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ハイヒールで俺は西洋文化についていけない①
しおりを挟む前世の高校では、世界史を選択。
授業では教師がよくオモシロ豆知識を教えてくれた。
中世ヨーロッパ風の乙女ゲーム世界に転生してから、思いだした、その一つ。
どうして、中世ヨーロッパの女性は、すっぽり足をおおうスカートとハイヒールをはいていたか、というもの。
理由は、立ったまま排泄をするから。
中世ヨーロッパにもちろん、水洗トイレはなく、というか、まともな設備もなく。
立ちション、野糞は当たりまえ、町なんかでは、糞尿を窓から道にぶちまけていたらしい。
貴族もまた衛生意識が低く、きらびやかな格好をして澄ましつつ、ボリュームのあるスカートのなかで排泄をしていたわけだ。
で、糞尿まみれの地面や道を歩くためにハイヒールをはくと(スカートに飛び散るのはいいのか・・・)。
生まれたときから、トイレにウォシュレットのあった俺には、とても真似はできず。
まあ、乙女ゲームでそこまでリアリティを追求しないだろうと思ったのが、転生して間もなく目撃。
庭で女性がしばし佇んで、歩きだしたら、のこされていた「それ」。
すこしして、使用人がすくってバケツにいれたとはいえ、ばっちり跡が。
サイワイ、我が屋敷の人や領地は、医師の叔父の指導によって(決められた排泄の場を設けたり、適切な処理をしたり)清潔さが保たれ、使用人や領民にも衛生意識が植えつけられたから、ウォシュレット必須世代でも耐えられたが・・・。
もともと領地外にでるのがオックウだったのが、貴婦人の排泄事情を目にして、さらにヒキコモリに。
幼なじみの令息、エルビーに会いたくもなかったし。
いや、エルビーをキライではない。
社交ダンスで、俺にリードをされて、笑いこけるような屈託のなさは、なんなら好ましい。
ただ、前世では柔道部キャプテンだった、ゴリマッチョな体型を維持して、一物も健全なままでは。
主人公と結ばれるルートを外れては、同性婚になるし、いや、それならまだしも。
だって、子だくさんの家庭を築く予定なのだ。
第二の穴のない俺が、なにをどうやって出産をするのか、とても経験してみたいと思わないし、想像したくもない。
どうして、もともとの設定、薄幸の美少女にならなかったかな!
せめて、性転換してほしかったけどな!
性別が変わらず、体つきも雄雄しいままでは、貴族の令嬢として日常生活を送るのも、ドレスアップするのも、ハイヒールをはくのも、いつまでたっても慣れやしない。
親がおおらかで、薄幸の美少女がゴリマッチョに豹変しても娘を溺愛する設定を保っているのが、せめてもの救い。
ラフな格好をするのが許され、礼儀作法を気にしなくていいから、領地にいるときだけ、ほっとできる。
といって、屋敷にいると、ちょくちょくエルビーが訪ねてくるに、森番とあちこち歩きまわるのが日課に。
たんにエルビーから逃げているだけでなく、一人娘とあり、婿をとる形で、領主の座を受け継ぐ立場なのを心得ての、土地の調査だ。
前世では柔道部キャプテンだっただけあり、我ながら糞真面目なもの。
「押忍!」とばかりザ・日本男児にして貴婦人扱いされる理不尽さを嘆いたってしかたない。
どうせ現代日本にもどれないなら、この世界で与えられた役割を責任もってこなそうと考えて。
同時に「どうしたら、結婚しても子づくりしないで済むか」と頭を悩ませていたが。
子だくさんの家庭を築くのが確定だろう、エルビーのルートを避けられれば、いろいろと裏工作をして、どうにかなりそう。
インポの殿方と結婚し、養子を実子に見せかけ、愛はあっても性交のない円満な家庭を築くとか。
もしくは、乙女ゲームの主人公とエルビーがくっつくよう手を回してもいい。
森番と土地を見てまわれば、気が紛れたし、考えごとをするのにちょうどよく、アイディアがどんどんと。
股に重量感があるまま、第二の穴もなく、子を産まされる非道な運命から、逃れられる希望が見いだせたように思ったのだが・・・。
ある日のこと、森番とでかけるまえに、皇女の突撃訪問があった。
もちろん事前の連絡なく、大名行列のように物物しくオツレを伴い「近くまで寄ったから」と高笑いをして。
俺が社交界デビューしたパーティー以来、しばらく大人しかったから、油断をしていた。
さすが乙女ゲームのザ・悪役令嬢。
エルビーが外国へいったところを狙い、奇襲をかけてきやがって。
使用人や従者だけでなく、お友だちとかいう、貴族令嬢令息十人も同伴。
なんの準備もなく皇女ご一行を迎えるのに、屋敷はてんやわんや。
突撃訪問自体、イヤガラセなのだろうが、いやいや、まだまだ。
彼女愛しのエルビーの目を盗み、にっくき俺をどうやって料理し虐げるか、その思惑は計り知れず。
逃げることも、抗うことも、刃向かうこともできない立場で、戦々恐々としつつ身がまえていたら、テラスでお茶をすることになり「これは、初物の紅茶で、あなたにぜひ飲んでほしくてね」と。
従者によってポットから、そそがれた紅茶は、なるほど香ばしい。
つれの令息がカップを口にし、喉仏を上下させたのを見てから、飲んでみた。
舌触りにも、味にも問題なし。
拍子ぬけするも、カップの中身をすこしでも減らせば、すぐに注がれて「さあ、エンリョせず」と急かされ、水のようにがぶがぶと。
一気飲みを強要するように、紅茶を飲ませた皇女の思惑が知れたのは、お茶会のあと。
皇女と令嬢令息、五人の従者をつれて、庭に散歩にでたとき。
にわかに襲われた尿意。
多く水分摂取したせいもあるが、たぶん、紅茶には、排尿をうながす成分があるのだろう。
そのことに加え、俺が(この時代にしては)潔癖症なのを知ったうえで、辱めてやろうという魂胆か・・・。
皇女を中心とした会話に混じれず、すこしハナレタところで、もじもじしていると「あらあ?どうしたのお?」と扇子を口元に当てて、したり顔。
「おトイレなら、どうぞ、わたしたちの目を気にせず、そのままなさりなさいよ」と令嬢令息とともに俺を注視しながら、にやにや。
顔を火照らせる俺の心中といえば。
いっそ漏らすなら、腕ひしぎ腕固めをして、令嬢の顔を股に埋めさせて、存分にアンモニア臭かがせてええええ!
恥じらいより、怒りよって元柔道部キャプテンの血が騒ぐも、相手は皇女、しかも自分の領地内では尚のこと、手だしができない。
観念するにしても「どうやって、下着脱ぐの!?」と今更、疑問が。
人目のあるところで下着を脱ぐのと、下着をつけたまま漏らすのと、どっちがマシだ?と迷っているうちにも、尿意が限界に・・・。
皇女を煽るだけ煽って、どうして、俺が絶体絶命のときにはソバにいないんだよ、エルビー!
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