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第6話 その鎧、砕けるとき――
15.新たな旅路
しおりを挟むカモメかウミネコか。
鳥が鳴いている穏やかな青い空の下、商船は順調に進んでいた。
「海は広いなぁ……」
「なに当たり前のこと言っているのじゃ」
なんでも最近、この航路では巨大なイカのような魔獣が暴れているらしいので、船賃をタダにして貰う代わりに乗せて貰っている。
甲板では船乗り達が忙しなく働いているが、俺とハナコはひとまず仕事が無いのでダラけている。
「……でも良かったのかよ。ジロウ達と一緒に居なくて」
「アタシは自由がいいのじゃ。もう団体行動とかコリゴリなのじゃ」
「ふーん」
「兄ちゃんこそ、良かったのじゃ?」
「いや王立ギルド追放されたらブラックリスト入りして、シンディア国の全部のギルド入れないって言うし……」
「そっちじゃなくて。検査とか受けなくて良かったのじゃ?」
自分の、鎧の身体を見る。
いつもと変わらない白い鋼の身体。もちろん中身も無いままだ。
あの戦いの後、気付けばギルドの医務室で寝ていたのだが――その時から既に鎧だった。
俺はてっきり、魔素とマナがいい感じに混ざって新たな肉体が出来た――となるものとばかり。
『解説します。貴方の魂は、魔素とマナにより確かに結合し、変異しました。しかし、肉体を得るには魔素もマナも大量に不足している為……ニーアデスの鎧が肉体の補完を行っている状態です』
(前は鎧に取り憑いていた状態だったけど、今は鎧の形の肉体になったってこと?)
『Exactly(その通りでございます)』
「難儀なことに……」
『その為、人間と同じようにダメージを受ければ痛覚があるので気を付けて下さい』
「不便過ぎる……でもまぁ、その方がいいか」
「なんの話なのじゃ?」
「よーし。クーロン王国行ったら、目指せ忍びの里だ!」
「行っても特に面白くないのじゃ」
かくして俺、響陽一は色々あったけど――しばらくは動く鎧として、もうちょっと頑張ってみることにした。
商船は、青空の大海原を――着実に前に、進んでいくのだった。
第1章、完!
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