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倒錯初恋緊縛・山國屋
余談
しおりを挟む「ということには、ならなかったです。
なにせ、相手は若いころの色艶がすっかり失せ、太鼓腹の、みっともない体つきになっていましたからね。
あれでは、勃起できませんよ」
学校の記念式典に招かれたあらましを滔々と語り、そう結ぶと、ずっと背を向けていた野田先生の、肩が落ちた。
聞こえよがしにため息をついて、顔だけ振り向き、忌々しげに私を見やる。
「君、このごろ、僕を弄ぶ趣向を変えてきているな・・・」
「否定はしません。
というのも、私には加虐性愛ではなく、被虐性愛の気があるように、思えてきたものですから」
「聞かなかったことにする」
つれなく、前に向かれてしまったのに「そんなことを言わず」と正座を崩して、にじり寄り、肩を指で撫でる。
「折角ですから、艶本の作品の参考にしてやってください」
ハエでも払うように、私の手を叩いた野田先生は、冷たい目を向けつつ、睨みつけてはこないで、ふ、と鼻で笑った。
「意気地なしの泣き言なんて、つまらないにもほどがある」
「あれでは、勃起できません」と強がったのを、見抜いたらしい。
といって、初恋の清算ができず、おめおめと帰ってきたのを憐れみも、慰めもせず、一笑に付すなど、相変わらず、いい性格をしている。
背筋を震わせつつ、腰を疼かせる私も、大概だが。
「意気地なしか、試してみますか」
「ほざいていろ。
この悪人の皮をかぶった善人が」
やはり、私は被逆性愛の気に目覚めたのか、本質がそうだったのかもしれない。
このやりとりを、堅物中の堅物の高井君にお披露目して、蔑んだ目で見下ろされたいとまで、思ってしまった。
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