セカンド人生は動く鎧になって冒険者生活!?

ゆめのマタグラ

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第5話 冒険者の日常

3.謎のダンジョンへ

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「どうも初めまして。坑道調査員のマンドルと申します」

 チョロっとした30代の青年だ。
 メガネと登山用の服装に、腰には新品のショートソードをぶら下げている。

「金1級のステラだ。こちらは私の仲間のジェイド、ヨーイチ、ハナコだ」
「あ、どうもどうも……ではこちらへどうぞ」

 ここはコーディアから西にある鉱山地帯の端の方。
 この前の俺達が行った封鎖鉱山地帯とは違い、今も採掘が行われている坑道が多い。
 長きに渡る採掘作業の結果、鉱山の中に鉱夫達の町が出来ているらしい。
 マンドルは国からの依頼で、定期的に坑道のマッピングと確認作業をしているのだが……今回はその1つがダンジョンへと繋がっていたという。

鉱山喰いマインイーターが通った穴を見つけた時はキモを冷やしましたよ。でも調査の結果、通った形跡だけで、ここにはもう居ないみたいです……良かった」

 マンドルの後に着いて坑道へと入っていく俺達。
 今回は町を経由しないルートを通るらしい……ちょっと残念だ。
 そして大きな鉄扉の所までやってきた。
 鍵を受け取ったステラが扉を開けると――暗い通路と、奥にぼんやりとした明かりが見える。

「この道の最奥がダンジョンと繋がっています……その先も少し確認して……見たかったんですが、何分わたしは冒険者ではなく……」

 既にマンドルは俺達から若干離れた岩陰から喋っている。
 青ざめて汗まで出ている……魔物が怖いのだろう。
 武器も1度も使ったことのない新品同然だった。そんなので調査員が務まるのだろうか。

「いえ、ここまでで結構です。ダンジョンから魔物が出る可能性もあるので、この扉は閉めておいて下さい」
「わ、分かりました……」

 全員が入った後に鉄扉は閉じられ、ほぼ真っ暗闇になる。
 
「……光源魔法ライティング

 ステラが呪文を唱えランタンに明かりを灯す。

「さて、ここからが本場という訳だな」
「お宝とかあるかなー楽しみだなー」

 ウキウキしているステラとハナコ。

「はぁ……気が重い」
「……元気出して行こう」

 ちなみに俺が収納魔法が使えると説明したので、重い荷物は全部ゲートに入れてある――実際はニーアの機能だが、面倒なので説明は省略した。

「ふむ……魔素溜まりは無さそうだな」

 通路の奥の地面に穴が開いてあり、その下には石造りの通路が見える。

「よし私が先に降りる。ロープを出してくれ」

 ステラが降り、安全を確かめてから俺達も降りた。

「おぉ……いかにもそれっぽい」

 そこは大きな部屋のようだ。
 扉が1つだけで他に目ぼしいモノは無い。
 床、壁、天井が石を積んで造られている……ランタンがなくとも若干明るいのは、表面に付着している光る草みたいな植物のおかげなのだろうか。
 物珍しそうに眺めているとステラが、

「それはヒカリシダって言って、詳しくは知らないが空気中のマナ吸って光ってるらしい……他のダンジョンだとヒカリゴケなんかも定番だ」
「うーむ、ロールプレイングって感じで感動する」
「ろ、ろーる?」
「あぁいや、なんでもない」
「この扉は……うわ、向こう側瓦礫で埋まってるのじゃ」
「そこが前、アイガーさん達が宝を取った部屋か……」

 あの後、詳しく話を聞いたのが――正直昔過ぎて全然覚えてないらしい。
 ただ1つだけ覚えていたのは――あの宝を取った部屋の奥に、確かに扉があったのだという。

「ダンジョンの本当の宝を守る為に、手前に分かりやすい宝を用意する訳じゃな。入り口まで潰す罠を仕掛けているとは、よほど盗られたくないのじゃろう」

 ハナコと俺は扉を閉めて、再び部屋を捜索する。
 恐らくはこの部屋のどこかに隠し通路的なモノがあるのは確実なんだろうが――ヒントも何も無い。

「ゲームだったら、意味ありげな石碑とか立っているのになぁ」
「このダンジョンを造った主が、宝は後世に残すつもりは無かったのだろう。主だけが宝のある部屋の行き方を知っていれば良かった……となれば、何かの魔道研究の成果とかかもしれんな」
「ふーむ……よし、お前ら。ちょっとアタシの横へ来るのじゃ」
「どうしたんだハナコ」
「闇雲に探してもしょうがないという事じゃ……変化のジツ、一部解除!」

 三角帽子を脱ぐと、頭の猫耳があらわになる。

「おぉ! 話には聞いていたが、これは……かわいい……撫でてもいいか?」
「後にするのじゃ」

 余談だが。
 俺とジェイドによってハナコの正体については話してある。
 ステラも秘密は守ってくれると約束してくれた。
 
 ちなみに一緒に暮らしている事は、ジェイドと相談した上で秘密にしてある。
 一般的な常識ならば、ステラとなら女性同士だし、色々安心だろうと考えるが、ジェイドに却下された。
 ステラの私生活はそりゃもうヤバいと……あと可愛いモノには目がないと……ならば秘密にしておく方が吉なのだ。
 決して、俺が猫耳少女との生活を終わりにしたくないからでは無い……無いのだ。
 余談終わり。

「それ」

 ハナコはショートソードを抜くと、剣の腹を壁に叩き付ける。
 キィーン――とした音が部屋の中に響き渡る。
 猫耳がピコピコと動き、反響する音を細かく聞き分けているようだ。

「……ここか」

 ハナコがとある壁の前まで来ると、一気に壁を押した。
 ガコン――と音が鳴り、どんでん返しのように壁の一部が回った!

「おぉ。これで先に進めるなステラ」
「撫でていいか? 撫でていいか?」
「……手短にするのじゃ」
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