ここはダンジョン3丁目です

ゆめのマタグラ

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第6話 最強の冒険者、現る

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 ダンジョン。
 
 それは人類の探求心を煽り、魔物達の巣窟となっている場所。

 ここは冒険者達が拠点にしている宿場町から馬車で1日、停留所から徒歩3日の場所にあるダンジョン3丁目。

 その洞窟6F最奥の部屋で、緊急会議が行われていた。



「みんな集まったわね――これが魔界ダンジョン協会から送られてきた手配書よ」

 ボス代理であるエル(ダンジョンエルフ)は、ホワイトボードに1枚の写真付きポスターを張った。
 
  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 ダンジョン潰しの魔剣士
 仮名:ブラック

 見た目:黒い天然パーマ、赤いハチマキの男。身長は180cmくらい。黒い外套。
 顔:目つきが悪い。
 武器:魔穿の剣を確認(この剣は呪いが掛かってます)

 30を超えるダンジョンで単身で乗り込んでボスを最速撃破して帰還する。

 撃破した場合は教会送りにせず、魔界ダンジョン協会へ連絡を。

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「……由々しき事態だわ」
「エルちゃんよ。聞いた話だと、これ本当にボスなのか?」
「多分、間違いないわ。あの剣持ってるの見た事あるし、纏ってる魔力波動オーラは間違いなくボスだったわ……」

『うーん』

「というかエルちゃん。この前、ボスに連絡取ったんじゃないのかよ」

 手を挙げて意見をしているのはスケサン(スケルトン族)だ。
 この間、スケサン(とスラミン)とエルはゴールドダンジョンへ赴き――そこで人間の姿をしたボスが、ゴーレムを倒すのを目撃しているのだ。

「取ろうとしたんだけど――奥さんに通信用の水晶取られているらしくって……奥さんに繋がっちゃって」
「それで?」
「ボス代理だって名乗ってるのに、なんか浮気相手じゃないかと疑われて――急いで切っちゃった」
「……」
「卵温め中のメスドラゴンって、情緒不安定で嫌よねぇ」
「……まぁそれは置いといて。つまりボスはこの状況を知らないんだよな」
「多分……」
「もしボスが他のダンジョンに討ち取られたらどうなるんだよ」
「ダンジョンボスが直々にダンジョン潰しをしているって知れたら――良くて営業停止。悪ければ、私達ごと魔界刑務所に収監されるでしょうね」

『うーん』

 ジリリリリィィ――!

 突如、エルの目の前に置いてある水晶から着信音が鳴り響く。
 水晶に映し出されたダンジョンの住所は――2丁目。

「はいこちらダンジョン3丁目です。どうしましたか?」
『こちら2丁目だ。頼む、救援を求む――例の指名手配冒険者だ! たのガガヴィガッ――プッ』

 救援通信は、突如途切れた。
 2丁目とはこのダンジョンから徒歩で数時間くらいの所にあるお隣さんだ。

「――とにかくボスを止めないと」
「そうね……じゃあスケサン。スラミン連れて来て。一緒に行くわよ」
「……え、俺も!?」
「一応救援って建前で行くんだから。あとスライム5匹と、ボルゾイさん達も来て頂戴」
「えぇ……まぁしょうがないか」

 こうしてお隣さんの救援に向かうべく、エルとスケサン、スラミン率いるスライム隊、ボルゾイ率いるゴブリン隊がダンジョン3丁目へと出発するのであった。

 
「これは、酷い……」
 
 一行が辿り着いた時には、既に2丁目はほぼ壊滅状態だった。
 あやゆる魔物の死骸がそこらに横たわり、作動済みのワナはどれも破壊されている。壁や天井の損傷から、どれだけ酷い戦闘だったか――想像に難くない。

「ス、スラミン先輩! ぼ、ぼくビビってませんからね!」
「スライムB! そ、そんなにフヨフヨしてく癖に、見栄張ってんじゃねー!」
「Cだって、足元がプヨプヨしてるじゃないか!」

 一行が奥へ進むと、ひと際立派な造りの部屋に辿り着いた。
 激戦だったのだろう。床には瓦礫が落ち、配下の魔物達の死骸――。
 1番奥には、頭の砕かれたであろう。鎧型の魔物が死んでいた。
 左腕はもがれ、斜めにバッサリと斬られた跡が見える。

「ここのボスか。エグい死に方だな……」
「おっ、君ら3丁目の魔物かい?」

 ひょいっと。

 死んでいたと思っていた鎧が立ち上がる。

「きゅあ!?」
「うひゃあ!?」

 思わず飛び跳ねるエルとスケサン。

「いやぁ。胴体斬られた時、痛すぎて意識飛んでましたよハッハッハッ」

 瓦礫の中から“頭”を取り出し、頭に取り付ける鎧の男。

「申し遅れました。ダンジョン2丁目のボス、デュラハンのディーンです」
「お、おぉ……俺はダンジョン3丁目の中ボス、スケサンだ。こっちはボス代理の……エルちゃん?」
「えぇ。ダンジョンエルフのエルと申します。低い位置から、申し訳ございません」

 キリッとした受け答えだが、本人は床にへたり込んだままである。

「エルちゃんどしたの?」

 スラミンが腰をつんつんする。

「こ、腰は抜けたの!」
「そ、それで――例の冒険者はもう居ないみたいですね」
「おっとそうだ。奴はここの宝である“煌めく宝珠”をゲットしたかと思うと、次は3丁目だと言って脱出したんです。だから、早く戻った方がいいですよ!」
「「えぇ!?」」

(どういうことだ。ボス普通に帰って来るってこと?)
(なんの連絡も貰ってないわよ!)

「どうしました?」
「「いいえ、なんでも!」」

 かくして、再び3丁目に出戻る事になった一行。

 3丁目に向かうボスの真意とはいかに――。

 続く。

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