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第6話 その鎧、砕けるとき――
8.絶体絶命
しおりを挟む『ダメージレベル甚大。魔力不足により、これ以上の復元は不可能です。搭乗者の安全を最優先とし、治療を続けます』
俺の身体は、胴体と辛うじて残った二の腕と太もも部分のみ――。
「……ッ」
痛みはない。こんなに身体が無くなっても、なんとも感じない――。
「クソッ」
俺は少しでも連中から離れようとするも身体が無くなり過ぎて、水の流れが増えたように感じるくらいには進めない。
「では鎧の確保をしましょうか。報告では多少の傷は復元できると聞いていますが――ここから復元できるのでしょうか」
「……」
「……」
ヤスオとヒナコは何も答えないし、守護者達も無言である。
「――まぁアリシアさんに解析を頼みますか」
「……頼む。コイツは、ハナコは逃がしてくれ」
もうどうする事も出来ないと悟った俺は、これくらいしか出来ない。
せめてハナコが逃したであろうミルメルモが、みんなに伝えてくれれば――。
(手紙、もうちょっと早めに出しとくんだった)
「まぁ、なんて慈愛なんでしょうか。美しいっ」
眼が閉じられたままのクロエは、それこそ慈愛に満ちた笑顔になった。
しかしそれもすぐに、冷徹な声へと変貌した。
「でも、あの方の邪魔をした子には罰を与えなければなりません」
「な、何を」
「――子ネズミに関してはアリシアさんの手前、見逃してあげることにしたんですけど……その子は魔王様の贄になって頂きます」
「だ、誰がそんなことを――」
悪あがきのように逃げようとする俺の胸元を脚で押さえつけ、中にいるハナコへと錫杖を向ける。
「また逃げられるといけないので、この子ごと串刺して持っていきます」
「止めろ!!」
その時――少しずつだが異変が起きていた。
水路の水は徐々に波が立ち、この水路の中を地鳴りのような物音が……。
「――なんですか、この音は」
クロエのその言葉と同時に、それはやってきた。
津波――水路のはずなのに、津波が奥からやってきたのだ。
それも水路のほとんどを埋めるかのような、大きな津波だ。
「な、波が!?」
「なんなんっす!?」
津波が、全てを飲み込む。
俺は上下左右の方向が分からず、無我夢中でもがくと、何かに掴まれた。
――その人達が掴んでくれた。
「ヨーイチ!」
「ヨーイチ君!」
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