31 / 93
第3話 鍛冶師たちとの出会い
15.鍛冶師の仕事・前
しおりを挟む「で、ウチは何をすればええんや」
『鍛冶師の仕事と言えば、鍛冶だろ!』
アイボリー色になった手の平をかざし、収納ゲートを開いた。
鎧の身体はルビィの身体にフィットするように内部が換装され、色もそれに合わせて変わっている。
ゲートの中へ手を突っ込み、まずは回収していたハンマーを取り出す。
「鍛冶ってなんも無いのにどうするんや」
『材料は、コレだ!』
さらにゲートから、鉱山喰いの骸を取り出す。片手でも持てるサイズだ。
「これ! どこにらあったん?」
『呑み込まれる前に拾ったんだよ。もしコイツ倒せなくても材料は確保できるし……』
「ちゃっかりしとるなぁ。まぁ鍛冶師の婿ならそのくらいの方がしっかりしてて好印象やで」
『うん? とりあえずこの素材と、』
「ウチのコレやな!」
本来なら土のエレメントを操作して武器や道具を精製する魔法だが、今回は素材を直接操作して精製する。
『ルビィ! お前の祝福は”エレメントの再構築"だ!』
「よく分からんけど、分かった! 魔力眼、発動!」
ルビィに身体の操作を譲渡した。
まず彼女は例の眼を発動させ、素材の魔力経路を確認する。
「ふんふん――よし分かった。いっちょ、やったるで!」
鼻歌混じりに魔力を込めたハンマーを振るい、骸を打ち直す。
黒い塊は徐々に光へと変換され、その形を変えていく。
同時に内包するエレメントの属性も変更されるのが分かる。
言わば、俺とルビィの複合エレメントと呼べばいいのか……。
「土鎧のエレメントとかどうや!」
『おぉそれっぽい』
その間にも高速でハンマーは振るう。
形はどんどん整っていく。
「これで、完成や!」
最後に右腕を光る塊に突き刺した。
『こ、これは!?』
俺の右腕は、元の何倍の大きさにもなる巨大な腕になっていた。
スッポリ嵌っているが、元の腕と同じように動かせるようだ。
俺の元々の色とは違いアイボリー色に仕上がっている剛腕を、ニギニギしながら感触を確かめる。
「名付けて、鎧袖ナックルや! ……なんか勝手に思い付いたけど、鎧袖ってどういう意味?」
『俺の知識から引っ張ったのかな。鎧袖一触って単語があって、意味は鎧の袖で簡単に敵を倒せる、みたいな』
「ええやん。ヨーイチ君にピッタリな名前や」
ズズッ――という音と共に、周りの壁に変化が生じた。
グネグネと動きながらこちらへ迫ってきたのだ。
正直かなりキモい光景だ。
『体内で未知のエレメントが発生した為、防衛機能が作動したようです』
「気持ち悪ッ」
「2人共、これからどうするでゴザル!? 出口は無いでゴザルよ!」
「出口が無い? それはちゃうで。出口も人生も、穴を開けたもん勝ちや!!」
鎧袖ナックルの内部エレメントが高速回転、循環する。
背中の排出口から大量の粒子を吐き出し、魔力と土鎧エレメントがハンマーへと伝わっていく。
「はぁぁぁッ!」
迫り来る壁や地面をハンマーで叩き潰す。
すると、アレだけ硬かったはずの壁はいとも簡単に砕けたのだ。
『さすがルビィ、早速使いこなしてるな!』
「ウチには鍛冶の材料にしか見えへんな! おっちゃん! ウチの背中に乗るんや!」
「分かったでゴザル。あと某はまだ280歳でゴザル」
『……それ若いの?』
「さぁ? とりあえず、出発や!!」
右腕のブーストを点火し、大きく振りかぶりながら――壁をぶち破るのであった。
2
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~
岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。
順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。
そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。
仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。
その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。
勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。
ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。
魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。
そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。
事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。
その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。
追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。
これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。

食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる