魚、空泳ぐ町

ルルオカ

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魚、空泳ぐ町

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猫がじっと見入るように、凝視してくるのに耐えられず「やっぱ、いいです」と引き下がりそうになったところ、その目が伏せられ「当主に頼まれたんだよ」と呟かれた。

「手術費用が欲しいなら、娘を抱いてやってくれって」

「は、え?」と間が抜けた声を上げつつ、「いや、でも」とすぐに前のめりになる。
皆まで告げる前に「たしかに、俺の恋愛対象は男だけど」と先んじられた。

「女と、やれないことはない。
当主に頼まれる前に経験済みだったし。

でも、あいつを抱けなかった」

どうしてと、問う間もなく「よりによって、当主に頼まれるなんてな」と告げられ、とたんに察した健二は、今度は一言も、声を上げられなかった。

ただ、絶句するさまが、まぬけだったからか、黒田は苦笑し「俺も若かったから」とつづける。

「当主はいっそ潔いほど、娘以外には微塵にも関心を持たなかった。
屋敷の外の人間は皆、性根が腐りきっていると思いこんでいたし、子供だった俺と近藤も汚物扱いしていたから。

性格は最低だったけど、なにせ、あいつの父親だ。
この世のものとは思えないほど、美しい姿形をしていた。

人間らしい、温かみがある、表情や感情を見せないのが尚のこと、人外のような美しさに磨きをかけているみたいで」

他人事のように無感動に語っているとはいえ、何とも応じようがない。
絶句したまま、身動きがとれないでいたが、「俺が殺したようなもんだ」の一言には肩を揺らした。

「母さんが死んだのは、俺が男を」

気がつけば、手を伸ばして黒田の腕を掴み、座っていたのを引き上げ、抱きしめていた。

反射的に大胆なことを、やらかしたのに、健二自身驚きつつも、「すみません!」と引き剥がそうとはせず、いっそ、先のつづきを口にさせまいと、胸に顔を埋めさせる。

息もしにくだろうに、もごもごと声を発そうとするものだから、「そんなこと、言わないで」と抱きしめる腕の力を、さらに強めた。
発言するのは諦めようとはいえ、いよいよ息苦しくなってか、背中を叩いてくる。

腕の力を弱めると、「はっ」と息を吐いて、顎を上向かせた黒田は、あらためて健二と向き合い、「あんたこそ、そんな泣きそうな顔をするなよ」と困ったように笑ってみせた。

「俺なんかに泣かれる資格なん」

「て」と告げようとしたのを、唇で塞いだ。
それでも尚、口をつぐみそうにはなかったので、隙間から舌を潜りこませて、口内をかき乱した。

はじめは手で押したり、顔を振ったり、抵抗を見せたものを、不健康な生活が祟ってか、すぐに体力が尽きたようだ。

そのうち、押していた手で胸元に縋りつき、体重をかけてきて、水音を立てて口内をかき回されるまま、頭を揺らすようになった。

「あ、もっ・・・」と息を切らしながら、切羽詰まったように喘ぎだしたのに、名残惜しくも舌を抜く。
唇を舐め、舌なめずりしてから、上体を起こして見下ろれせば、忙しく息をする黒田が、前髪を被りつつ、濡れた瞳で見返してくる。

肌の赤みが、すこし薄まり、息の乱れがやや収まったなら「俺は」と切りだしたのに、今度は口を挟まず、耳を傾けた。

「気にするなと、宥められても気にする。
いや、俺のせいではないと、平気に思って生きていたくはない、のだと思う」

口を開こうとしたら、黒田のほうから、口づけをしてくる。
すぐに唇をずらして、頬ずりをしつつ、耳に口を寄せ、「だから、つかの間だけ、罪悪感を忘れさせてくれよ」と囁いた。

肯く代わりに、背中に回していた腕を、だらりと下げると、黒田はうつむいて、その手首を掴んだ。

健二の顔を見ないよう、うつむいたまま、手首を引いて歩いていき、台所の隣にある、暗いリビングのほうに向かう。

屋敷の側面にあるリビングは、側面部分一面の壁が、すこし迫りだしていて、ガラス張りになっている。
屋敷の周りは、背の高い木々が壁のように囲んでいるものの、ここだけはテラスのようになって、開けた外の景色を望めた。

夜空に月が浮かんでいるのが、ちょうど望めて「あ、三日月だ」と思っているうちに、ソファに座らされる。

月を背に逆光になりながら、涙目を艶めかせる黒田に、見惚れたのもつかの間、股間を撫でられ、尻を跳ねた。

「くろ」と開こうとした口に、人差し指を当てられ、思わず声を飲む。
「いい子だ」とばかり、笑いかけるのも、あでやかで、声を飲んだまま呆けていたら、黒田が視界から消えた。

やや遅れて視線を下げれば、黒い頭が股間に埋まっていた。
ベルトに手をかけられて、腰を震わせるも、咄嗟に伸ばそうとした手を、握って留めた。

ベルトを解いてジッパーを下ろし、膨らみを露にしたところで、下着越しに指でなぞってくる。

もし、いきなり剥きだしのに、舌を寄せられたのだったら、両手で頭を掴んでいたかもしれない。
と、黒田も見越していたのか、指をを滑らせたり爪先でかいたりして、布越しのいたずらに勤しんで、中々、下着に手をかけない。

大学を卒業をしてから、ご無沙汰だったこともあり、くすぐる程度のにも、下半身を早々に、熱く疼かせ、中心部分を露骨に膨らませる。

陶然としたように「っは・・・」と熱く吐息してはもう、下着をずらされ、そそり立ったそれに舌を這わさられても、手で止めようとするどころか、足を閉じようともしなかった。

「こんなの駄目だ」とまだ頭は正気なものを、すっかり体は快楽に毒されて、水音にも痺れてしまう。

黒田の目の前で、節操なく、体の反応を見せるのが忍びなく、固く目を瞑ったのが、水音だけでなく、ベルトの金具が揺れ、布擦れする音、熱っぽい吐息交じりに「は、う、う・・・ん」と喘ぐのが耳について、より昂ってしまう。

股間の質量が、増したのを自覚させられ、恥ずかしがる間もなく「う、うふ、ん」と善がるように鳴いたのに、刮目した。
股間にしゃぶりつく頭に手を置いて、上を向いたところで、前髪をかき上げる。

前に、隠れイケメンだと指摘したものの、じっくりと顔を拝見するのは、はじめてだ。

切れ長の目が印象的で、凛々しい顔つきをしつつ、まだまだ肉つきが足らないせいか、少年や少女のように、なんとも心許なげな色気もある。

「うん、やっぱりいい」としみじみと見ていたら、黒田が晒された額を赤くし、それを隠すように、すかさずまた、股間に顔を埋めようとした。

一気に追い立てて、終わらせようとしたのだろうが、そうはいくかと、肩を掴んで押し、頭を下半身から遠ざける。
黒田に抵抗する暇を与えず、両脇に両手をいれ、体を持ち上げ、太ももの上に股がらせた。

黒田も下半身が硬くなっていて、股がらされたとき健二のと擦れたなら、肩をすくめ、眉尻を下げたまま、目を泳がせた。

「つかの間だけ、忘れさせてくれよ」と扇動的に誘ってきたくせに、初心な反応をするのが可笑しいようで、そのあざとさにまんまと火をつけられ、腰を掴んで引き寄せると、俄然、自分の腰を突きあげはじめた。

濡れそぼった固いそれを、黒田の股間に、がむしゃらに擦りつける。
薄い布のズボンはあっという間に、水気を含んでぐちぐちと音を立てだし、「あ。や・・・ん、あ、ああっ」と黒田は体を退けようとしながらも、絶え間なく喘いでいる。

やだやだと、しきりに喘ぐのに聞く耳を持たないで、猛攻をやめずに、布越しの股間を濡らし扱きつづけた。
もう、やだとも喘げず、最後の抵抗とばかり、首を振っているところに「黒田さん」と熱い吐息交じりに呼びかける。

汗で前髪がはりついて、額や目元が露になっているのを注視しれば、薄く目を開けた黒田が「あ、ああ」と泣きそうな顔になって打ち震え「あ、あ、だめ、見な、あ、ああっ!」と達した。

内側から染みた股間を、まだ達していない健二のに、ぐちゃりと、押し当て、抱きつき、もたれかかってくる。

黒田も久しぶりだったのか、胸に顔を埋めて、いたいけに体を震わせつづけ「はあ、あ、あぁ、あ」と尚も喘ぐように、ひたすら呼吸をした。

腰が抜けたような相手に、追い打ちをかけはしなかったとはいえ、そのまま済ませるつもりもなく、震えが収まってきたところで、黒田の体を反転させた。
自分の上体に背中をもたれさせ、そそり立つのを、ちょうど尻の割れ目に挟むようにしたなら、足を開かせる。

「え」と振り返ろうとしたものを、時すでに遅く、耳の後ろを舐めて、黒いTシャツの裾から手を差し入れた。

肌越しに、あばらの骨の凹凸を手でなぞって「もっと食べさせなくては」と思いつつ、胸の突起を指で撫でる。

「あ、やあ」と閉じようとした足を膝で押しとどめ、再度腰を揺すりだした。「あぁ、だめ、ぇ、ん、イった、ばか、んあぁ」と首を振りながらも濡れた股間をぐちゃぐちゃと鳴らすのに、耳にしゃぶりついたまま、笑い声を漏らす。

「駄目じゃないでしょ?
ほら、ここは喜んでますよ?」

ズボンの中に、手を滑りこませて、固くなりかけている、それの先端を指先で擦れば「は、あぁん・・・」と感極まったように鳴く。

「ほら、お尻をしめて?」と請われて、すんなり従ったところで、先端を擦るのを早めて、後ろから盛んに突いてやった。

「あ、ん、や、やあ、あん、あ、あ」と快感に貫かれてだろう、ぐったりと、もたれてきた黒田の首筋を舐めながら、胸の突起と下の先端と後ろからを、同時に攻め立てていく。
脱力しつつも、限界に近づくつれ、太ももを力みはじめ、尻のしめつけも強めていった。

「あ、あぁ、あああん」と達して、太ももを跳ねた揺れが、締めつける尻にも伝わってきて、健二もやや遅れて「っ・・・!」と射精をした。

声もなく、もたれかかってきた体が、ずれ落ちそうになったのを、すかさず抱えて、顔を覗きこむと、意識を失っているようだった。

あどけない寝顔を見て、健二もつられるようにして、ひどい眠気を覚え、うつらうつらしながら、近くの棚にあったタオルで、全身を拭いてあげた。

着替えを探す気力はなかったから、Tシャツをまた着させて、下半身には別の大きめのバスタオルを巻いてやる。

自分は濡れたところを、かるく拭いただけで済ませ、腰にバスタオルを巻いた黒田を抱えて、深い眠りについたのだった。






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