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シーズン3:後輩と共に
27話 異世界への鍵を持つ者達7
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「う、うーん……」
「オダナカ、目を覚ましたか?」
目を開くと、そこには見慣れない猿が居て――。
「ここは、動物園の檻だっけか」
「誰がサルだよ。オレは羽柴藤生だ」
「はしば……羽柴ッ!」
混濁していた意識が一瞬で現実に引き戻される。
そのまま上半身を起こそうとして――頭の奥まで響く鈍痛に、思わず顔を歪めた。
「痛ッ」
「まだ安静にしてないとダメだ……」
俺は自分の頭に巻かれた包帯のようなものを触り、手に少し赤いモノ――血が付着した。
「一応応急手当で、アンタの服の袖を使わせて貰ったぞ。オレの衣服は流石に不衛生過ぎるからな」
確かに、服の左腕部分。そこが袖が肩から千切られているようだ。
「えーっと、羽柴さん。ありがとうございます」
「しかし誰かが助けに来てくれたかと思えば、まさか同じ鍵を貰った人だったとはなぁ」
羽柴という名乗るこの青年は、俺よりもがっしりとした身体で体育会系といった雰囲気がある。
「鍵……そうだ鍵は!?」
「あいつ――芝田の奴が持って行ったよ。スマホもリュックも、全部な」
「全部……」
念の為、履いていた靴の中敷きをめくってみるが――そこにあるはずの金の鍵は、やはり無かった。
それはやはり芝田も鍵の種類についてはよく知っているからであろう。
「それで? なんでアンタもオレと一緒の牢屋に入る事になってんだよ」
「それが――」
仰向けになったまま、今までの経緯を話す。
かつて”芝田”とは元相棒の関係で、異世界で共に会社を興した仲だったという。
しかし、袂を分けてからは“芝田”は異世界へ日本の武器弾薬乗り物などを持ち込み、こちらの住民相手に売りさばき、暴れさせている。
だから、彼を止める手伝いをして欲しい――そう彼に依頼されたと話した。
「恐らくグループでの会話は、貴方のスマホを使ったのでしょうね」
「なるほどなぁ。確かに養殖とかは芝田が思いついたアイデアだけど、それを商売にできるようにしてきたのはオレだ」
「貴方が異世界で会社を興したのですね」
「あぁ。ただ会社が大きくなるにつれて、アイツは自分の給料が少ないとか、汚れるような臭い仕事や残業は嫌だとか言いだしてな……」
それを言い換えれば『勤務時間や給料の問題で辞めた』になる訳か。
「一応話し合いはしたんだけど、とにかくワガママでなぁ……最終的に『わたしはもっと大きな仕事をやる為に異世界へ来たんだ。こんな魚臭い所に居られるか!」とか、中学生みたいな事を言い出して出て行ったんだよな」
「それは、大変でしたね」
羽柴は頭の後ろで手を組むと、やや上を見ながら何かを思い出したようだ。
「――しっかし、養殖場の魚持って行かれた時も犯人が分かんなかったが……確かに言われたら芝田しかいねーわな」
「そこは気付いてなかったんですね……」
「謎の乗り物に謎の魔道具を持った謎の集団としか分からんかったし、通報しても全然捕まらなかったし……まぁいっかなーって忘れてたわ。がっはっはっ」
商売用の資材を盗まれたのに豪快な人だな――。
「仮にもこっちの世界じゃ商会ギルドにも加入してる社長を誘拐して、身代金でもウチの会社に要求でもすんのかと思えば――鍵持ってるくらいしか特徴の無いオッサンも捕まえるし――アイツは何をしたいんだ?」
「オッサン……」
彼の正確な年齢は分からないが、少なくとも俺の方が年上だろうけど――そこまでオッサンに見えるのだろうか。
そういった情報交換を行っていると、俺達に声が掛けられた。
「おや、お目覚めですか」
「オダナカ、目を覚ましたか?」
目を開くと、そこには見慣れない猿が居て――。
「ここは、動物園の檻だっけか」
「誰がサルだよ。オレは羽柴藤生だ」
「はしば……羽柴ッ!」
混濁していた意識が一瞬で現実に引き戻される。
そのまま上半身を起こそうとして――頭の奥まで響く鈍痛に、思わず顔を歪めた。
「痛ッ」
「まだ安静にしてないとダメだ……」
俺は自分の頭に巻かれた包帯のようなものを触り、手に少し赤いモノ――血が付着した。
「一応応急手当で、アンタの服の袖を使わせて貰ったぞ。オレの衣服は流石に不衛生過ぎるからな」
確かに、服の左腕部分。そこが袖が肩から千切られているようだ。
「えーっと、羽柴さん。ありがとうございます」
「しかし誰かが助けに来てくれたかと思えば、まさか同じ鍵を貰った人だったとはなぁ」
羽柴という名乗るこの青年は、俺よりもがっしりとした身体で体育会系といった雰囲気がある。
「鍵……そうだ鍵は!?」
「あいつ――芝田の奴が持って行ったよ。スマホもリュックも、全部な」
「全部……」
念の為、履いていた靴の中敷きをめくってみるが――そこにあるはずの金の鍵は、やはり無かった。
それはやはり芝田も鍵の種類についてはよく知っているからであろう。
「それで? なんでアンタもオレと一緒の牢屋に入る事になってんだよ」
「それが――」
仰向けになったまま、今までの経緯を話す。
かつて”芝田”とは元相棒の関係で、異世界で共に会社を興した仲だったという。
しかし、袂を分けてからは“芝田”は異世界へ日本の武器弾薬乗り物などを持ち込み、こちらの住民相手に売りさばき、暴れさせている。
だから、彼を止める手伝いをして欲しい――そう彼に依頼されたと話した。
「恐らくグループでの会話は、貴方のスマホを使ったのでしょうね」
「なるほどなぁ。確かに養殖とかは芝田が思いついたアイデアだけど、それを商売にできるようにしてきたのはオレだ」
「貴方が異世界で会社を興したのですね」
「あぁ。ただ会社が大きくなるにつれて、アイツは自分の給料が少ないとか、汚れるような臭い仕事や残業は嫌だとか言いだしてな……」
それを言い換えれば『勤務時間や給料の問題で辞めた』になる訳か。
「一応話し合いはしたんだけど、とにかくワガママでなぁ……最終的に『わたしはもっと大きな仕事をやる為に異世界へ来たんだ。こんな魚臭い所に居られるか!」とか、中学生みたいな事を言い出して出て行ったんだよな」
「それは、大変でしたね」
羽柴は頭の後ろで手を組むと、やや上を見ながら何かを思い出したようだ。
「――しっかし、養殖場の魚持って行かれた時も犯人が分かんなかったが……確かに言われたら芝田しかいねーわな」
「そこは気付いてなかったんですね……」
「謎の乗り物に謎の魔道具を持った謎の集団としか分からんかったし、通報しても全然捕まらなかったし……まぁいっかなーって忘れてたわ。がっはっはっ」
商売用の資材を盗まれたのに豪快な人だな――。
「仮にもこっちの世界じゃ商会ギルドにも加入してる社長を誘拐して、身代金でもウチの会社に要求でもすんのかと思えば――鍵持ってるくらいしか特徴の無いオッサンも捕まえるし――アイツは何をしたいんだ?」
「オッサン……」
彼の正確な年齢は分からないが、少なくとも俺の方が年上だろうけど――そこまでオッサンに見えるのだろうか。
そういった情報交換を行っていると、俺達に声が掛けられた。
「おや、お目覚めですか」
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