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第3話 鍛冶師たちとの出会い
10.VS鉱山喰い<マインシーター>
しおりを挟む「よーし竿の高さは保持しといてなー」
「「承知!!」」
俺は今、さながら釣り竿のルアーになった気分である。
なんにも説明を受けていないが、これからどうなるかは想像がつく。
「おいこらルビィ!」
「ごめんなーヨーイチ君。でもお姉さん、ヨーイチ君が父ちゃんの為ならなんでもやるって言うからそれに感銘を受けちゃって……あと予算の都合でエサになる魔鉱石足りなくって!」
「それが本音だろ!」
「まぁ喰われる前に助けたるから、安心しとき!」
そう言いながら何やら大きな筒のようなものを取り出す。さらに筒の魔力を込めたようだ。
ボンッ――という軽い音と共に輝く光球が俺に目掛け飛んできて――炸裂した。
一瞬で目の前が白く何も見えなくなる。
「な、なんだ!?」
『光源魔法を撃ち出したようです。本来は光量を落とし、持続時間を延ばして使うものを信号弾用に調節した魔道具を使用しています』
光が収まり、坑道内は元の薄暗い明るさに戻る。
そして変化は――起こらなかった。
「あれー? やっぱ1発じゃ足りんかったんかな。しゃーない、もう何発か撃ち込んだるわ」
それから2回、3回と撃ち込まれると――、
『地下より急速に接近する反応あり。接敵まで3、2、』
「いや急過ぎない!?」
『1――』
ボゴっと硬そうな地面が割れたかと思うと、一気にその巨体は飛び出してきた。
その大きな口を開け、今にも俺を丸飲みにしようと迫って来る。
「き、来たぁぁ!?」
「せいやぁぁぁ!」
その巨大な腹を、自身の3倍以上の大きさはあるハンマーを構えたルビィが、かち上げた。
「ぐぉぉおおお」
坑内に響き渡る低い唸り声と共に、巨体は一瞬だけ空を舞い――地面に打ち付けられた。
「マジで……?」
さらにその巨大な生き物の正体が分かった。
肌は斑模様で黒いと茶色の鱗のようなモノに、全体的にヌメヌメしたような光沢で覆われている。身体に手脚はあるが凄い短足だ。
見た目が完全にオオサンショウウオ――それがサメを一回り大きくしたような生き物が襲い掛かってくるとか恐怖でしかない。
「はあぁぁぁぁ」
ふっ飛ばした鉱山喰いが起き上がるより前に、ルビィはを手の平を天にかざしながら飛び掛かっていた。
「魔力物質精製魔法、ごっつい杭や!」
その通りのモノが手の平に現れる。
巨大な杭を全力フォームで鉱山喰いの腹に投げ飛ばし、そこへ巨大ハンマーを振り下ろす。
「これがメガ、衝撃魔法や!」
杭が腹に深々と刺さり、さらにそこから光が漏れ――全身がヒビ割れたのだ。
ヒビに沿って光が巡り――そのまま全身から光が噴き出す。
そして光が収まると……鉱山喰いは絶命していた。
「おぉ。アレがルビィ殿の必殺鍛冶技のメガインパクトですな」
「魔力供給を行うコアに杭を打ち付け、そこから一気に衝撃魔法を伝わらせて始末する――まさに必殺という訳ですな」
「解説どうも」
後方筋肉解説役になっている兄弟を尻目に、俺はルビィの方を見る。
「どーやヨーイチ君。父ちゃんのギガインパクトほどじゃないけど、こんくらいウチも出来るんやで」
「これより上あんの? それよりさー、降ろしてくれない?」
「せやな。コイツの解体もあるし、今降ろして――」
『警告します。さらに地下から移動してくる物体あり。接敵まであと30秒――』
「ルビィ! とりあえずそこから――」
「え?」
ルビィが返答する前に、彼女の背中に人影が現れた。
即座にルビィは振り向き様に裏拳を放つが、影の姿は消え、同時にその小さな身体は吹き飛んでいた。
「ぐえっ」
「「ルビィ殿!?」」
驚きの余り竿を緩めた兄弟のおかげで、そのままベルトを引き千切り、真下へ落下する事により吹き飛ばされたルビィを抱き留める事が出来た。
「大丈夫か!?」
「あ、ん、うん。大丈夫やでー」
なんかぎこちない気がしたが、それより新たな敵の存在だ。
『センサーに新たな敵の存在を感知できませんでした。恐らく魔力感知を妨害する装備を身に付けています』
「何者だ!!」
鉱山喰いの死体の前に陣取った影――それは日本人の俺には、ある意味馴染み深い格好であった。
忍者――そうとしか言いようのない黒装束。頭から爪先まで全部黒い布に覆われ、唯一目の辺りだけ地肌が見えている。
「アイエー!? なんで忍者!?」
一先ずお決まりのセリフを言っておく。
しかし忍者からは予想外の反応が返ってきた。
「……き、貴様。何故、我の正体を知っているでゴザル!?」
「ゴザルって。いや忍者は有名でしょ」
もちろん俺の元居た世界で、だが。
「オートロ兄さん知ってる?」
「全く知らん」
「ウチも全然知らんけど。どんな奴らなん?」
「忍者って言えば殿様……王様に仕えていて、敵国の内情調べたり、噂を流布したり、時には敵の大将を暗殺したりとか――あと忍術や忍法っていう独特な魔法みたいな技使ったりとか」
「ふーん。つまり、アイツは誰かに雇われてウチらの邪魔しに来たって事?」
「我らの事だけで無く門外不出のニンジツとニンポウまで知っているとは! 貴様、何者でゴザッ――」
『敵生体、到着しました』
バクン――と。
下に居た鉱山喰いの死体ごと、謎の忍者は喰われた。
それは先程までのがサメサイズなら、今度はクジラサイズだ。それが突如、大口を開けながら現れた。
「ぐもぉぉぉぉおおおおおおおおッ!!」
「な、なんだのコイツ!?」
『鉱山喰いの女王――クイーンマインと呼称します』
背中から頭には結晶化した鉱石で覆われていて、それはまるで王冠のようにも見える。
「ルビィ殿、ヨーイチ殿! ひとまずこちらに上がってきて下さい」
「縄梯子降ろします!」
今は先程の死体を食べてモグモグと口を動かしているので、その隙に俺らは退散させて貰う。
「ていうか、寝たら何年も起きないちゃうんか! 女王は一番深い所で寝るから大丈夫やって。どないなってんねん!」
「とにかく離れよう! さっきの小型のより大きいだけあってノロそうだ、し……」
気のせいだろうか。
眼が退化して存在しないはずなのに、そいつの視線のようなものが、俺に向けられている気がする。
「ま、まさかなぁ」
「ぐもっ、ぐもっ、ぐもおおおおおおおお!!」
「ぎゃあああああ」
クイーンマインはいきなり走り出し、俺達を追い掛けてきた。
ちなみに隣を走っていたはずのルビィは奴が走り出した時には既にハンマーの柄を如意棒のように伸ばし、既に上に登っている。
だが、奴はそのまま俺を追い掛けてきた。
「やっぱり俺狙いかぁぁぁ」
「ぐももももももおおおおおおお!!」
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