セカンド人生は動く鎧になって冒険者生活!?

ゆめのマタグラ

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第5話 冒険者の日常

13.ハナコを追い掛けて・前

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 シンディア大陸から海を挟んで西にある、クーロン王国にあるエルフの里(現在はテーマパーク化)出身の忍者、ハナコ。

 歳は110歳。しかし肉体年齢はどう見ても10歳くらいで、黒髪の頭に生えている猫耳が特徴。

 子供過ぎる見た目なので、普段は変化の術で15歳くらいの姿である。猫耳も隠してある。

 服装は黒い民族衣装。肩や背中、太ももが露わになっているデザインだが本人は全く気にしていない。いつも魔法使いのような三角帽子を被っている。

 これは伝統的なエルフ忍者の服装らしいのだが、どこでそんな情報が伝わったのか少し気になる。

 本人も言動が子供っぽいが、その実力は本物である。
 特に忍術は、本来詠唱や魔法陣など必要な一般魔法を、印と呼ばれる手の構えと詠唱を組み合わせて短縮してあるのだ。だから速攻性があり、タイマンの戦闘で術を使う忍者に勝つのは困難だろう。

「兄ちゃん。アタシちょっと出かけくるのじゃ」

 この俺とハナコは、地元が同じ幼馴染的な兄妹という事になっていて、一緒に住んでいる。

 もちろんハナコの故郷の事は伏せているので、ギルドで部屋を借りた時の設定だ。
 
 ちなみにステラとルビィにこの事がバレたのだが――。

「まぁ猫みたいなもんだし大丈夫か」

 話し合いの末、そういう結論になった。
 ステラの私生活的に同居は難しいし、ルビィの家も余っている部屋は無いという消去法的な結論だが。

 さて。
 俺はゲートから取り出した黒いマントを羽織り、薄茶色のテンガロンハットのような帽子を被ると――ハナコの後を追った。

  ◇◆◇◆◇◆◇


 ここ数日だが、ハナコの帰りが妙に遅いのだ。
 依頼を受けている様子もなく、誰かと一緒に冒険へ出ている訳もなく。
 互いのプライベートにはノータッチが基本だが――うん。まぁ俺も暇なんだ。

「なんか詐欺とかそういうのに捕まってたら大変だしな」

『ハナコの魔力を感知。ここから12時の方向です』

 ここは街の大通りから入ったいくつもある路地の1つ。
 人通りは全く無く、遮蔽物も多いので何か密会するには丁度良さそうな場所だ。
 
「居た……」

 ハナコは座り込んで、誰かを待っているようだった。
 やはり何か犯罪に巻き込まれているのだろうか。
 
「やっと来たか」

 ハナコが待ち合わせていた相手が来たようだ。
 俺はこっそりと、積みあがった木箱の隙間から覗き込んだ。
 お相手は――、

「にゃー」
「にゃん。にゃーにゃー」

 茶色の斑模様の猫だった。
 塀の上からハナコを見下ろすように座り込み、何か会話しているようだ。

「にゃん?」
「にゃーん。にゃにゃん」

(くっ。何話しているのか分かんねぇ)

「にゃんにゃ」
「にゃーん」

 どうやら会話は終わったようだ。
 猫は屋根伝いにどこかへ行ってしまい、ハナコも同じように屋根に登り、どこかへ行ってしまった。

  ◇◆◇◆◇◆◇


 どうやらハナコは鍛冶屋通りの方向へ行ったようだ。
 ここ鍛冶屋通りは祭りの開催が無い日も、一部の店では一般客向けの土産物屋が開かれていたり、夜しかやっていない酒場は昼間はカフェをやってみたりと、いろんな試行錯誤が見て取れる。

「で、ヨーイチ君は何やっとんや」

 俺のよく知るエセ関西弁で話しかけてきたのはルビィだ。

 テッカンさんというドワーフの鍛冶師の娘で、彼女自身も鍛冶師である。
 彼女はハーフドワーフで32歳。背丈は10歳のハナコとそう変わらない。テッカンさんは150歳くらいらしいので、ドワーフ的に言えば30歳ちょっとはまだまだ若いのだろう。

 茶色のおかっぱのような髪型で、服装は大体いつもの麻のシャツにオーバーオールだ。

 大きな丸い眼鏡を掛けて、その赤み掛かった瞳でこちらをジトっとした目で見ている。
 
「ふふふっ。ルビィ、よく俺の変装を見破ったな」
「そんなキテレツな恰好した奴、他におらんわ」

 葉を隠すには森の中。
 いつもの恰好に帽子&気配遮断のマントでは目立ち過ぎるので、カモフラージュとしてさっき路地で拾った酒の木箱を2段重ねで、中身をブチ抜いて装着している。
 鍛冶屋通りなら酒の木箱くらい転がってそうだし、変装は完璧だったはずだ。

「完璧ちゃうわ。怪しさ爆発し過ぎや」
「ママー。あのお兄ちゃん、なんであんな恰好なの?」
「しっ。見ちゃいけません」
 
 ……とにかく追跡を続ける。
 どうやらハナコは鍛冶屋通りに関しては素通りしたようだ。俺も後を追う事にする。

「じゃあルビィ。まだギルドで酒飲もうな」
「……その恰好で行くのは辞めとき」

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