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第3話 鍛冶師たちとの出会い
13.VSクイーンマイン
しおりを挟むそして現在。
クイーンマインは鉱山を突き破り、さらにその足元から大中小の鉱山喰いが次々と出てくる。その数、約30匹。
「こ、こりゃあなんだ!?」
外に待機していた鍛冶師のみんなは無事だったみたいだ。
「父ちゃん!」
「ルビィか、よく無事だったな」
「そんな事より――アレ! あのでっかいの!」
「クイーンマインと俺は名付ける事にした」
「カクカクシカジカなんやけど!?」
「そうかカクカクシカジカか。昨日話した鉱山喰いの女王だ。儂も直接見た事はねぇが――でけぇな」
「どう考えてもアレ倒さんとアカンよな。どう見てもヨーイチ君、狙ってるし」
「そうだな。こりゃ、久々に腕が鳴るッ!」
よく見たらテッカンも自身の背丈より遥かに大きなハンマーを担いでいた。
「その通りですテッカン殿ォ!」
「我々もお供しますぞォ!」
「そうだ! このままだと全員くたばっちまう……やるぜ、みんな!」
他の鍛冶師達も各々の武器やハンマーを取り出した。
「「「「おおぉーッ!!」」」」
「「「ぐもぉぉおおおッ!」」」
みんなの雄叫びと共に、クイーンマイン達も鳴き声と共に突進してきた。
◇◆◇◆◇◆◇
「剛剣ハンマー術! 剛腕打!!」
「ていやぁぁぁああッ!」
敵味方入り乱れて――みたいな事にはならなかった。敵は全員俺を目掛けて突進してくるので、とにかく後ろに送らないように処理していく。
処理と簡単に言うが、中型トラックや大型タンクローリーが猛スピードで突っ込んで来るようなもんだ。
「メガインパクトや!」
「「マッスル剛腕打!!」」
次々と鋼鉄の肌を持つ鉱山喰いを粉砕していく。
とはいえコチラは10人程だ。
横をすり抜けてくる奴も出てくる。
「ヨーイチ殿、そちら行きましたぞ」
「よっしッ」
思えば今回の冒険。俺はエサになって逃げ回ってしかいない――ここら辺で活躍したい。
「行くぞ、ドリルナックル!」
説明しよう。
ドリルナックルとは肩から先に螺旋状に回転する魔力を込める事により、腕ごと回転させ敵を粉砕する予定の、俺が昨日夜なべして考えた新必殺技だ。
回転する腕が敵の硬い肌に接触し、派手に火花が散る!
凄い散る!
「うぉぉぉ――!?」
そして、俺の身体は吹っ飛んでいた。
「ダメかぁぁぁぁ!」
敵の突進してくる速度と重さに対して、俺は全然軽いのだ。
「ぐもぉぉ!!」
「やべっ」
大口を開けて迫り来るが間一髪で右手を上顎に、左手を下顎に。両手で抑えこむ事に成功した。
「いや、強いな力!」
もうそのまま食べられるんじゃないかと思ったその時だった。
「紅炎、一閃!」
黒と茶の斑模様の肌を、紅い斬撃が斬り裂いた。
身体を半分に斬られた鉱山喰いはその断面を焼かれ、血が出ることなく倒されたのだった。
「ステラ!」
「ヨーイチ、遅れてすまなかったな」
「オレらも暴れるぞぉぉぉ」
他の入り口から潜っていた鍛冶師達が続々と戻って来た。
「結構戻って来るの早かったんだな」
「私達の班も奴らを見つけたんだが――途中で何かに呼ばれたように逃げられてしまった」
「なるほど。あ、そうだ。なんか変なのに絡まれなかったか?」
「変なの? 黒い民族衣装の奴か。私達を尾行していたようだから待ち伏せをして、適当に殴って気絶させて縄で縛って連れて来た」
「あ、居た」
よく見ればステラの足元に忍者が簀巻にされた状態で引き攣られている。
「しかし――アレが女王か」
「クイーンマインだ。当人はあそこから動かないんだ」
助っ人のおかげで形勢は完全にこちらに傾いた。
「おりゃああッ!」
最後の1匹が倒されるのに、そんなに時間は掛からなかった。
残るはクイーンマインだけ――。
「ぐもっ、ぐもっ、ぐもっ、ぐもっ」
そう思っていたのを見透かしたように、クイーンマインはまた鳴き声をあげる。
「なんなんだ!?」
「ずぉぉぉおおお!!」
すると――クイーンマインはその大きな口を使い、吸い込み出したのだ。
散らばっていた鉱山喰いの骸がどんどんクイーンマインへと飲み込まれていく。
その暴風の中で、俺はある"モノ”をゲートに収納する事に成功した。
思ったより周囲の他のモノは飲み込まれて居らず、あるいは骸を回収する魔法のようなものなのかもしれない。
「ごくん――ぐもっ」
飲み込んだ後も見た目に変化は無いが……。
「後はデカブツだけだ! いくぞ!」
数人の職人がハンマーを担ぎながらクイーンマインに向かっていく。
「食らいやがれ!」
魔力により強化された肉体とハンマーを振り下ろすも全くダメージが与えられず弾かれてしまう。
「大きいだけあって、さらに硬いようだな」
次にステラが全身と剣に紅い魔力を込め、駆け出した。
「紅炎一閃!」
瞬く間に距離を詰め、必殺の斬撃を頭部へと放つが――傷1つも付かない。焦げ跡すら残らなかったのだ。
「なん、だと――?」
目の前にいるステラを無視し、特にダメージも受けなかったクイーンマインはゆっくりと、こちらに向かってきた。
「くっ、止めろ!!」
「魔力纏、フルパワー!!」
「我らが鍛え抜かれた肉体による魔力纏でも止まらぬ!?」
「ぐもぉ……」
魔力纏というのは普段冒険者がやっている魔力による肉体、あるいは装備強化の事だ。
「ぐぅぅ身体が悲鳴を上げている!!」
しかし魔力による強烈な負荷が掛かり、血が吹き出し、悪ければ骨折や筋肉断裂を起こしてしまう。
「ぐもぉ、ぐもぉぉ、ぐるぉーるぅ」
『緊急警報。魔法が来ます』
その鳴き声が呪文だったのに気付いたのは、俺ぐらいだろう。反射的に叫んでいた。
「退避だぁぁぁッ!!」
次の瞬間。
クイーンマインの目の前の地面から無数の鋭利な岩が飛び出し、周囲の職人達やステラを吹き飛ばした。
「みんな!?」
さらに攻撃は止まらない。そのままクイーンマインから直線的に及び、背後の町の一部を串刺しにしてしまった。
「な、なんやねんあの魔法の威力」
「まさか魔法まで使うとは……」
『クイーンマインが先程行った子を食べる行為により、子が受けたダメージを解析。その身にフィードバックさせ学習したようです』
「強烈な打撃や、ステラの炎攻撃も効かないか」
「そのようだな」
「ステラ!?」
こちらに戻って来たステラは自慢の装備もボロボロになり、腕や腹から血を出していた。
「い、今俺の中に――」
「そんな暇は無さそうだ」
クイーンマインはもう目前まで迫って来ている。
「ヨーイチ、ステラ! 無事だった奴らは倒れている奴らを回収してくれ!」
「ここは、ウチらに任せとき」
ハンマーを担いだテッカンとルビィが、クイーンマインの前に立ち塞がった。
「無茶だ! クイーンマインはハンマーによる打撃も学習したし、ルビィのインパクトもそうだ!」
「ならばこそ儂の出番じゃ――巻き込んで済まなかったな」
「このデカブツに、ドワーフ鍛冶魂叩き込んだる! ウラぁッ!」
そうルビィが吠えると、地面にハンマーを叩き付けてその反動で回転しながら跳び上がった。
「すぅ……魔力纏、100%じゃ!!」
盛り上がる筋肉と魔力の余波で上半身の服が消し飛ぶテッカン。
「うらぁぁぁぁッ!!」
そのままクイーンマインに駆け出す。
「ぐもっ、ぐももっ、ぐる<アース――」
「させるかぁ!!」
クイーンマインの額目掛けて、魔力により巨大化したハンマーを叩き付けるルビィ。
「ぐ、も!?」
予想外の衝撃に呪文を中断するクイーンマイン。
「やっぱそこが弱点かいな!」
よく見ると、普段は茶色いルビィの瞳が紅く染まっていた。
「恐らくアレは、ルビーアイ……洒落ではござりません」
「ドワーフ一族に稀に出現するという魔力の流れを見切れる瞳だとか。物体の魔力の流れを見る事が出来るなら、即ち弱点を見切ることも可能! 相手の肉体強度など関係ありません!」
「毎回解説ありがとうな筋肉兄弟!」
「ぬぅぅぅッ!!」
テッカンはハンマーを振り回す。
振り回す度にハンマーの槌の部分に魔力が送られ、どんどん巨大化していく。
「ルビィ!」
「あいよ!」
ルビィはクイーンマインの頭に乗ったまま、手を掲げた。
「魔力物質精製魔法、長く強い杭や!!」
今度のは相当大きいのを作成しているのだろう。徐々に周囲の土のエレメントが集り、杭になっていく――それをクイーンマインは察知していた。
「ぐもぉ……ずぉぉおおおお」
「なんや!?」
再び大口を開け、今度は――土のエレメントを吸い出したのだ。
「そんな、自然界にあるエレメントだけ吸えるんかコイツ!?」
「ルビィ! 降りて来い!」
「もうちょっとで完成でき――きゃあッ!?」
ルビィの珍しい悲鳴と共に、身体が宙へ投げ飛ばされる。
「ルビィ!!」
「ルビィ殿!」
さらにルビィの小柄な身体はそのままクイーンマインの大口へと吸い込まれ、
「ごくん」
呑まれた。
「ルビィィィィィッ!!」
テッカンの悲痛な叫びを――俺は"内側”で聞いていた。
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