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転生してスローライフを送っていた俺は、愛しいあなたのために銀郎の遠吠えを響かせる
⑦
しおりを挟む洗いざらい打ちあけて「すまない・・・」と肩を縮めて顔を伏せた、無力で哀れな学者。
もう泣くこともなく「煮るなり焼くなりスキにしてくれ」とばかり、いっそせいせいして自ら首を差しだしているよう。
狼族に憎まれ罵られ痛めつけられ八つ裂きにされても、しかたない。
「なんなら本望」と腹をくくっているのだろうとはいえ、正直、困る。
傲慢で残虐なヒトの手にかかった同族には申し訳ないが、実感が湧かない。
なにせ、狼族でも俺は、金に狂い、宗教に狂ったヒトに遭遇してなく、その蛮行を目の当たりにもしたことがなかったから。
ピンが命がけで逃してくれたおかげで、伝聞でしか把握していないし。
そりゃあ、その内容は反吐がでるようなものだったが、長く雪山を一匹でさ迷っていては、ピンが殺れたことへの恨みも忘れかけ、浮世ばなれした感覚になったもので。
転生前の世界の黒歴史を、今まさに体感していることを思い知らされ、まだ頭と心の整理がつかないだけなのかもしれない。
が、今のところは、目の前の、罪がないでもないヒトに復讐したくはなく、許しも乞わず身を捧げようとするのを持て余すだけ。
「せっかく会えたのに。もっと話したいのに」と悔しくさえあり、でも、そう告げるのは、この男をより傷つけるだろうと思い、代わりに抱きしめた。
話しこむうちに、たき火が小さくなり、男の体は冷え冷え。
俺の体温を分け与えるように、ひしと抱きつくことしばし、震えて、かすかに呻きだしたのに、上体を退けて向きあえば、絶え間なく男が涙をぽろぽろと。
苦悶してなく、悲愴でもなく、引きつりのない無垢な顔つきをして、おもむろに手を伸ばした。
銀髪に触ろうとし、俺はかまえず身動きしなかったものを、直前に手をびくりとして停止。
子供のように涙目で伺ってきたので肯くと、おそるおそる頭に手を乗せ、割れやすい硝子細工を扱うように髪を梳いた。
涙を滴らせつつ「なんと美しい・・・」と感嘆の息を漏らして。
「生き物は生きてこそ、美しいのに」
その一言に、背後の毛皮のコートに思いをはせつつ、撫でられるのが快く、俺もうっとりしたように目を細めた。
愛おしげに丁寧な手つきで頭を撫でながら、そのうち、もう片手を頬に添え、頬に口づけを。
転生してから、性交も自慰もしていない。
生殖器はあるものの、ゲーム上、子を成せないから、機能せず性欲もないのかと思っていたのが、髪を梳き、頬の産毛を撫でられ、口以外にキスされているだけで、心音を乱し、息を切らし、腰を熱く疼かせ「はあ、ああ・・・」と太ももを合わせてすりすり。
相手もすこしは火照ってきたものを「まだ寒そうだ」と肌を摩擦するように、体に手を滑らせた。
呼応するように、頬を撫でていた手を移動させ、三角の耳を撫で撫で。
半獣の象徴的な部位は性感帯なのだろうか。
耳をこそがされて、唇を噛んでいたのが、我慢できずに「ふあ、あ、ああ・・・」と喘いで、高ぶる熱に扇動されるまま、男の股間を両手で握りこんだ。
反応しかけの膨らみを、性急な手つきで、ひたすらごしごしと。
銀髪に指をからめ、三角の耳を指先でなぞり、頬を舐めながらも、熱い息を切らし、すぐに股間をしとどに。
舌なめずりをして容赦なく、水音を立てて扱く俺にしろ、とっくに股を濡らし、下着と服が擦れるだけで、追いつめられていた。
とはいえ、耳をいじられて悪寒が這いあがりはするも、決定打に欠ける。
自分で扱くか、男のとこすり合わせるかと、片手を放そうとしたとき、その前に髪を梳く手が退き、尻尾へと。
付け根から先っぽまで、かるく尻尾をつかんだ手が滑ったとたん、強烈な快感の痺れに体を貫かれた。
「はああ!ああ、あん!」と腰を抜かしそうになり、男にしがみついたのに、気をよくしてか、尻尾への愛撫を畳みかけ。
耳をくすぐりつづけ、首をしゃぶって、さらに自分のそそり立ったのを押しつけ、ぐちゃぐちゃごりごり。
「や、やあ!も、もう、ああ・・・!」と背中に爪を立てつつ、負けじと俺も腰を揺すれば、強く尻尾を握りこまれ「やああ、あああん!」と射精。
俺がぐったりするのにかまわず、まだ固いのを擦りつけてきたからに、先っぽを爪で引っかき、同時に首をがぶり。
「くう・・・!」と背中をそらせて身震いし、寄りかかってきたのを抱きとめ、ともども敷物に倒れた。
気が遠くなるほど、逆上せあがって呼吸困難になりつつ、密着し抱きあって、気だるくも充足感を噛みしめて。
ただ、かすむ視界に毛皮のコートを捉えて「ごめんな」と呟いたが。
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