セカンド人生は動く鎧になって冒険者生活!?

ゆめのマタグラ

文字の大きさ
上 下
41 / 93
第4話 武器コンテストと忍者

6.武器コンテスト予選

しおりを挟む

『さぁ今年も始まりましたエルダー=ソー=アルバート=シンディア81世陛下直々主催の第20回王都武器コンテスト! その予選を開催致します!』
 
 会場から盛大な拍手が起こるが、それでも観客席はまだ空きがある感じだ。
 
「まだ予選やからなー。熱心な観客以外は明日が本番や」

『今年も司会進行はこのオレ! マスクドスミスがやらせて頂きます!』
 
 闘技場は本来の用途であれば試合用のステージが中央にあるが、今はMCのマスクドスミスが拡声魔道具で喋っている。
 さらにステージ場下には長机があり、3人の男女が椅子に座っている。恐らく審査員だろう。

『では簡単に予選の内容を発表します。今から自慢の作品を持った職人、またはモデルの方が登場します。前もって詳細な情報を書いたモノは審査員のお手元にあります。職人の皆さんは、制限時間内に作品のアピールをして下さい』

 
『では今日の審査をする最高の審査員の方々をご紹介致します。その堅物さが有名な王国騎士団の副団長ウォルコット殿!』
 
「どうぞよろしくお願いします……堅物?」
 
『商人ギルドの中でも売上上位のママード商店の女店主、ママード殿!』
 
「去年は3位でした。冒険者さん向けの色んなアクセサリーや食材を取り揃えていますママード商店をよろしくね!」
 
『最後は毎年審査員としてご参加頂いている、貴族でありながら武具マニアの異名を持つこの方、オリオン=ハワード様!』
 
「んー、今年も良い作品がたくさん見れる事を期待しているよ。特に今回は20回きぃねん! 特に素晴らしいモノならワタクシが買いたいくらいだ!」
 
『コンテスト開催中の売買の取引は禁止ですよー。では、まずエントリーナンバー、ワン! 東のドーティアの鍛冶工房よりやってきた――』

  ◇◆◇◆◇◆◇


 俺達は控え室になっている部屋で出番を待っているのだが――何故か俺の身体に色々な装飾品が取り付けられている。
 
「よし。後は審査員の前で、格好良く剣を抜いて構えてくれるだけでいい」
「あの、これはどういう……」
「モデルやモデル。普段は職人本人が担いだり、モデル役の冒険者雇ったりするけど……やっぱこの剣はヨーイチ君に合わせてるからな! ええ格好にせんとな!」
「いや全く初耳なんだけど」
「言ってなかったっけ? まぁそういう事や」
 
(クソー、前持って教えてくれていたら凄いカッコイイポーズ考えたのにさ!)
 
『……それが理由では?』
「え、何?」
『なんでもありません』
 
 そうこうしている間に順番が回ってきたので、ステージへ向かう通路を2人と共に歩いて行くと、正面から麻布に包まれた大きな何かを台車で運ぶドワーフがやってきた。
 
「よぉ、テッカンじゃねーか」
「ゴッチンか」
 
 確か前に聞いた、毎年テッカンさんと優勝を争っているドワーフの鍛冶職人だ。
 白い髪と髭が立派なテッカンとは対照的に、頭はツルツルである。髭は三日月のように尖っている。
 
「風の噂で借金こさえて嫁さんに逃げられて、コンテストほっぽり出して田舎に帰ったと聞いてたが……腰抜けなりにプライドはあったようじゃな」
「ふんッ。ちょっと素材の調達に旅行いっとっただけじゃよ。お前こそ、不出来な品を作ってないだろうな?」
「ワシはあんな茶番みたいな予選に興味は無い! それじゃーの」
 
 台車を押してそのまま控え室へと入っていくゴッチン。
 
「話に聞いとったのより、仲良さそうやな」
「どこがだ。それより行くぞ」

 
『さぁ最後の登場だ。4回連続優勝、今年の優勝で殿堂入りを果たせるか! エントリーナンバー72! 南のコーディア出身のテッカン殿だ!!』

 ここでの出来事は割愛するが、俺達は無事予選を突破したのだ。

 いや本当に剣を抜いて構えるだけで出番終わったし……。

  ◇◆◇◆◇◆◇


「「「かんぱーい!」」」
 
 予選が終わったその夜。
 俺達は宿屋と提携している酒場で予選お疲れ様会を開いた。
 
「いやぁ、特に問題なく終わったのぉ」
「誰かさんの落し物のせいでヒヤヒヤしたけどなー。まぁええやろ!」
 
 周りのテーブルにもコンテストに出場していたであろう職人らしき客もいて、非常に騒がしい店内だ。
 
「しかしあの神官さんには感謝やなー。眼も見えないのに、よく見つけれたんやな」
「えっ、そうだったの」
「あの服は身体に不自由ある神官が着る特別な奴やで。神より試練を多く賜った者は強い信仰心と共に奇跡を授かるとかなんとか」
「へー」
 
 だから街中でも杖を付いて歩いていたのか……本当によく見つけれたな。
 この時の俺は、その程度の事だと思っていた――。
 
「さぁ、じゃんじゃん飲むでー!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~

岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。 順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。 そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。 仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。 その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。 勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。 ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。 魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。 そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。 事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。 その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。 追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。 これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...