セカンド人生は動く鎧になって冒険者生活!?

ゆめのマタグラ

文字の大きさ
上 下
62 / 93
第5話 冒険者の日常

7.鍛冶屋通りの危機

しおりを挟む

「兄ちゃん兄ちゃん、ちょっと武器が欲しいのじゃ!」

 という訳で、俺達は鍛冶屋通りに来ていた。
 テッカンさんが武器コンテストで優勝して宮廷鍛冶師になったし王都住まいに戻った……かと思えば、工房は同じ鍛冶師の息子に譲ってこちらに住んでいる。
 王から直接依頼を受けて剣を打っているらしいが、昔からの工房の方が使い勝手が良いと特別に許可を貰ったらしい。
 あの伝説の鍛冶師がいるという宣伝も相まり、鍛冶屋通りは昔のような賑わいを見せている――はずなのだが。

  ◇◆◇◆◇◆◇


「これは由々しき問題や!」

 ここは鍛冶屋通りの対策会議室(酒場)だ。
 みんなテーブルにツマミと酒を用意しているが、さすがにドワーフ以外は手を付けず、腕組みして俯いている。

「父ちゃんがコンテストで優勝してくれたのに、なんでお客さんが少ないのか!」

 俺の右隣で叫んでいるのはハーフドワーフのルビィ。
 白皇剣を打ってくれた鍛冶師テッカンさんの娘で、彼女自身も鍛冶師である。
 おかっぱみたいな髪形に、丸いメガネ。ドワーフの血のせいか身長は低い。オーバーオールを着ているのでより幼く見えるが、こう見えて年齢は俺(31歳)より年上(32歳)である。
 ちなみに左隣ではハナコが当たり前のように飯を食っているが、ルビィからのツッコミは特に無かった。
 それくらい会議に白熱してるのだろう。

「まぁ昔からの店も閉めている所、多いから……」
「ドワーフならいいけど、武器防具屋以外だと酒屋と酒場しか無いしなぁ」
「ここはお客さんが来やすい雰囲気作りが必要ッ!」
「オートロ兄さんの言う通り! これでは折角のマイン素材も泣いているッ!」

 筋肉兄弟が暑苦しいポーズを取っているが、それはその通り。
 いくら良い素材があって職人が居ても、コンテストで優勝している事をもっと周知しなくては――。

「それはもちろんやっとるんやけど、やっぱこの通りの雰囲気がなー……ちょっと寂れてんねん」

 中央広場まで真っ直ぐの通りで見通しも良いせいで、尚更寂れている感が強調されてしまっている。
 折角参加しているのだし、俺は元居た日本の事を思い出しつつ、案を出してみる。

「……だったら、何か屋台的なのが欲しいな。みんな店に篭ってるから、もっと視覚的に賑わってる感出したいし」

 俺がそう提案すると、早速ルビィが乗って来た。

「屋台って、市場通りにあるやつ?」
「そうそう。でも売るのは武器とかじゃなくて――とかどうだろ」
「ほぉ……なるほど」
「さらに――とかやってさ」
「むむっ。ヨーイチ殿、それは良いアイディアですな!」
「ジュートロよ。これはやるしかないであるなッ」
「俺を挟んでポーズ取るなよ!」

 暑苦しい兄弟はさておき、それらの案をひとまず羊皮紙に書いていく。

「定着するまで毎日は厳しいだろうし、週末限定でやってみるとか」
「……よし、鉄は熱い内に打てや! みんな聞いとったな!」

「「「おお!」」」

「この酒飲んだら、行動開始や!」

「「「おおー!」」」

「あとヨーイチ君!」
「ん?」
「ちょっと裏でこの子のこと、聞いても構わへんかな?」

 ハナコの事を指差す、ルビィの笑顔が怖かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~

岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。 順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。 そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。 仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。 その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。 勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。 ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。 魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。 そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。 事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。 その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。 追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。 これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

闇属性転移者の冒険録

三日月新
ファンタジー
 異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。ところが、闇属性だからと草原へ強制転移されてしまう。  頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険がスタートした。  強力な魔物や敵国と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指していく。 ※週に三話ほど投稿していきます。 (再確認や編集作業で一旦投稿を中断することもあります) ※一話3,000字〜4,000字となっています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...