セカンド人生は動く鎧になって冒険者生活!?

ゆめのマタグラ

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第4話 武器コンテストと忍者

3.のじゃロリ猫耳エルフ忍者登場

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「うーん」
 
 爆散するスライムから落ちた女の子はジェイドにしっかり助けられ、俺は辺りに散らばった粘液の中から右腕を回収した。後で洗おう。
 
「――ゲホッ、ゲホッ」
 
 見た目が10歳くらいの女の子は黒と紫を基調とする民族衣装を着ていた。三角帽子は脱げてしまい、その黒髪が露わに――。
 
「この子は、獣人か!?」
 
 頭に可愛らしい猫耳が付いていたのだ。
 しかしこの服装。どこかで見た事あるような。
 
「大丈夫か!?」
 
 咳き込む女の子の背中を擦りながら肺の中の粘液の排出を促す。
 
「ゲホッ……は゛い」
 
 まだちょっとキツそうだが、意識は取り戻したようだ。
 
「ありがどう。まさか池の中にスライムが居るとは……アタシも油断したよ」
 
 と、ここで俺らの視線が女の子の頭にある事に気付くと、慌てたように三角帽子を被る。
 
「あわわ――見た?」
「見た」
「君、獣人? エルフっぽい耳もあるみたいだけど」
「へ、変化のジツが解けかけてる――こほん。お主ら、ちょっとそこで話があるのじゃ」
 
 女の子に促されるまま俺達は休憩所へと入り、ひとまず焚き火を起こした。
 少し気まずそうな幼い顔が明かりに照らされる。
 
「えーっと、何から話せば良いか……」
「その前に。ここに君と似た服装の女の人来なかった? 巨大スライム討伐クエスト受けたらしいんだけど、行方不明でさ」
「……あぁ、そうそう。その人ならここへ来た後にどっかへ――」
「どう考えても君でしょ」
「そうなの!?」
「ギクッ」
「さっき変化とかどうとか言ってたし」
「ギクッ……しょうがない。ならば話すしかないな」
 
 女の子がポツリと、話し始めた。
 
「アタシはハナコ。ここより西のクーロン国よりやってきたニン者じゃ」
「――あぁ、ハナコってあの時」
 
 確か巨大なパンダを出してクイーンマインの攻撃から俺達を守ってくれた女忍者。
 
「でもギルドの時も顔が違ったような」
「一応抜けニンじゃからな。見つからぬよう、変化のジツで姿形を変えておったのじゃ――今はスライムに魔力吸われてるから元の姿じゃが」
「確かヤスオさんから聞いた話によると、忍者って元々エルフって聞いたけど」
「かつてエルフ達はニン者として生きる事を決めた時、伴侶を外の世界で見つける事にしたのじゃ」
 
 強い人間の戦士や冒険者、獣人やオークの伴侶を持ったエルフも居たという。
 
「強い遺伝子を持って最強のニン者として売り出す為じゃな――アタシの一族は獅子の獣人と交わったそうだ」
「……猫じゃないんだ」
「あん? ……そして稀に先祖の血が濃くなる子供が産まれる事がある。それがアタシ。この耳も一族の中ではお婆ちゃんかアタシくらいしか生えてないぞ」
「普段から見た目が変わってたのは耳を隠す為か?」
「そうだ。ニン者の里でもアタシは珍しい見た目をしているから変化のジツであの姿になっていた――この事は一族だけの秘密なのじゃ」
「……で、オレらはその秘密知っちゃったけど」
「本来なら記憶を喪失させるジツを使いたい所じゃが、魔力が足りないし――時間が経つと狙った記憶は消せないしな……という事で、この事は黙ってて下さい!」
 
 その場で土下座し、小さく丸くなるハナコ。耳も垂れ下がる。よく見たらお尻から尻尾も見えていた。
 
「まぁ女の子から頼まれちゃオレも断らない理由はないけど」
「そうだなー。でも俺、この子に公衆の面前で魔物呼ばわりされたしなー。フリー冒険者が勝手に依頼受けちゃったし、冒険者協会に通報しないとなー」
 
 少し意地悪をしてみる。
 ハナコはビクッとし、こちらを見上げた。
 
「あ、あの時はすまなかった……金が入ったら奢ってくれた飯代も返すから……だから通報は……」
 
 プルプルと震えながら涙目になる猫耳の女の子――可愛いが、もちろん俺はそこまで外道ではない。
 
「分かってるって。俺も真っ当な身体じゃないのは事実だしな」
 
と言いながら猫耳を撫でたり、背中を撫でたりする。
 
「にゃっ!?」
「うーむ、猫耳少女――イイな!」
「あ、ずりぃ。オレも撫でさせてくれよ」
「ア、アタシは猫じゃないのじゃ!!」

  ◇◆◇◆◇◆◇

「この度は、まことに申し訳ございませんでした」
 
 翌朝。
 俺らに連れられて、ハナコはギルドマスターの前で再び頭を下げた。
 
「まぁ無事だったんなら言う事は何もねぇ。今後、間違えるんじゃねぇぞ。ジェイド。俺は王都へ行くから、ステラにもそう言っといてくれ」
「分かったよ、伝えとく」

 
「怒られなくて良かったのじゃ……」
 
 下の酒場でお疲れ様会を開いた俺とハナコ。
 ハナコの今の見た目は15歳くらいである。大人の姿だと色々怒られそうなので――とジェイド発案。
 昨日の巨大スライム討伐の報酬とスライムの死体を売った金が割とまとまった金額になったので、それを3人で均等割りにする事になったのだ。
 ちなみにここはハナコの奢りになった。
 
「で、これからハナコはどうするの?」
「ひとまずはフリーでも受けれる仕事をしつつ、入れるギルド探すかなぁ」
 
 相変わらずここのギルドの新規登録は停止中だ。
 ハナコはサラダをムシャムシャ食べながらボヤいた。
 
「そういえば抜け忍って言ってたけど、やっぱり追っ手が来たりするの?」
「昔ならすぐに里に連絡がいって処刑部隊が来たりするけど。テーマパーク化する時に処刑部隊の人らも……里から出ちゃったのじゃ……」
「世知辛い……」
「あのバカ委員長が追っ手を差し向ける可能性も無くは無いけど。まぁバカだからそんな頭は無い無い」
「ふーん……ハナコさ。俺とパーティ組まないか?」
「ぱーひー?」
 
 焼き魚を頬張りながら聞き返してくる。
 
「パーティ組めばフリー冒険者も正規のメンバーと同じ依頼に参加できるし、何よりお互いに秘密知ってる仲だし……色々気楽に出来そうだと思うんだ」
「アタシとしては断る理由もないけど……ホントにいいの?」
「ハナコの忍術が凄いの知ってるし、俺も最近結構実力不足を痛感しててさ」
 
 結局は俺自身はそこまで強い訳じゃない。
 俺を着てくれる人が居ないと、本領を発揮できないのだ。
 その辺の雑魚魔物なら問題ないけど……今後を考えたら事情を知って一緒に戦ってくれる人は多い方が良いはずだ。
 
「アタシのニンジツ、凄かった?」
「そりゃもう」
「――ふふーん。そうかそうかアタシのニンジツが凄かったのじゃな! ならば仕方が無い、アタシの力を貸してくれようぞ!」
 

 こうしてハナコと一緒のパーティを組む事となった。

 決してたまに耳とか撫でたいからではない。

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