セカンド人生は動く鎧になって冒険者生活!?

ゆめのマタグラ

文字の大きさ
上 下
75 / 93
第5話 冒険者の日常

18.巨大スライム再び

しおりを挟む

「結局空振りかー」

 変化で俺の姿を魔法使いに変え、正面から堂々と建物の周りをチェックしたのだが――怪しい反応は無かった。
 となれば最後はこの街最大の魔道ギルドなんだが……こちらは街中には無く郊外に拠点がある為、非常に面倒だ。
 なんせ他に建物も通行人も居ないので、部外者が敷地や建物周りをウロウロなんてしようモノなら目立ってしょうがない。

「まぁハナコの変化あれば多分いけるだろうし……」
「――やぁヨーイチ。君は酒場でお早い夕食かな?」
「ヨーイチ君。ウチらに何か言うことあるんやないかな?」

 あっ忘れてた。

「や、やぁステラにルビィじゃないか。勝負と仕事はどうだったんだ?」
「勝負は現役冒険者の私が負けるはずもない……そのせいで張り切り過ぎて仕事も捗ったよ」
「ウチの方が綺麗に耕せてたけど、まぁ勝負は勝負やからな。負けは認めるよ――誰かさんが居らん分もいっぱい耕せれたからなぁ」
「――すいません」

 素直に謝り、夕食と酒代は全部俺持ちとなった。
 ……前金貰ってて助かった。

  ◇◆◇◆◇◆◇
 

 次の日。

 家出る時は天気も快晴で雲ひとつ無かったのに……何故かこの魔道ギルド【テイルズナイト】の周辺に来ると曇り空になる。
 予想通り広い敷地が少し丘のようになっていて古いお城みたいな建物が立っている。侵入は背後に森もあるし崖から登るしかないように思える。

「辞めといた方が身の為じゃ。あんなあからさまに登って下さいって言わんばかりの崖、監視が無い訳が無かろう」
『だよなぁ……』

 と、建物近場の木の陰で思案していると――。

「きゃああああ!?」

 魔道ギルドとは少し離れた森の中から悲鳴が聞こえた。

『ハナコ!』
「分かっておる」

 俺達が急行すると、三角帽子を被った魔女って感じの格好をした中学2年生くらいの女の子が、巨大スライムに追い掛け回されていた。

『もしかしてこの間の生き残りか!?』

 よくよく思い起こせば、ここは例の水場とはそれなりに近いのだ。

「この間は不意を突かれたが、今度はそうはいかんぞ」

 ハナコは俺の胸元を解放し、鍛冶屋通りで買った刀によく似た形状のショートソードを取り出す。

「ニンポウ、カマイタチのマイ」

 逆手に構えた刀に風のエレメントを纏わせ、斜めに斬る。
 すると不可視の刃が飛んで行き――スライムの背中を斬り裂く。
 もちろん肉体を少し削ったに過ぎないが、スライムは足?を止めてこちら側に振り向いたようだ。

「きゃああ――あれ?」

 もう追って来ないスライムに女の子が首を傾げている。

「お前! 危ないからさっさと逃げるのじゃ!」
「だ、誰なの!?」
『あ、変化使ってないや』

 スライムは身体からいくつもの触手をこちらに飛ばしてくる。

「面倒な攻撃を――白皇剣!」

 ハナコはゲートから俺の剣を取り出し、自分のショートソードは右手に、剣は左手に持つ。

『おお、二刀流!』
「――ニンポウ、カゲムシャのジツ!」

 そう唱えると、俺とそっくりな見た目の鎧が出現する。
 その偽俺も同じように二刀流だ。

「喰らうがいい。ニンポウ、カマイタチのマイ!」
 
 両者が両手で、交互に剣を振るい風の刃を飛ばす。
 先ほどのは違い、連続でいくつもの刃を飛ばす。

「――!?」

 触手はごとスライム本体の身体まで――斬る。斬る。斬りまくる。
 見る見る内にスライムの体積は減っていき、3つあるコアが露出した。

「今じゃ! 火よ爆ぜろ――カートン=バク!」

 武器を投げ捨て、即座に印を構え――スライムのコア部分へ爆発を起こす。
 コアは全て破壊され、スライムの身体も辺りに飛び散った。
 そりゃもう派手に飛び散った。

「ぶっ」
「きゃあ!?」

 俺達と女の子は、全身がスライムまみれになった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~

岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。 順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。 そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。 仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。 その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。 勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。 ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。 魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。 そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。 事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。 その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。 追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。 これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

抽選結果は大魔王だったので、剣と魔法と平和と欲に溢れた異世界で、のんびりとスローライフしたいと思います。

蒼樹 煉
ファンタジー
抽選で、大魔王として転生したので、取り敢えず、まったりと魔物生成しながら、一応、大魔王なので、広々とした領土で、スローライフっぽいものを目指していきたいと思います。 ※誹謗中傷による「感想」は、お断りです。見付け次第、削除します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 ※駄文+誤字脱字+その他諸々でグダグダですが、宜しくお願いします。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号
ファンタジー
 とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。  気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。  しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。  そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。  ※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...