セカンド人生は動く鎧になって冒険者生活!?

ゆめのマタグラ

文字の大きさ
上 下
70 / 93
第5話 冒険者の日常

13.ハナコを追い掛けて・前

しおりを挟む
 シンディア大陸から海を挟んで西にある、クーロン王国にあるエルフの里(現在はテーマパーク化)出身の忍者、ハナコ。

 歳は110歳。しかし肉体年齢はどう見ても10歳くらいで、黒髪の頭に生えている猫耳が特徴。

 子供過ぎる見た目なので、普段は変化の術で15歳くらいの姿である。猫耳も隠してある。

 服装は黒い民族衣装。肩や背中、太ももが露わになっているデザインだが本人は全く気にしていない。いつも魔法使いのような三角帽子を被っている。

 これは伝統的なエルフ忍者の服装らしいのだが、どこでそんな情報が伝わったのか少し気になる。

 本人も言動が子供っぽいが、その実力は本物である。
 特に忍術は、本来詠唱や魔法陣など必要な一般魔法を、印と呼ばれる手の構えと詠唱を組み合わせて短縮してあるのだ。だから速攻性があり、タイマンの戦闘で術を使う忍者に勝つのは困難だろう。

「兄ちゃん。アタシちょっと出かけくるのじゃ」

 この俺とハナコは、地元が同じ幼馴染的な兄妹という事になっていて、一緒に住んでいる。

 もちろんハナコの故郷の事は伏せているので、ギルドで部屋を借りた時の設定だ。
 
 ちなみにステラとルビィにこの事がバレたのだが――。

「まぁ猫みたいなもんだし大丈夫か」

 話し合いの末、そういう結論になった。
 ステラの私生活的に同居は難しいし、ルビィの家も余っている部屋は無いという消去法的な結論だが。

 さて。
 俺はゲートから取り出した黒いマントを羽織り、薄茶色のテンガロンハットのような帽子を被ると――ハナコの後を追った。

  ◇◆◇◆◇◆◇


 ここ数日だが、ハナコの帰りが妙に遅いのだ。
 依頼を受けている様子もなく、誰かと一緒に冒険へ出ている訳もなく。
 互いのプライベートにはノータッチが基本だが――うん。まぁ俺も暇なんだ。

「なんか詐欺とかそういうのに捕まってたら大変だしな」

『ハナコの魔力を感知。ここから12時の方向です』

 ここは街の大通りから入ったいくつもある路地の1つ。
 人通りは全く無く、遮蔽物も多いので何か密会するには丁度良さそうな場所だ。
 
「居た……」

 ハナコは座り込んで、誰かを待っているようだった。
 やはり何か犯罪に巻き込まれているのだろうか。
 
「やっと来たか」

 ハナコが待ち合わせていた相手が来たようだ。
 俺はこっそりと、積みあがった木箱の隙間から覗き込んだ。
 お相手は――、

「にゃー」
「にゃん。にゃーにゃー」

 茶色の斑模様の猫だった。
 塀の上からハナコを見下ろすように座り込み、何か会話しているようだ。

「にゃん?」
「にゃーん。にゃにゃん」

(くっ。何話しているのか分かんねぇ)

「にゃんにゃ」
「にゃーん」

 どうやら会話は終わったようだ。
 猫は屋根伝いにどこかへ行ってしまい、ハナコも同じように屋根に登り、どこかへ行ってしまった。

  ◇◆◇◆◇◆◇


 どうやらハナコは鍛冶屋通りの方向へ行ったようだ。
 ここ鍛冶屋通りは祭りの開催が無い日も、一部の店では一般客向けの土産物屋が開かれていたり、夜しかやっていない酒場は昼間はカフェをやってみたりと、いろんな試行錯誤が見て取れる。

「で、ヨーイチ君は何やっとんや」

 俺のよく知るエセ関西弁で話しかけてきたのはルビィだ。

 テッカンさんというドワーフの鍛冶師の娘で、彼女自身も鍛冶師である。
 彼女はハーフドワーフで32歳。背丈は10歳のハナコとそう変わらない。テッカンさんは150歳くらいらしいので、ドワーフ的に言えば30歳ちょっとはまだまだ若いのだろう。

 茶色のおかっぱのような髪型で、服装は大体いつもの麻のシャツにオーバーオールだ。

 大きな丸い眼鏡を掛けて、その赤み掛かった瞳でこちらをジトっとした目で見ている。
 
「ふふふっ。ルビィ、よく俺の変装を見破ったな」
「そんなキテレツな恰好した奴、他におらんわ」

 葉を隠すには森の中。
 いつもの恰好に帽子&気配遮断のマントでは目立ち過ぎるので、カモフラージュとしてさっき路地で拾った酒の木箱を2段重ねで、中身をブチ抜いて装着している。
 鍛冶屋通りなら酒の木箱くらい転がってそうだし、変装は完璧だったはずだ。

「完璧ちゃうわ。怪しさ爆発し過ぎや」
「ママー。あのお兄ちゃん、なんであんな恰好なの?」
「しっ。見ちゃいけません」
 
 ……とにかく追跡を続ける。
 どうやらハナコは鍛冶屋通りに関しては素通りしたようだ。俺も後を追う事にする。

「じゃあルビィ。まだギルドで酒飲もうな」
「……その恰好で行くのは辞めとき」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。 そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~

岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。 順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。 そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。 仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。 その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。 勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。 ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。 魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。 そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。 事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。 その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。 追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。 これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...