、微妙に均衡を保っていたその関係が、ダム決壊のように、壊滅的終わりを迎えるのではないか。
そうして、小山は水泳部を辞めてしまうかもしれない。
どんな理屈なのか、分からなかったが、そう思えてならなかった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます

星蘭学園、腐男子くん!
Rimia
BL
⚠️⚠️加筆&修正するところが沢山あったので再投稿してますすみません!!!!!!!!⚠️⚠️
他のタグは・・・
腐男子、無自覚美形、巻き込まれ、アルビノetc.....
読めばわかる!巻き込まれ系王道学園!!
とある依頼をこなせば王道BL学園に入学させてもらえることになった為、生BLが見たい腐男子の主人公は依頼を見事こなし、入学する。
王道な生徒会にチワワたん達…。ニヨニヨして見ていたが、ある事件をきっかけに生徒会に目をつけられ…??
自身を平凡だと思っている無自覚美形腐男子受け!!
※誤字脱字、話が矛盾しているなどがありましたら教えて下さると幸いです!
⚠️衝動書きだということもあり、超絶亀更新です。話を思いついたら更新します。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-
悠里
BL
コミュ力高めな司×人と話すのが苦手な湊。
「たまに会う」から「気になる」
「気になる」から「好き?」から……。
成長しながら、ゆっくりすすむ、恋心。
楽しんで頂けますように♡


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる