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第6話 その鎧、砕けるとき――
5.百合トラップ
しおりを挟む一方その頃。
大聖堂より少し離れた所にある牢屋、そこにハナコとミルメルモは囚われていた。
「あーあ、オレも大聖堂に行きたかったよ」
「ボヤくな。これも立派な仕事だ」
牢屋は6帖ほどの広さで、後は窓も無くツボが1つだけ。
鉄格子と壁や天井には魔法封じの結界が張られている。魔法は使えるが、それらには一切通じないのだ。
通路奥で椅子に座っている2人の男神官達がいる。
「ねぇ、お兄さん達?」
「「ん?」」
「アタシと、いい事しなぁい?」
男神官達が牢屋の前まで来ると、そこには胸と太ももを露わにした美女が、クネクネとポーズを取っていた。
スカートをたくし上げ、今にも太ももの奥が見えそうだが――。
「しない」
「興味ない」
本当に興味無さそうに男神官達は 持ち場へと戻る。
「こらー! こんな美女が誘ってるのにどういうことだー!」
「ま、まぁ彼らはそれが仕事ですし……」
「まったく……」
変化のジツで25歳くらいの姿に化けていたハナコは15歳くらいの姿へと戻る。
「凄いね、ニンジツって。魔法でも姿形を変えているように見せるモノはあるけど、これ実体よね」
「そうなのじゃ。昔からニン者はそういう凄い術を継承して来たのじゃ」
「クーロン王国からこんな所まで来て……凄いよね。それなのに、私が巻き込んじゃって……」
「あぁ泣くのは辞めるのじゃ!」
「だって……」
「アタシが自分で関わることを決めたのじゃ。ミルちゃんは関係無いのじゃ」
「……ありがとう」
「ほら、涙を拭くのじゃ――ん?」
ハナコが視線を感じて振り向くが、男神官達は即持ち場へと戻った。
その様子に、ハナコはピンッと来た。
「なるほど――ちょっとミルちゃん耳を貸すのじゃ」
「え、なに?」
◇◆◇
「ミルちゃんのここが――」
「ダメだよ、ハナコちゃん。こんな所で――」
少女達の怪しげな声が通路へと漏れてくる。
「ほら。ここがええのか? それともここか?」
「あぁん……いや、声が出ちゃう」
男神官達が牢屋の前まで来た。
「この脇腹の辺りが弱いのじゃろう」
「やめ、そこは……」
ハナコがミルメルモの服の中へ手を入れ、弄っている。
その度にミルメルモの顔が紅潮し、声を漏らす。
少女らの行いを見ようと男達は鉄格子に顔を近付け――何かを踏んだ。
「ん?」
「なんだこれ」
踏まれたスライムは瞬時に身体を這い上がり、男達の顔を包み込んだ。
「「もがっ!?」」
取ろうとしてもスライムを引き剥がすことは出来ず――男達は昏倒してしまった。
「よしっ。アタシの作戦はバッチシじゃ」
「うぅ、替えの下着持って来れば良かった……」
ミルメルモはスライムを操作し、男神官の腰に付いている鍵を取り、牢屋の鍵を開けた。
「ひとまず脱出できる出入り口を探すかの」
「あっ、それなら……いつの間にかズボンの隙間に挟んであって」
広げると、それはここの内部地図だった。
出口は2つ。倉庫の奥にある搬入路と、ロビーの正面玄関。
玄関は当然見張りも多いだろうから、倉庫へ向かう事にした。
倉庫は牢屋の隣なので迷う事も無かった。
「――見張りは、1人か」
手鏡で見張りの存在を確認――一瞬で距離を詰め、首を締め昏倒させた。
「多分ここから地下水道に出られる――ミルちゃんは先に脱出するのじゃ」
「ハナコちゃんは?」
「アタシは兄ちゃん……ヨーイチを助けに行く。あの女神官共はウチの里の者じゃし、遅れを取ることはないから心配無いのじゃ」
「うん……分かった。このスライムも持って行って!」
「助かるのじゃ!」
ミルメルモが地下水道へ行ったのを見届け、ハナコは腰に手を当てる。
「さて、確か大聖堂じゃったな」
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