倒錯文学入水

ルルオカ

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倒錯嫉妬仕置・高井

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時さんの食材の買出しに、「どうせ、暇でっしゃろ」と連れだされたときのことだ。

大根を二本肩にかけて、道の脇をふらふらと歩いていたら、先を行く時さんが「あら」と止まった。

「高井さんやないですか」

時さんが視線をやったほうを、見やれば、行き交う人々を挟んで、向かい側の脇道に高井が歩いていた。
だけではない。

傍らには女が寄りそっている。

白いシャツに、青の長いスカートをはき、髪は団子にして、ひっつめている。

見た目や仕草からして、品があり、おしとやかながら、高井の歩幅に合わせての、足の運びはきびきびとして、目つきは、割と鋭い。

なるほど、頑固でぶっきらぼうな高井とお似合いかもしれない。

と、白々しく思いかけて、「あれ、あの人、前のお見合い相手やないですか」と寝耳に水に、聞かされる。

「前のお見合い相手?」

「野田さん、聞いてらっしゃらないので?
前に行った、慰安旅行は、そう見せかけてお見合いやったそうです。

でも、ほら、途中で帰ってきて、家にきはりましたやろ?
普通、そうやって相手をほっぽりだしたら、破談ですわ」

ため息を吐きつつ、僕をかるく睨んでくる。
あのとき、山國屋が取りなしたようだが、ろくでもないことを、吹きこんだのだろう。

まあ、あのときについて、問いただされても困るので、大人しくしていたら、していたらで「あの様子やと、破談にならんかったんですかねえ」と時さんはお節介な口が止まらず。

「なんや、もう、夫婦に見えなくもないですわ。

高井さんなら、ようさん、子供もうけて、そら、誠実な夫、よき父親として、健やかな家庭を作りはるんやないですか」

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