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第4話 武器コンテストと忍者
5.落とし物
しおりを挟むシンディア国、王都。
ここは大陸の大体中央に位置し、霊峰ディアレストの麓にある。
王都のさらに奥の高台にそびえているのが国王のいる城で、他にもコーディアでは見られない高い建造物も多い。
ちなみにディアレストにはディアト教総本山の教会と町があるらしく、巡礼者もよくこの街に訪れるらしい。
「シンディア81世陛下の剣を模したアクセサリーかー、いいなーこういうの」
『特に魔力、魔法などは見受けられません。ただのアクセサリーです』
「いいの! こういうのは身に付けてるだけで嬉しいの!」
「兄ちゃん! あそこの蛇が絡みついた剣も良い感じなのじゃ!」
土産物屋の前ではしゃいでいると、なんだか後ろから視線を感じる。
どうやら通行人がチラチラとこちらを見ているようだ。
「なんだろ。そんなに珍しいのかな」
しかし街の中には冒険者らしき人らも見える。
その中には自分みたいなフルプレートアーマーみたいな人も稀にいるようだ。
「お兄さん、気合入ってるねー」
「ん?」
土産物屋の店主が声を掛けてきた。
「ソレ、初代勇者様の鎧のレプリカだろ? 武器コンテストに出るんだろ、頑張れよ」
「は、はぁ」
武器コンテストに出るのはテッカンさんだし、俺が鍛冶師にでも見えた――訳がないよな。
そんな事をしている内に、テッカンさんが来た。
「おぉ、こんな所に居たか。登録も済ませたし、今日は宿でゆっくりしていていいぞ。予選は明日……会場の前が宿だし迷わんとは思うが……朝の鐘が鳴ったら集合だぞ」
この街に限らないが、ディアト教を信仰している人達が多い関係で朝と昼と夜の礼拝の時間に鐘が鳴る。
「分かったよ」
俺は1人(と中にハナコ入り)で街を散策していると、ルビィを見つけた。
ここは――王都の武具屋が多く並ぶ通りのようだ。もう夕方だというのに冒険者や兵士などの人通りが多い。
「よぉルビィ。どうしたんだよ」
「ヨーイチ君か。いやね、ここ……元ウチなんよ」
指差した先には立派な3階建ての工房があった。今は人気もなく、ドアには【差押え中】とだけ書いた張り紙がしてある。
「……絶対、コンテスト優勝しようぜ」
「――うん」
◇◆◇◆◇◆◇
次の日――。
宿の玄関から見える闘技場を見上げる。
闘技場の前の通りには屋台や見物客が既に多く、一大イベントなのが伺い知れる。
「予選に1日掛けるとか、そんなに出場者多いの?」
「せやでー。東西南北の街や王都の指折りの職人はもちろん、野生のプロ職人や、国外からもやってくるって話や。予選である程度ふるいに掛けんとなー」
「その中で優勝とか、凄いなテッカンさん」
「5回目の優勝は、絶対取らんとな。後、借金も返さんと」
「悪いな、遅れた」
「もう父ちゃんが来ないからウチが出場しようかと思ってた所やー」
全員揃った所で、闘技場へと向かった。
既に事前登録してあるのでパスを見せて中に入るだけ――なのだが。
「あれ……どっかに落としたかもしれん」
「アホー!」
宿から闘技場までそんなに距離は無いが、何せこの人の多さだ。どっかに落ちているパスを探すのはもちろん、誰かに拾われていたらもう無理だろう。
「確かに宿を出る前はあったんじゃが……」
「とにかく探そう」
そう言って振り向くと、目の前に女性の神官が居た。
「きゃっ」
「あ、すいません!?」
白い布地に青のラインが入った、全身の肌を隠すかのような神官服の若い女性である。
手には錫杖のような杖を持っており、柔らかそうな金髪から覗くその瞳は閉じられている。
耳が長いのでエルフなのだろう。
「何やってんねん。大丈夫ですか?」
「えぇ――先ほど話を聞いてたら何か落し物をされたようで」
「そうなんよ。このアホ父ちゃんが会場に入るパスを落としたって……」
「面目ねぇ」
「あぁ、やっぱり。さっきそこで拾ったので届けようと思ったんですよ」
そう言って差し出して来たのは、金属製のタグに細いチェーンの付いたアクセサリーみたいな見た目のパスだった。ちゃんとテッカンの名前と……何故か俺の名前も刻まれている。
「それや! ありがとなーほんまに助かった!」
「いえいえ」
「なんかお礼したいけどもう予選始まるし」
「お気になさらずに……全ては神の御心のままにやった事です。では――」
そう言うと女性は軽く会釈し、行ってしまった。
「兄ちゃん、あの今の女――」
「ん?」
「――なんでも無い。ちょっと街ブラブラしてくるのじゃ」
物陰でハナコを出すと器用に家の壁を登り、そのまま屋根伝いにどこかへ行ってしまった。
「マジで猫みたいだな……」
「よっしゃーほな行くでー!」
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