53 / 93
第4話 武器コンテストと忍者
18.決戦投票
しおりを挟む『さて、これで終わりではありません。続いて投票のお時間です! 審査員と観客の皆様は、素晴らしいと思った武器を作った職人の名前の札を上げて下さい!』
『おっと副団長のウォルコット殿はテッカンに上げた』
「シンプルかつ扱いやすさ、魔力反発が起き難いのは我々に取っても重要な要素です」
『ママード殿は……ダイアーに上げましたね』
「若き職人の未来を感じました――ふふっ」
『武具マニアのオリオン様は、ゴッチンだ!』
「まだまだ可能性を感じさせる素晴らしい武器でした。魔炎鋼竜の素材だけでなく、柔軟性を考えデッドリーベアーや、武器にはサイクロプスの牙なども使われて――」
『はい、ありがとうございました!』
MCは審査員席から観客席の方へと向いた。
『では先に観客席の投票を行います! これはと思った方の札を上げて下さい。1はゴッチン、2はテッカン、3はダイアーです』
観客の札がまばらに上がり始める。
『おおっと……ほぼゴッチン票とテッカン票が半々といった感じですね――集計には時間掛かりそうなので先にウルフ様から先にどうぞ!』
「フム……その前にみんなの作品を振り返りマスがよろしいですか?」
『ど、どうぞ』
「まずダイアー君」
「は、はい!」
「如意合金を使った鞭は靭やかで強靭デス。それを伝える魔力経路も素晴らしい出来でした。この若さでこれだけのモノが作れるのは努力の成せる技でしょう」
「ありがとうございます!」
「しかしこの武器の金属を精製する際に、通常より多く……力を入れ過ぎて叩き過ぎましたね。そのせいで本来の柔軟性が多く失われていマス。その原因は、分かってマスネ?」
「……はい」
「ゴッチンさんとテッカンさんの作品は自信に満ち溢れ、迷いが無いです。双方の武器に対するアプローチは逆ですが、そこがイイ! このコンテストの審査員が出来てとても嬉しいデス!」
『……ではウルフ様の票は?』
「どちらも素晴らしいので2票入れちゃいマース!」
おどけながら両手で2人の札を挙げるウルフ。
『え、えぇ!?』
「観客席の皆さん、後は任せマシタ」
『いやはや……おっと集計が終わりました』
俺は観客席のルビィと目線が合い、互いに頷いた。
『1が2157票、2が2499票、3が521票……優勝はテッカン殿のハクオウケンです!』
会場全体から大きな拍手と歓声。ゴッチンとダイアーも渋い顔をしながらも拍手をしている。
「やったで、父ちゃん! これで借金も返せるで!」
観客席から飛んで来たルビィは、これまで以上の笑みを浮かべてやってきた。
「あぁそうだなルビィ。儂も新作のアイディア思い付いたから、すぐに工房で作業やらねーと!」
「いやそんなんよりもっとやる事あるやろが!」
ダイアーがこちらにやってきた。
「……ボクは絶対、絶対アンタを超える鍛冶師になってやるからな! 覚悟しとけよ!」
「おぅ、そうか」
「……ふんっ」
「ダイアー、まだ怒ってるんか」
「ふふふ。ルビィもまだまだだなぁ」
うんうんと頷く俺。
ゴッチンは……特に何も言わず気絶したままのジロウを台車に載せてどこかへ行ってしまった。
『賞金は作品の材料費とは別に金貨1000枚! さらに5年連続優勝したテッカン殿には、宮廷鍛冶師の称号が与えられます! テッカン殿、一言をお願いします』
「ごほん――」
MCから拡声魔道具を受け取ると、テッカンはこう語った。
『儂は色々あって借金をしてまで武器を作ろうとして――失敗した。そのせいで嫁と息子にまで出て行かれた。しかし、ここに居るヨーイチや冒険者達、古くからの仲間達に助けられ……優勝する事ができたんじゃ。つまり何を言いたいかと言うと……』
すぅ――と息を吸い、叫ぶ。
『職人共! 自分の思う最高の作品を作るのじゃ! 家族が泣きたいなら、泣かせとけ!』
観客席からは歓声とブーイングが同時に沸き起こる。
「父ちゃん……」
「はっはっはっ! テッカンさんらしいや」
◇◆◇◆◇◆◇
「ほら、いつまで寝とんじゃ起きんか」
テッカンは控え室で帰り支度をしていた。
台車の上で気絶していたジロウはようやく目を覚まし、辺りを見渡す。
「ハッ! ここは……敗けたのか」
「まぁ、今回は機能テストだったから結果にはとやかく言わんが」
「……面目ない」
「やぁゴッチンさん。ジロウ君もお疲れ様です」
そこにいつから居たのか。
フードを被った男が、椅子に座ってティーカップで茶を飲んでいた。
テーブルには羊皮紙とペンが置かれ、何かを描いていたようだ。
「お前か」
「……」
「テストはどうでしたか」
「改良点もいくつか見つかったし、結果はまぁまぁだろう――次はお前の分も作ってやるから、材料とデザインの要望を出してくれ」
「えぇ頼みますよ。デザインはもう決まってます」
そう言って、男はテッカンに羊皮紙を手渡す。
そこに描かれた姿は――ヨーイチの鎧にそっくりだった。
1
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~
岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。
順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。
そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。
仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。
その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。
勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。
ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。
魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。
そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。
事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。
その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。
追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。
これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた
こばやん2号
ファンタジー
とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。
気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。
しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。
そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。
※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる