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第5話 冒険者の日常
18.巨大スライム再び
しおりを挟む「結局空振りかー」
変化で俺の姿を魔法使いに変え、正面から堂々と建物の周りをチェックしたのだが――怪しい反応は無かった。
となれば最後はこの街最大の魔道ギルドなんだが……こちらは街中には無く郊外に拠点がある為、非常に面倒だ。
なんせ他に建物も通行人も居ないので、部外者が敷地や建物周りをウロウロなんてしようモノなら目立ってしょうがない。
「まぁハナコの変化あれば多分いけるだろうし……」
「――やぁヨーイチ。君は酒場でお早い夕食かな?」
「ヨーイチ君。ウチらに何か言うことあるんやないかな?」
あっ忘れてた。
「や、やぁステラにルビィじゃないか。勝負と仕事はどうだったんだ?」
「勝負は現役冒険者の私が負けるはずもない……そのせいで張り切り過ぎて仕事も捗ったよ」
「ウチの方が綺麗に耕せてたけど、まぁ勝負は勝負やからな。負けは認めるよ――誰かさんが居らん分もいっぱい耕せれたからなぁ」
「――すいません」
素直に謝り、夕食と酒代は全部俺持ちとなった。
……前金貰ってて助かった。
◇◆◇◆◇◆◇
次の日。
家出る時は天気も快晴で雲ひとつ無かったのに……何故かこの魔道ギルド【テイルズナイト】の周辺に来ると曇り空になる。
予想通り広い敷地が少し丘のようになっていて古いお城みたいな建物が立っている。侵入は背後に森もあるし崖から登るしかないように思える。
「辞めといた方が身の為じゃ。あんなあからさまに登って下さいって言わんばかりの崖、監視が無い訳が無かろう」
『だよなぁ……』
と、建物近場の木の陰で思案していると――。
「きゃああああ!?」
魔道ギルドとは少し離れた森の中から悲鳴が聞こえた。
『ハナコ!』
「分かっておる」
俺達が急行すると、三角帽子を被った魔女って感じの格好をした中学2年生くらいの女の子が、巨大スライムに追い掛け回されていた。
『もしかしてこの間の生き残りか!?』
よくよく思い起こせば、ここは例の水場とはそれなりに近いのだ。
「この間は不意を突かれたが、今度はそうはいかんぞ」
ハナコは俺の胸元を解放し、鍛冶屋通りで買った刀によく似た形状のショートソードを取り出す。
「ニンポウ、カマイタチのマイ」
逆手に構えた刀に風のエレメントを纏わせ、斜めに斬る。
すると不可視の刃が飛んで行き――スライムの背中を斬り裂く。
もちろん肉体を少し削ったに過ぎないが、スライムは足?を止めてこちら側に振り向いたようだ。
「きゃああ――あれ?」
もう追って来ないスライムに女の子が首を傾げている。
「お前! 危ないからさっさと逃げるのじゃ!」
「だ、誰なの!?」
『あ、変化使ってないや』
スライムは身体からいくつもの触手をこちらに飛ばしてくる。
「面倒な攻撃を――白皇剣!」
ハナコはゲートから俺の剣を取り出し、自分のショートソードは右手に、剣は左手に持つ。
『おお、二刀流!』
「――ニンポウ、カゲムシャのジツ!」
そう唱えると、俺とそっくりな見た目の鎧が出現する。
その偽俺も同じように二刀流だ。
「喰らうがいい。ニンポウ、カマイタチのマイ!」
両者が両手で、交互に剣を振るい風の刃を飛ばす。
先ほどのは違い、連続でいくつもの刃を飛ばす。
「――!?」
触手はごとスライム本体の身体まで――斬る。斬る。斬りまくる。
見る見る内にスライムの体積は減っていき、3つあるコアが露出した。
「今じゃ! 火よ爆ぜろ――カートン=バク!」
武器を投げ捨て、即座に印を構え――スライムのコア部分へ爆発を起こす。
コアは全て破壊され、スライムの身体も辺りに飛び散った。
そりゃもう派手に飛び散った。
「ぶっ」
「きゃあ!?」
俺達と女の子は、全身がスライムまみれになった。
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