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第3話 鍛冶師たちとの出会い
8.さぁ坑道へ潜れ
しおりを挟む「お前ら! 昨日はよく寝れたか!」
「「「おぉー!」」」
「今から坑道の地図の写しを配る。じゃがあまり信用はするな。鉱山喰いの通り道のせいで色々変わってるだろうし、崩落している場所もあるかもしれん。各々の判断に任せるが、決して無理はするんじゃないぞ」
「「「おぉー!!」」」
「はいはい。じゃあ今からいくつかの班に分けるからなー。それぞれ赤、青、黄、緑、白チームや。入る入り口も色分けしとる」
班分けを済ますと、全員に何やら腕輪を配っていく。赤や緑、茶の石が入っている。
「これはなー、坑道みたいな危険な場所に入る労働者用のお守りや。有害なガスとか吸わんように、保護する結界を身体に展開できる優れもんやで」
「へぇー。すげー便利だな」
「常時展開したら疲れるからな。必要な時だけ自動で起動するよう設定されてるから、魔力は使い過ぎたらアカンよ」
俺はルビィと筋肉盛り盛りの若い男のノーマン職人兄弟――暑苦しくて職人よりボディビルダーの方が似合ってそうな――2人の白グループだ。目の前の正面出入り口から入る事になっている。
全員が潜る訳ではなく、テッカン他数名の職人達はここで素材の運び出しの手伝いや、何かあった時の為に待機している。
ちなみにステラは赤グループで、ここから馬車でさらに奥へ行った先の入り口から入るらしい。
「ヨーイチ、武運を」
「あぁ、ステラもな」
「ヨーイチ君の面倒はウチに任せときっ!」
こうして俺達は放棄された坑道へと潜るのであった。
◇◆◇◆◇◆◇
魔法のランタンで周辺は明るいのだが、なかなか独特な雰囲気があり緊張してしまう。
中は元坑道でもあって広く、また昔使っていたであろうトロッコのレールもある。トロッコに乗って快適に移動っていう訳にはいかないが、少し楽になるので色々荷物を載せて押して歩いている。
「今更だけどさ。ルビィのその方言ってなんなの? 他の誰も、テッカンさんも使ってないし」
「ほんま今更やな……これは東の大陸のどこかにあるオーザイトって国やその近隣で使われとる方言らしくって、母ちゃんがその国の出身なんや」
「へぇー、行った事あるのか?」
「ないない、遠すぎるもん……母ちゃんはその街の人気酒場で看板娘やってたのを、修行中の父ちゃんと知り合って……そんで1ヶ月くらい店に通い詰めて、それで口説き落としてそのままこっち来たんやて」
「テッカンさん、中々熱い人だな」
「その通り! 我々も幼い頃からテッカンさんの背中を見て、鍛冶職人としての生き様を学びました!」
「こうして憧れのテッカンさんに声を掛けて頂き、至極恐悦の極み!」
「……君ら、その暑苦しいポーズ取らないと喋れないの?」
ちなみにサイドチェストとダブルバイセップスというポーズである。
「失礼。しかし健全な作品は健全な肉体により創造されます!」
「こうして肉体の美しさを磨く事もまた鍛冶屋の努め!」
「も、もう良いから……そんな近くに寄らなくても良いから!」
筋肉酔いしそうだ。
ひとまず先行するルビィの背中を見て落ち着くとする。
「ふぅ――」
「ここから下に降りていくから、トロッコ気ぃ付けてな」
「「ガッテン!」」
「でもこうやって闇雲に探してても見つかるもんなの?」
「鉱山喰いは成熟する程、眠りが深くなるんや。その辺りで寝ててくれてたら助かるんやけど、そこは運次第やな」
「えっ、じゃあ収穫ゼロなんて事も……」
「ふっふっふっ。そこは秘密道具を父ちゃんから預かって来たから心配せんでえぇ」
自慢気にトロッコに積まれた大きな麻袋を指差す。
あのテッカンさんの秘密道具――その響きに、少し嫌な予感がする。
そんな感じで世間話をしながら移動すること2時間……5階建てのビルでも入りそうなくらい広いドーム状の空間へとやってきた。俺達は例えるなら3階くらいの高さの崖上にいる。
レールもここで途切れており、よく見ると地面や壁は不規則な……噛じったような跡が残っている。つまり奴らによって地面がそこまで喰い下げられたのである。
「はー壮観やな。でも都合がいいでヨーイチ君、この広さなら秘密道具が使えそうや」
「おっ、ついにビックリでドッキリな道具が出るか!」
「よし。オートロ、ジュートロ! 早速準備や!」
「「ガッテン承知!!」」
あの2人そんな名前だったのか。
「――ヨーイチ君、ちょっと手を挙げてー」
「はーい……ってコレは何?」
「落ちんようにする為のベルトや」
「ベルトに繋がってるロープは何?」
「父ちゃん特製の捻り鉄ロープやで。魔力を通す事で、さらに強度がドンってなる仕様や」
「さらにそのロープが――長い棒の先に付いてるんだけど」
「準備できましたルビィ殿!!」
「いつでも大丈夫です!」
「よーしじゃあいって見るかー。いち、にのさん!」
「「そいやぁぁぁぁぁああああッ!!」」
「ちょ待――ぁあああああ!?」
筋肉兄弟の掛け声に俺の抗議は掻き消され――身体ごと宙へと舞っていた。
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