セカンド人生は動く鎧になって冒険者生活!?

ゆめのマタグラ

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第4話 武器コンテストと忍者

18.決戦投票

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『さて、これで終わりではありません。続いて投票のお時間です! 審査員と観客の皆様は、素晴らしいと思った武器を作った職人の名前の札を上げて下さい!』

『おっと副団長のウォルコット殿はテッカンに上げた』
「シンプルかつ扱いやすさ、魔力反発が起き難いのは我々に取っても重要な要素です」

『ママード殿は……ダイアーに上げましたね』
「若き職人の未来を感じました――ふふっ」

『武具マニアのオリオン様は、ゴッチンだ!』
「まだまだ可能性を感じさせる素晴らしい武器でした。魔炎鋼竜の素材だけでなく、柔軟性を考えデッドリーベアーや、武器にはサイクロプスの牙なども使われて――」
『はい、ありがとうございました!』

 MCは審査員席から観客席の方へと向いた。
 
『では先に観客席の投票を行います! これはと思った方の札を上げて下さい。1はゴッチン、2はテッカン、3はダイアーです』
 
 観客の札がまばらに上がり始める。
 
『おおっと……ほぼゴッチン票とテッカン票が半々といった感じですね――集計には時間掛かりそうなので先にウルフ様から先にどうぞ!』
 
「フム……その前にみんなの作品を振り返りマスがよろしいですか?」
『ど、どうぞ』
「まずダイアー君」
「は、はい!」
「如意合金を使った鞭は靭やかで強靭デス。それを伝える魔力経路も素晴らしい出来でした。この若さでこれだけのモノが作れるのは努力の成せる技でしょう」
「ありがとうございます!」
「しかしこの武器の金属を精製する際に、通常より多く……力を入れ過ぎて叩き過ぎましたね。そのせいで本来の柔軟性が多く失われていマス。その原因は、分かってマスネ?」
「……はい」
「ゴッチンさんとテッカンさんの作品は自信に満ち溢れ、迷いが無いです。双方の武器に対するアプローチは逆ですが、そこがイイ! このコンテストの審査員が出来てとても嬉しいデス!」
『……ではウルフ様の票は?』
「どちらも素晴らしいので2票入れちゃいマース!」
 
 おどけながら両手で2人の札を挙げるウルフ。
 
『え、えぇ!?』
「観客席の皆さん、後は任せマシタ」
『いやはや……おっと集計が終わりました』
 
 俺は観客席のルビィと目線が合い、互いに頷いた。
 
『1が2157票、2が2499票、3が521票……優勝はテッカン殿のハクオウケンです!』
 
 会場全体から大きな拍手と歓声。ゴッチンとダイアーも渋い顔をしながらも拍手をしている。
 
「やったで、父ちゃん! これで借金も返せるで!」

 観客席から飛んで来たルビィは、これまで以上の笑みを浮かべてやってきた。
 
「あぁそうだなルビィ。儂も新作のアイディア思い付いたから、すぐに工房で作業やらねーと!」
「いやそんなんよりもっとやる事あるやろが!」
 
 ダイアーがこちらにやってきた。
 
「……ボクは絶対、絶対アンタを超える鍛冶師になってやるからな! 覚悟しとけよ!」
「おぅ、そうか」
「……ふんっ」 
「ダイアー、まだ怒ってるんか」
「ふふふ。ルビィもまだまだだなぁ」
 
 うんうんと頷く俺。
 
 ゴッチンは……特に何も言わず気絶したままのジロウを台車に載せてどこかへ行ってしまった。
 
『賞金は作品の材料費とは別に金貨1000枚! さらに5年連続優勝したテッカン殿には、宮廷鍛冶師の称号が与えられます! テッカン殿、一言をお願いします』
「ごほん――」
 
 MCから拡声魔道具を受け取ると、テッカンはこう語った。
 
『儂は色々あって借金をしてまで武器を作ろうとして――失敗した。そのせいで嫁と息子にまで出て行かれた。しかし、ここに居るヨーイチや冒険者達、古くからの仲間達に助けられ……優勝する事ができたんじゃ。つまり何を言いたいかと言うと……』
 
 すぅ――と息を吸い、叫ぶ。
 
『職人共! 自分の思う最高の作品を作るのじゃ! 家族が泣きたいなら、泣かせとけ!』
 
 観客席からは歓声とブーイングが同時に沸き起こる。
 
「父ちゃん……」
「はっはっはっ! テッカンさんらしいや」


  ◇◆◇◆◇◆◇


「ほら、いつまで寝とんじゃ起きんか」
 
 テッカンは控え室で帰り支度をしていた。
 台車の上で気絶していたジロウはようやく目を覚まし、辺りを見渡す。
 
「ハッ! ここは……敗けたのか」
「まぁ、今回は機能テストだったから結果にはとやかく言わんが」
「……面目ない」
「やぁゴッチンさん。ジロウ君もお疲れ様です」
 
 そこにいつから居たのか。
 フードを被った男が、椅子に座ってティーカップで茶を飲んでいた。
 テーブルには羊皮紙とペンが置かれ、何かを描いていたようだ。

「お前か」
「……」
「テストはどうでしたか」
「改良点もいくつか見つかったし、結果はまぁまぁだろう――次はお前の分も作ってやるから、材料とデザインの要望を出してくれ」
「えぇ頼みますよ。デザインはもう決まってます」
 
 そう言って、男はテッカンに羊皮紙を手渡す。
 
 そこに描かれた姿は――ヨーイチの鎧にそっくりだった。

 
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