セカンド人生は動く鎧になって冒険者生活!?

ゆめのマタグラ

文字の大きさ
上 下
14 / 93
第2話 ギルド登録は大変だ

7.ギルドに登録しよう!

しおりを挟む
 
「王国騎士団諜報部所属、調査官のエルソードだ」
「王の爪所属、金1級冒険者のステラ=カーティス。お久しぶりですエルソードさん」
「ステラも大きく、美しくなったな。ヨドの奴から話は聞いている……そいつ等がそうだな」
「えぇ」
 
 エルソードと呼ばれた初老の、スーツにも似ている制服姿の男性はギルマスとはまた違った鋭さがある。
 ギルマスが大剣なら、エルソード氏は研ぎ澄まされたレイピアだろうか。細身の身体に長い白髪を後ろで束ねている。喫茶店のマスターとかが似合いそうだ。
 そして、ドルド一味はロープで巻いて猿轡さるぐつわを嚙まして足元に転がしている。
 
「それで彼等は?」
「弟のジェイドと、ヨーイチという冒険者仲間です」
「おぉジェイドか。君も大きくなったな」
「どうもっす」
「久々の再会を祝ってギルドの酒場で飲み明かしたい所だが、まず倉庫の調査からやらねばならん。明日にでも事情聴取に部下をギルドへ向かわせるから、それまで待機しててくれ」
「了解しました」

 それまでの厳しい顔とは裏腹に、少し泣きそうな笑顔でエルソードはステラの肩を掴んだ。

「……よく生き残ってくれた。昔も、そういえばお前だけだったな……」
「はい……」
「ヨーイチ君も――」
「は、はいっ!」
「よくやったな」
 
 そう言い残すと、エルソードさんは先に調査をしている部下と合流する為に倉庫へ向かい、足元の奴等はすぐに護送用馬車に入れられてどこかへ行ってしまった。
 
「――なんか、久々に誰かに褒められた気がする」
「冒険者とは結果を残してナンボだからな――だが、こういう日もあっていい」
「姉さん、とりあえずギルドの先生の予約入れてるから、すぐに行きなよ」
「あぁ。じゃあ、帰るか」

 こうして――俺の初依頼はようやく終わりを迎えたのであった。
 
 しかし俺はある心配をしていた。非常に重要な件だ。

(依頼、飛んじゃったけど報酬でるかな……)


 ――――――――――――

 
 これは後日談であるが――。

 ドルドが投げて寄越した硬貨の入った麻袋。律儀にも中身は本物の金貨が詰まっていた。
 それをちゃっかりステラは拾っていたのだ。
 これをギルドへ報告すると没収される恐れもあり、またその事に言及できるドルドは投獄中。

 となれば――。
 
「かんぱーい!!」
 
 飲んで証拠隠滅するしかない!
 
『残存魔力を使い、機能追加完了。経口摂取による魔力補給が可能になりました。また味覚や嗅覚についても――』
「とにかく俺も飲めるって事だろ! こんなに嬉しい事は無い!」
 
 正直この身体になって動けるようになってまだ時間が経っていないが、それでも食事が出来ない事が凄いストレスになっていた。
 例えるなら点滴のみでも活動に一切支障がないと言われたとしても、俺は何かを食べて生きたいもんだ。
 その想いが、実際に食べられるようになって強くなった。
 ちなみに食べた物は全て魔力に変換される。誰かに着て貰うほど効率は良くないらしい。
 
「おーこの前の若いもんじゃないか! 今日もワシらの英雄伝説を聞かせてやろう!」
「よーし。金1級ステラ、酒のジョッキ飲み、行くぞ!!」
「おぉーステラ! 今晩宿に行かないかー!」
「ゴクゴク――ぷはぁッ! この私に酒で勝てたならな!」

 その瞬間、酒場内の全男冒険者達が立ち上がった――。

「お前ら!! 絶対に勝つぞ!!」
 
「「「「おおおおっ――!!」」」」
 
 

 酒場中の男達が酒のイッキ飲みを始めた頃、奥の階段からギルドマスターが顔を出し、こちらを手招きしている。
 
(俺が呼ばれてる?)
 
「飲んでる所悪いな。まぁ正式な登録は明日になるから、酒で記憶無くなる前にこれを書いといてくれ」
 
 そう言ってギルドマスターが俺に渡してくれたのは――ギルドの登録申請書類だ。
 
「あっ、これって……」
「お前さんの活躍は報告で聞いている――ステラとジェイドの事、助けてくれて有り難うな」
「そんな。俺は何も――」
「誰に似たのかステラは無茶をよくやるし、ジェイドはやる気に欠ける。もしお前が迷惑じゃなかったら、これからもアイツ等とは仲良くしてやってくれ」
「――はい。でも、なんかマスターって2人の父さんみたいな事言いますよね」
「ふんっ。俺に取ってギルドのメンバーは子供みたいなもんさ」
 
 さすがに恥ずかしいのか、少し明後日を向いている。
 
「よし、それ書いたらお前も飲んで来い!」
「了解しました!」

 次の日、俺は正式に「王の爪所属 銅5級冒険者 響陽一」となったのだった。


 第3話へ続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~

岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。 順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。 そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。 仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。 その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。 勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。 ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。 魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。 そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。 事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。 その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。 追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。 これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...