91 / 93
第6話 その鎧、砕けるとき――
13.決着
しおりを挟む先に動いたのは輪廻無道――ジロウだった。
上段から不可避の絶対斬撃が、まさに天より高い一撃が落ちてくる。
『貰ったッ!』
『……ここだッ』
俺は白皇剣をその場に”落とし"、空いた両手でヨミノタチを待ち受ける。
『たぁッ!!』
俺の行動に、一瞬もブレることなく刀を振り下ろす。
『瞬手ッ』
ステラの祝福を手に使い、瞬時にヨミノタチを挟み込む。
いわゆる“白刃取り”だ。
『お、の、れぇ』
『お、おおおッ』
ああ言えば、ジロウの性格なら間違いなく上段斬りのまま正面から来る。そこを受け止める……という作戦はひとまず成功した。
しかし当然ながら輪廻無道の力は凄まじく、手の中でヨミノタチも暴れそうだ。
輪廻無道が押せば、俺が少し力を逃し、さらに引けば押す――せめぎ合いが続く。
『貴様、勝負を、ナメて、るのか!』
『最初に、私情は、挟まないとか、言ってなかったか!』
『俺様は、未熟だ! 故に、貴様を土産に、持っていき、認めて貰う!』
『そのせいで、ヤスオさん達が、お前の命を、人質に、やりたくもない事、やらされてるんだろうが!』
『――それもこれも、お前のせいだッ!』
『人の、せいに、するなッ!』
ふとこんな時に、考え事をする。
俺は異世界から魂だけこちらに飛ばされ、この鎧に入り込んだ。この場合は異世界転移なのか転生なのか。
かつて召喚されたっていう勇者ディアスや、忍びの里の始祖はどう思ったのかは知らない。使命感に燃えたりしたんだろうか。
それでも俺は、自分の事を勇者だとは思わないし、魔王なんて倒すどころか逃げちゃったし――魔力入れてくれる人や猫が居ないと動けなくなる、ただの鎧だ。
『いいえ。旧時代の神代の器……それがニーアデスの鎧です。ただの、とは心外です』
凄い新情報が来たけど……結局、俺は1人だと何も出来ないんだろう。
だから――。
『俺は、みんなの力を、借りて、みんなの力で、お前に、勝つッ』
俺はヨミノタチを掴み、そしてその切っ先を、俺の腹に向けさせ――力を緩めた。
『なにッ!?』
今度こそジロウは驚きの声を上げる。
それはそうだろう。わざわざ刺されたのだから……でも俺の狙いはここからだ。
再び動こうとするヨミノタチを抑えこむ。
『ルビィは全力でエレメントの維持、ハナコは魔力をもっとくれ! ステラは……後を頼む!』
俺は腹に刺さった刀に、意識を集中させる――俺の中に入ったモノは、俺を着た事にする!
『搭乗者を登録――失敗。再登録を行います――失敗。この手順を繰り返します』
禍々しい魔力と大量のエレメントの塊が渦巻く刀――このドス黒い感情の魔力。
魔素――これがジロウに取り憑き、ジロウの感情で成長していったのだろう。
侮辱、高慢、嫉妬、憤怒、後悔――自責の念が流れ込んでくる。
いずれ輪廻無道の鎧はこの魔素を糧に、ジロウを喰い殺す――。
『お前のバカみたいなプライド、全部俺が持って行ってやるよ……その代わり、ちゃんとヤスオさんらに、謝れよ!』
『な、何を言って……』
この魔素をどうにかしなければならないのなら、俺に移せばいい。
魔素は人間の魂と結合する――。
『搭乗者の登録――失敗』
星のマナは無いけど……代わりに3人分のマナがある。
『搭乗者の登録――失敗』
3人のマナをひとつに束ね、俺の”中"に入れる!
『搭乗者の登録――成功しました。ジロウ=ダイナンの登録、完了』
俺の意識は消失しなかった。
でも身体の自由は無くなってしまい――その隙に、ステラが白皇剣を拾い――輪廻無道のコアを穿いたのを、俺はどこか遠い世界のように見ていた。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~
岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。
順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。
そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。
仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。
その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。
勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。
ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。
魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。
そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。
事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。
その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。
追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。
これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる