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第3話 鍛冶師たちとの出会い
16.鍛冶師の仕事・後
しおりを挟む「なかなかしぶといなぁ!」
次々と迫り来る壁を破壊しつつ掘り進めているが、壁の再生力が思ったよりも強い。
『こうなったら俺の新必殺技を使うしかない。今なら出来るはずだ!』
「そんなんあるの?」
『少しだけ溜める時間が欲しい、10秒くらい』
「でも今手を止めたら、すぐに再生しそうや」
「ならばその役目、某に任せて貰おう。我が切り札、お見せするでゴザル」
「任せたで!」
ヤスオは肩の上で印を構え、呪文を唱え始めた。
「咆哮は風の如く、牙は竜の如く、一切を飲み込む不条の風」
身体の周りを風のエレメントが渦巻く――。
「フートン=カゼオロチ!!」
ヤスオが両手を前に突き出すと、竜の形をした巨大な風の塊が迫り来る風を押し戻す。
さらにヤスオは即、次の術を発動する。
「舞え、カグラバチ!!」
懐から出した札を風の中へ投げ込む。
すると札へ即座に炎の蜂へと変化し、やがて風と混ざり合い無数の刃となって壁を破壊する――ただその場で即座に復活する。
やはり回復速度の方が早いのか、徐々にだが押されているようだ。
「破壊できなくとも!」
『助かった!』
再び操舵を俺に移行し、ハンマーを左腕に持ち替える。
新たな右腕に回転する魔力を、土鎧のエレメントを込める。
今度は初回と違い、さらに回転を。回転を。回転を上げる!
『ドリルナックル、バージョン2……いくぞぉぉぉッ!!』
忍術の効果が消えると同時に、俺は渾身の1撃を壁に放ち――そのまま貫き進む!
「よっしゃぁぁあああッ!」
どんどん掘り進め――俺達は、再び空を拝む事が出来たのだ。
◇◆◇◆◇◆◇
クイーンマインの頭の上に降り立ち、ガッツポーズをするルビィとヤスオ。
「脱出や!」
「やったぜゴザル!」
『……まだだ、まだクイーンマインが生きてる』
「ぐもぉぉぉぉおおおお!!?」
突如自身の中から穴が開いたせいで驚きの声を上げるクイーンマインだが、痛みに苦しんでいる様子は無い。
『こうなったらありったけの魔力を――え? もう魔力足りない?』
「誰と話しとんや」
『い、いやなんでもない。とにかく魔力足りないから、一旦みんなと合流しよう』
俺達は地上へと降り、クイーンマインの前で陣取っていたステラを見つける。
『お、ステラ!』
「ヨーイチ!!」
『おっと待った。詳細は省くけど、実は魔力が足りないんだ』
「魔力が? というか君は色が変わったな?」
ステラが怪訝そうな顔をしていると、胸元が解放されルビィが顔を見せる。
「ウチが乗っとるからな!」
「ルビィ!」
「魔力でゴザルか……」
そんな問答をしている間に、1人の女忍者が降り立った。
「ヤスオ殿、ご無事でしたか」
「ハナコ殿! 頭領はどうされてる?」
「……あのバカどうにかして下さいよ! 自分だって実戦これが初めてなのに、ちょっと学校の成績が良かったからって頭領って呼ばれちゃって……気分で人の首ハネろとか、そんな命令聞けるかって!」
「分かった、分かったでゴザル。それより今は一大事でゴザル」
「あの化物の事です?」
「――ヨーイチ殿。助けて貰った恩は必ず返します。魔力の事でしたら、某にもアテがありますので、しばらくお待ち下さい」
『分かった、早めに頼む!』
「御意――ではッ!」
ヤスオとハナコはその場から姿を消した。
「とりあえずウチも案があるで……このウチの胸とか腰とかに身体に巻き付いてるスケベな触手あるやん」
「ほぅ」
『言い方!』
「この触手を――」
「ルビィ!!」
馬鹿デカい大声と共に、テッカンさんが走ってきた。
「儂は、儂は信じとったぞ!」
「そんな鼻水垂らして、説得力あるかい! しかも酒臭ッ」
「ぐす……有事に備え、酒を補給したんじゃ。儂らドワーフの、1番の燃料じゃからな! 今度はオーラ200%で、あのデカいのをペシャンコにしてや――」
「おっと、その如意ハンマー借りるで」
「あ、コラッ!」
『如意ハンマーって名前なんだ』
「ドワーフに伝わる秘伝のマテリアル鋼の如意合金や! 込める魔力によって伸ばしたり、大っきくしたり自由自在! 限度はあるけどな!」
『それをどうするんだ?』
「父ちゃん、他のみんなを呼んで来て!」
「ルビィちゃん!」「ルビィ殿!」「無事だったんだ!」
と、集まってきた職人が俺達を囲い出したが、それをルビィが一喝。
「今はそないな事やっとる場合、ちゃうで! アレを見!」
クイーンマインは身体の修復中なのか身動きはしていないが、視線は再び俺を捉えている気がする。
「アレをぶっ飛ばすのに、みんなの力を貸して欲しいんや!」
「でもオレ達の攻撃、効かないし」
「それはウチがやる! みんなはコレに、気合と魔力を入れて欲しいんや」
そうルビィが言うと、ハンマーの柄の部分が町の中央まで届きそうなくらいに伸びる。さらにハンマーの頭にルビィの左腕にくっついていたケーブルをギフトの力で繋いだ。
「入れるって、どうやって?」
「お前らはアホか。鍛冶師の気合って言えば、これだろ!」
ドワーフの職人が懐からハンマーを取り出し、魔力を込めて伸びた柄を叩いた。
その瞬間、少しだが俺へ魔力が流れてきた。
『いや普通に握ってるだけでいいんだけども』
「ええやん。この方が、鍛冶師らしくって」
「ぐ、ぐもぉぉぉぉッ!!」
再びクイーンマインは前進を始めた。
しかし、俺達は前のように行かない。
「よっしゃ! みんな頼むで!」
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