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第5話 冒険者の日常
7.鍛冶屋通りの危機
しおりを挟む「兄ちゃん兄ちゃん、ちょっと武器が欲しいのじゃ!」
という訳で、俺達は鍛冶屋通りに来ていた。
テッカンさんが武器コンテストで優勝して宮廷鍛冶師になったし王都住まいに戻った……かと思えば、工房は同じ鍛冶師の息子に譲ってこちらに住んでいる。
王から直接依頼を受けて剣を打っているらしいが、昔からの工房の方が使い勝手が良いと特別に許可を貰ったらしい。
あの伝説の鍛冶師がいるという宣伝も相まり、鍛冶屋通りは昔のような賑わいを見せている――はずなのだが。
◇◆◇◆◇◆◇
「これは由々しき問題や!」
ここは鍛冶屋通りの対策会議室(酒場)だ。
みんなテーブルにツマミと酒を用意しているが、さすがにドワーフ以外は手を付けず、腕組みして俯いている。
「父ちゃんがコンテストで優勝してくれたのに、なんでお客さんが少ないのか!」
俺の右隣で叫んでいるのはハーフドワーフのルビィ。
白皇剣を打ってくれた鍛冶師テッカンさんの娘で、彼女自身も鍛冶師である。
おかっぱみたいな髪形に、丸いメガネ。ドワーフの血のせいか身長は低い。オーバーオールを着ているのでより幼く見えるが、こう見えて年齢は俺(31歳)より年上(32歳)である。
ちなみに左隣ではハナコが当たり前のように飯を食っているが、ルビィからのツッコミは特に無かった。
それくらい会議に白熱してるのだろう。
「まぁ昔からの店も閉めている所、多いから……」
「ドワーフならいいけど、武器防具屋以外だと酒屋と酒場しか無いしなぁ」
「ここはお客さんが来やすい雰囲気作りが必要ッ!」
「オートロ兄さんの言う通り! これでは折角のマイン素材も泣いているッ!」
筋肉兄弟が暑苦しいポーズを取っているが、それはその通り。
いくら良い素材があって職人が居ても、コンテストで優勝している事をもっと周知しなくては――。
「それはもちろんやっとるんやけど、やっぱこの通りの雰囲気がなー……ちょっと寂れてんねん」
中央広場まで真っ直ぐの通りで見通しも良いせいで、尚更寂れている感が強調されてしまっている。
折角参加しているのだし、俺は元居た日本の事を思い出しつつ、案を出してみる。
「……だったら、何か屋台的なのが欲しいな。みんな店に篭ってるから、もっと視覚的に賑わってる感出したいし」
俺がそう提案すると、早速ルビィが乗って来た。
「屋台って、市場通りにあるやつ?」
「そうそう。でも売るのは武器とかじゃなくて――とかどうだろ」
「ほぉ……なるほど」
「さらに――とかやってさ」
「むむっ。ヨーイチ殿、それは良いアイディアですな!」
「ジュートロよ。これはやるしかないであるなッ」
「俺を挟んでポーズ取るなよ!」
暑苦しい兄弟はさておき、それらの案をひとまず羊皮紙に書いていく。
「定着するまで毎日は厳しいだろうし、週末限定でやってみるとか」
「……よし、鉄は熱い内に打てや! みんな聞いとったな!」
「「「おお!」」」
「この酒飲んだら、行動開始や!」
「「「おおー!」」」
「あとヨーイチ君!」
「ん?」
「ちょっと裏でこの子のこと、聞いても構わへんかな?」
ハナコの事を指差す、ルビィの笑顔が怖かった。
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