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第4話 武器コンテストと忍者
9.弟
しおりを挟む俺がステージから控え室に戻る途中、ルビィが待っていてくれていた。
「「いぇーい!」」
互いに手を叩き合う――。
「ってルビィ、いつもより多めに魔力入れるだけ――って、あんな風になるとか聞いてないぞ!」
「派手で良かったやん! まぁ次から使う時は気ー付けてな」
「まったく……」
俺とルビィは観客席の関係者席へと移動し、他の参加者を見学する。
他にも多彩な武器と多才な職人達が登場した――そしてその中の1人の見て、ルビィは驚きの声を上げた。
「うわっ、ダイアーやん!」
ダイアーと呼ばれたのは背が低めの青年で、見た目には冒険者風の格好だ。ルビィと同じ茶色系の髪の毛で、少し幼い顔立ちをしている。
「アレ、ウチの弟……母ちゃんに着いて出てったからどこいるか分からんかったけど」
ステージ上では、ダイアーがMCに紹介され武器を取り出した所だ。
『さぁ次に登場したのは若き鍛冶職人、期待の新星ダイアー君だ! 武器は”ライジング"です』
「……」
ダイアーが取り出したのは、無数の刃が連なって繋がっている”鞭"のような形状をしている。
ライジングを振り回すが、周囲の床などには当たらず不規則な動きをしている。魔力を込める事で自在に操作できるようだ。
「……ハッ!」
さらに鞭はどんどん伸びて行き――あやとりのように鞭で狼の横顔を再現した。
観客席からは多くの歓声と拍手が送られた。
『いやこれは凄い精密性です! では審査は――おおっと今大会2人目の満場一致! ダイアー君、おめでとうごさいます!』
「ありがとうございます」
◇◆◇◆◇◆◇
「ダイアー!」
観客席から飛び出したルビィは、通路を歩くダイアーを呼び止める。
俺もすぐ後を追って来た。
「姉ちゃんか……あの男も、参加出来たんやな」
「あの男って、父ちゃんや。ダイアーいつの間にあんな武器作れるようになって……」
「……元々、別の工房で修行させて貰ってたんだよ。あの男はボクにはまだ早いって触らせてくれんかったけど」
「そりゃ父ちゃんにも考えがあって――」
「家族に黙って借金5000枚もこさえる男の、どこに考えがあるっていうんや!」
「……そこに関しては、そうやけど」
(否定できないもんな……)
「それでどれだけボクらが、母ちゃんが苦労したと思っとるんや! 今回だけじゃない。毎回コンテストで無茶な作品ばっかり作って、それにボクらは振り回されて――借金やって今回だけやない。昔はよう武器売れれば必ず取り返せるって、借金ばっかりしてたらしいやん」
(ギャンブルにハマった人みたいだ。実際取り返してるから凄いんだけど)
「それも全部良い作品を作りたいって職人の本望やん。確かに父ちゃんはよく家族の事を考えずに突っ走るけど、それでもなんも気にしてないなんて、あらへんよ」
「良い作品が出来れば家族はどうだっていいって言うんか! 大体、今日の武器はなんだよ。あんな金ばかり掛かった品の無い武器は……あんだけの素材用意するのに、またどんだけ借金したんだよ! いい加減にしろよ!」
「ダイアー! 父ちゃんがアレを作るのにどんだけ――」
「――ともかくあの男の、テッカンの作る武器は絶対、ボクの武器で捻じ伏せてやる……ほなな!」
それだけ言い残し、ダイアーは奥へと消えて行った。
後には俯くルビィと、気まずい俺だけが残った……。
『さぁ最後の大トリを飾るのは、テッカン氏のライバル! ドワーフ鍛治職人界のいぶし銀! ゴッチンだ! 武器の名は”ムシャムドウ"? 変わった名前ですがどうぞ!』
会場から大歓声が上がり、こうして前半の部は終わった。
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