セカンド人生は動く鎧になって冒険者生活!?

ゆめのマタグラ

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第5話 冒険者の日常

15.3人とクエスト

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 午前中、ギルドの酒場にて。
 ラーナは少し困ったようにステラに話し掛けていた。

「ステラさんすいません……先週の研究所へと発送の件なのですが……」
「なに? 王都への道が全面封鎖?」
「はい……途中のケンザン大橋が老朽化の為、補修工事に入っちゃってて。2ヶ月以上は掛かるみたいです。臨時で渡し船が運行されるんですが、それも色々時間が掛かっているらしくって……」
「そうか……」
「お急ぎなら飛竜便があるって言いたいんですが、こちらは予約が満杯で……」
「いやそこまで急ぎじゃないから気にしなくていい」
「町の魔道ギルドでも鑑定依頼はできると思いますが……」
「ふむ……」

 そんな会話を俺は掲示板を眺めながら聞いていた。
 工事で流通が滞る影響なのか、町はいつものより多少賑わっていた気がする。
 さすがに危険な山や、遠くの橋まで迂回するよりは待った方が安全――そう考えた商人や冒険者が多いのだろう。
 あとギルドに貼ってあった飛竜便の値段見たら、目が飛び出すほど高かった(目はないけど)

「うーん迷うな」
「お、これなんかいいとちゃうん? 【鍛治職人のルビィお姉さんと行く、魔物ハントの旅】とか」
「……おわっ、ルビィか!」

 俺の右隣にはいつの間にかルビィがいた。
 
「おはよーさん! いやーこの間は大盛り上がりやったな! また是非やってくれって要望が出るくらいやったわ」
「そりゃ良かった」
「で、ちょっと遊びに来たんやけど……依頼の量、少なくないとちゃうん?」

 そう。多くの冒険者が街に滞在し、路銀を稼ぐ為にギルドメンバーとパーティを組んだり、フリー枠を取り合ったりで掲示されている依頼がめっきり減ってしまった。
 あまり人気の無い――例えば地下水道のスライムカウントなんかはまだ残ってる。
 そして、このギルドの酒場も昼から大盛り上がりである。

「だから残った依頼受けるかなーって迷ってる」

 ルビィが上の依頼書を指差しながら、
 
「これがえぇんちゃうん。【東の森の中でキラーボアとサイミンシビレオオダケが縄張り争い中なので全部退治して下さい】だってさ……次はイノシシとキノコ焼きもええかな」
「ふむふむ……この【漁港でカツヲン大量発生の兆しあり。漁を手伝ってください。報酬はカツヲンたくさん】がいいのじゃ!」
 
 俺の身体によじ登り、右の依頼を指差すハナコ。

「……では【西の遺跡、探検冒険者募集中。防衛ゴーレムはかなり手強いので、強い冒険者に限る】に一緒に行くのはどうだろうか。手強いだけでなく、とんでもなく硬いらしいぞ」

 左隣にステラも来た。
 左の依頼書を見ているようだ。
 そして3人は互いに顔を見合わせた後、口々に言った。

「イノシシとキノコ狩り!」
「魚じゃ!」
「ゴーレム倒しに行こう」

 ふっ、モテる男は辛いな――などと冗談を言ってる場合じゃない。
 さすがに3人とも取っ組み合いの喧嘩なんかはしないだろうが、微妙な空気だ……。

「よし、ここは公平に……真ん中の、これだ!」

  ◇◆◇◆◇◆◇


「いやなんで畑仕事やねん」
「こういうのは初めてだが、なるほど――いい訓練になりそうだ」
「子供の頃、里で修行だってやらされたな……絶対アレ、なんの関係もないのじゃ……」

 俺達は郊外の荒れ地エリアに来ている。
 ここは将来、農場になるということで大岩や枯れた木などを撤去する人や、草刈りや畑を耕している人もいる。
 少し遠くに見えるのがこの街を囲う壁で、魔物や獣が入って来れないようにしてある。

「よーし、やるか!」

 ちなみに今日の俺は畑を耕す係だ
 みんなにもクワを渡してある。

「いやなんでウチもやる流れになってんねん」

 ルビィは冒険者では無いので、確かに一緒に作業する必要はない。報酬も俺らの分しか出ないし。

「たまにはこうやって身体を動かすのも良いぞ。まぁ、屋台の料理ばかり食べて少したるんでいるお前には厳しいかもしれんが」

 フッと挑発的な笑みを浮かべるステラ。
 いつもの冒険者の恰好ではなく、簡易な麻の服と作業用のズボンを履いているが、やはり美人は何を着ても美人である。

「ほぉ――ウチにケンカ売るんやな」

 その挑発に乗るように笑うルビィ。
 こちらはいつものオーバーオールだが、クワを担ぐ姿はとてもよく似合う。

「別に売ったつもりは無いが……それなら、昼の鐘が鳴るまでどっちが多く耕せるか勝負しよう」
「ええやろ。勝ったら昼のランチ、奢ってもらうで」
「あぁ。では――始め!」

 ザクザクザクザクザクザクザク――。
 ザクザクザクザクザクザクザク――。

 2人とも全力で耕し始める。
 その姿を眺めながら、ハナコは遠い目をしている。

「仲良いのぉ……イテッ」
「こら、お前も耕すんだ。っていうか、こういうの乗りそうなのに」
「畑仕事は面倒臭いから嫌なのじゃ……という訳で兄ちゃん。アタシはちょっとそこまで散歩してくるのじゃ」
「あ、コラッ!」

 クワだけ残して一瞬でどこかへ行ってしまうハナコ。

「はぁ……まぁハナコの分はあの2人が耕してくれるか」

 もうかなり先まで耕している――一何も直線で耕さなくてもいいのに。

「もし……少しよろしいですか」
「うわっびっくりした」

 俺も常時感知センサーを見ている訳じゃないしが、それでも背後から声を掛けられるまで気が付かなかった経験はあまり無い気がする。
 敵意や殺気などが無ければ、ニーアもオートでは知らせてくれない。
 
「あら、すいません。驚かせてしまったようで」
「いえいえ――あれ、貴女は確か、この間の」
「えぇ王都で会いましたよね。私の名前はディアト教の神官クロエ=オータム……貴方にお願いがあって来ました」
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