セカンド人生は動く鎧になって冒険者生活!?

ゆめのマタグラ

文字の大きさ
上 下
52 / 93
第4話 武器コンテストと忍者

17.VSジロウ<武者六道>

しおりを挟む

 突然ニーアが話しかけてくる。
 
(どんな!? 今俺の中には誰も乗ってないし……)
 
『アムル、ステラ、ルビィの解析が完了しています。この解析結果を貴方の魂データへ反映し、戦闘レベルをアップグレードできます』
 
 なんて便利な機能なんだ。
 
(すぐにやってくれ!)
 
『3人分だとおよそ――』
 
(ステラの分だけで!)
 
『了解。ステラの戦闘経験値を反映します』
 
 その間もジロウの攻撃は続いている。
 しかし内部会話のせいで少しだけ、俺の動きが鈍ってしまった。
 そこを見逃してくれなかった。
 
「そこだ!」
 
 ジロウは武器を手放し、俺の腕を掴み引っ張り、即背後に周り俺を地面に叩き付ける。
 
「ぐっ」
「骨を折られたく無ければ降参しろ!」
 
『90、95……100%、アップグレード完了しました』
 
「誰が、降参するか!」
 
 ジロウを乗せたまま残った腕で起き上がる。腕が変な方向に曲がっていても気にしない。そもそも中身無いし。
 そのままジロウを床に叩き付けようとするが、
 
「おのれ!」
 
 さすがに手を離し、すぐに自分の武器を回収した。
 
「……」
 
 俺は剣を腰に回すように構える。
 雰囲気が変わったのに気付いたのか、ジロウは少し躊躇したようだが――。
 
「はぁッ!」
 
 今度は左右に揺れるようなステップで突進してきた。あまりにも早い揺れのせいで分身しているように見える。
 
「白皇、一閃!」
 
 俺から見て左のジロウへ高速の斬撃を放つ!
 
「なに!?」
 
 ジロウは小太刀をクロスさせ防ぐが、俺は一瞬で距離を詰め、さらに追撃を行う。
 
「たぁッ!」
 
 剣を水平に構え、刺突を左肩へ食らわす。
 魔力により強化された一撃は、鎧の耐久値を大きく超えたようだ。
 肩の部分の鎧が破損し、生身の部分が露出した。少し血も出ているようだ。
 
「なんだ、いきなり動きが――いやそれより腕の感触が……」
「……」
 
 俺は再び構えを取る。
 このステラのよくやる構えは相手が動いても、こちらから動いても対応できる構えだ
 ただし、それはステラのよく相手を見る眼と経験があればこそだが――今の俺はその戦闘経験を受け継いでいる。
 
「クソッ……武者六道ムシャムドウ、ホウセン!」
 
 小太刀を背中に仕舞うと、今度は脚や腕から棒のようなパーツが飛び出し、最後に背中から出てきた刃物を先端に付け完成したようだ。
 槍の両側に斧のような刃が付いた武器。戟やハルバードと呼ばれるモノだ。
 しかしこのくらいの間合いなら問題ない――と思っていたら。
 
「複合変体。アシュラ、アミダ!」
 
 背中から再び腕が生える。
 ただし左の1本は足りない。これは左肩の破損が原因なのかもしれない。
 背中の手は刀2本と包丁刀を持っていた。さらに本人はハルバードを構える。
 
「……ははっ」
 
 それは前に戦ったマナビーストという化け物にそっくりだった。
 あの時より武器も多彩で多いし、何より俺自身が戦っている。
 
 ジロウはこちらとの間合いと図り、ジリジリと横へ移動する。
 俺は先手を取るのは不利と考え、構えを維持する。
 
『さぁ残り時間は5分を切ったぞ! どうなるッ』
 
「――きぇぇぇえええッ!!」
 
 MCのその実況を合図に、ジロウは叫びながら突進してきた。今度は一直線に、後ろの腕も攻撃を与えるべく後ろに引いている。
 
「白皇剣、フルパワー!」
 
 俺は剣に自分の魔力を全力で込めた。
 柄や剣の装飾部分が輝き、魔力が刀身に伝わり、さらに魔力の刃が刀身沿いに高速で回転する。
 
 そう、それはまるでチェーンソーのように。
 
 この剣は俺の声に答えるようにその姿を変える。
 俺は今、相手の武器すべてを破壊する姿を望んだ。

「一撃、必壊!」

 相手の攻撃に合わせて俺も剣を振るう。
 最初にハルバードが触れるがそれを容易く斬り裂き、上段から振り下ろされる包丁刀も砕き、左右からの来る刀の攻撃はその場で即座に回転斬りを行い――破壊する。
 
「はぁ!!」
「ひぃッ!?」
 
 さらなる追撃がジロウの脳天に当たる直前に、俺は寸止めをした。
 
 寸止めが少し失敗し、兜も破壊されてしまって――ジロウは泡を吹いて倒れた。
 
『おおっとジロウここで気絶! カウントは――いや武器も破壊されていますね』

 MCは俺の腕を掴み、天高く持ち上げた。
 
『勝者は、ヨーイチ&テッカン殿だ!!』
 
 これまでで1番大きな歓声が、闘技場全てを包み込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~

岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。 順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。 そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。 仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。 その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。 勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。 ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。 魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。 そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。 事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。 その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。 追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。 これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...