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第5話 冒険者の日常
5.VSジャゴス<魔族>
しおりを挟むジャゴスの全身から黒いオーラを噴出され、強烈な圧を感じる。
魔族は皆、その身体が魔素というマイナス魔力で出来ている。
これは人の悪感情の集合体のようなモノで、それ故に相対した精神の弱い者は発狂してしまうこともある。
さらに魔族は誰もが強力な魔法を操るという――以上、図書館調べ。
「……はいはーい質問」
「なんだ赤毛の人間!」
「なんでジャゴス様は、そこの本に封印されてたんだ?」
ジェイドがハナコの持つ本を指差す。
それを見たジャゴスが高らかに嗤う。
「ぎゃーはっはっはっ。そんなこと、これからオレ様に、食い殺される貴様らに教えてやる義理は無い!」
「……本に封印されるくらいだから弱いんじゃないか?」
「うーんこの本、書いてある内容的にそう高度なモノでは無さそうじゃ。こんなのに入ってたくらいじゃ、大した実力は無さそうじゃ」
「そもそも本当に強いなら時間掛けてでも内部から封印を解くらいは出来そうだしな……」
ジェイド、ハナコ、ステラはジャゴスの方を向き、ため息をつく。
「「「なんだ弱いのか……」」」
「き、き、貴様らー!! このジャゴス様を見てガッカリするんじゃねー!!」
『魔素濃度の解析が終わりました。対象ジャゴスの魔力濃度はBクラス。魔族のランクとしては課長クラスです』
(課長か……魔族ってどうやって倒すの?)
『その身体の殆どをマイナス魔力素粒子で構成されている彼らは実体がありません。対処法は大量の魔力で攻撃するか、相手に大量の魔力を消費させることで弱体化させることが出来ます』
(なるほど)
『さらに人の悪感情を吸収して強力になるため、まずは敵に対してポジティブな感情で挑むことが大事になります』
「もう怒ったぞ人間共め……貴様ら――楽に死ねると思うなよォッ!!」
「白皇ビィィィィムッ!!」
「ぎゃぁぁぁぁあああああ!?」
説明しよう。
白皇ビームとは、白皇剣に魔力を溜め、一気に剣先からビームのように撃ち出す、俺の中距離攻撃技だ。
ビームがいきり立ったジャゴスの背中に命中すると、案外痛かったのか凄い悲鳴を上げた。
「い、痛いじゃねーかそこの鎧のおま――」
「地に咲け、そして凍てつく楔となれ――スイトン=コオリゴケ!」
ハナコが印と呪文を唱え、地面に両手を付く。
そうすると地面に霜のようなモノが生え、ジャゴスに向かって高速で進んでいき――足に触れた瞬間。ジャゴスの半身が氷に覆われたのだ。
「ぎゃっ!?」
「紅炎、飛一閃!」
剣先から弧を描くように炎の斬撃が、ジャゴスの首を切断する。
「ぐぇッ――なんだぁ、テメェら!?」
飛ばした首は霧散し、すぐに元に顔が復元される。
さらに凍った身体を瞬時に溶かし、後方に跳んで俺達から距離を取る。
「――ここの施設の古さから見て、お前は百年以上前に封印されたのだろう」
「だ、だったらなんなんだよ!」
「人間と魔族の戦いの歴史は、旧時代まで遡ると言われる――お前が封印されていた間にも、私達は進歩を続けていたんだ」
「な、何百年経とうが、人間が魔族に追い付ける訳、ねーだろう。が!」
ジャゴスは口から黒いガスのようなものを吐き出し、俺らの視界を奪う。
「ステラ! 奴は逃げる気だ!」
「ぎゃっはっはっはー! 一旦退却して、力を蓄えたらまた殺しにプギャッ!?」
ドンッ――と何かにぶつかった音が聞こえた。
煙幕が晴れると、ジャゴスは透明なすりガラスのようなモノに阻まれていたのだ。
ガラスには複数の円形の魔法陣が描かれており、それが魔族を遮る効果を発揮しているようだ。
「にゃ、にゃんだこりゃあ!?」
「ここは恐らく魔族の研究をしていたんじゃろ。お前は哀れにも人間に捕らえられ、そこの槽に封印され、一矢報いようと脱出するも、封印の本に閉じ込められてしまった……そんな所じゃろ」
ハナコが封印の本を片手に、いくもの魔法陣を起動している。
「お、お前……この部屋に結界を張りやがったな!」
「ステラが言っておったじゃろ。昔ならいざ知らず……現代じゃ低級魔族殺しに結界は必須じゃ」
「お、おおオレが低級だとぉぉぉおお!?」
ジャゴスが怒りに肩を震わせ、こちらに振り向いた瞬間――ステラが一気に距離を詰め、剣を振りかぶっている最中だった。
「散れ」
ステラによる一撃により――ジャゴスは真っ二つになった。
そして悲鳴もなく――この世から消滅したのだった。
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