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倒錯初恋緊縛・山國屋
二
しおりを挟むカストリ雑誌の「奇譚クラブ」の絵を思い起こしながら、自らの手で亀甲縛りをしたのだが、初めてにしては上出来だろう。
着物の上から緊縛され、所々はだけて、汗ばんで艶めく、浅黒い肌を覗かせるのがいい。
一方で下半身のほうは、足が片方ずつ畳んで縛られて、褌に縄が食いこんでいるのが丸見えになっている。
畳を背にして倒れながら、足を広げているのが滑稽であり、私に見下ろされ、顔を背けつつ、頬を赤らめるのも、悪くない。
「後藤は遊び人でしたから、緊縛も経験済みかと思いましたが、処女みたいに恥じらってまあ。
どうやら、初体験だったようですね」
「処女」と聞いて、涙目に睨みつけてきたものの、私がしゃがみこむと、怯えるように、肩をすくめる。
体を揺らしたのに「っ」と、微かに息を漏らしたのを聞き逃さず、あえて荒っぽく上体を起こし、私が座る体の前面に寄りかからせた。
動かしたことで、胸の突起が擦れて、股間に食いこんだのだろう。
「っは・・・!」と熱っぽく喘いだのに、ほくそ笑みながらも、脇腹や足の付け根など、際どいところを、やんわりと撫でる。
「健康的に焼けた黒光りする肌に、男をも惚れる、鋼のような筋肉質な体つき、懐深く、統率力のある、気風のよさ。
男の中の男と評されていたあなたに、被虐性愛の気があるのを、加虐性愛の質の私は、嗅ぎとっていたのですよ」
撫でられているのと、笑う息が耳にかかるのに合わせて、「くっ・・・は、っあ」と体を揺する。
「思ったより、反応が良いですね」と囁いて、耳に齧りつき、しゃぶりだすと、「は、ああ・・・!」と肩を跳ねて、甲高く鳴いた。
脇腹と足の付け根を、撫でる手加減を変えず、耳をしゃぶるのを加えただけなのだが、「あ、あ、や、っく、あ、はあ、あ」と善がって、しきりに体を揺らし、腰をくねらせている。
自ら善いところに縄を食いこませ、擦るのに没頭しているらしく、さらに、しなう肉体が熱を持ち、汗ばんできた。
しっとりとして、弾力ある太ももを、揉みこみ、試しに、近くで食いこむ縄を引っ張ってみる。
とたんに、「ふ、あ、や、ああっ!」と尻を跳ねて、ぐったりと寄りかかってきた。
耳をしゃぶるのをやめて、肩から下を覗きこめば、縄が引っかかっている胸の突起は、血色よく張りつめて、縄が食いこむ褌には、染みが広がっている。
そのさまを嘲って「こんなに早漏で、よく細君と営めますね」と耳元で囁き、褌の裾から人差し指を差し入れた。
濡れた先を指先でいじくり、水音を立てながら、もう片手で、胸の突起を縄に擦りつけるように、撫でる。
「く、はっ・・・・山、國、屋・・・も、やめ」と、あの男気溢れる後藤が泣いて、幼気に首を振ったものを、鳴いて悶えるのをやめないから、こちらも愛撫の手を緩めない。
「あ、あ、やあ、ああ、ご、ごめ、んあ、ああ、あ、あや、謝、る、は、ああ、から、あ、く、あぁ・・・!」
ついには、泣きじゃくりだしたのに、なんだ、悪気を覚えていたのかと、白々しく思う。
再会したばかりの時なら、癇に障ったかもしれないが、今やどうてもよく、「謝ることはないですよ」と子供を宥めるような声音で囁きかけた。
「私は、後藤に快楽を味わってほしいだけですから。細君があなたに、与えられないような、ね」
くつくつと笑ってから、耳に舌を捻じこみ、両手で縄を引っ張り、しならせた。
「ああ!そ、ん、あ、な、あん、や、やあ。ごめ、んあ、謝、る、ん・・・って、え、く、っあ!」と尚も謝意を述べながらも、あっという間に果てる。
全身、痺れきったように、私にもたれつつ、尻に食いこむ縄に、固いのを擦りつけると、身をすくめる。
もう謝意を言葉にもできずに、ひたすら泣きじゃくる後藤を、まだまだ緊縛からも、快楽からも解放してやるつもりはなかった。
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