サラリーマン、異世界で飯を食べる

ゆめのマタグラ

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シーズン3:後輩と共に

24話 異世界の魔法図書館へ行く2

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「やっぱ見たい! ド派手な魔法見てみたい!」
 
 隣でモナカが叫んでいるが、いつもの事なので無視を決め込む。
 ひとまず寄ったお店で今夜の飯屋について考えていると――隣のテーブル席の、冒険者風の屈強な男性2人から話し声が聞こえてくる。

「おい聞いたかあの噂」
「ああ。かの魔王国領には、魔法師を育成する為の教育機関があるって話だろ」
「――ウチの国は魔法習いたかったら、まず貴族に頭下げて高額の金を積んで、そんでもって魔法師紹介して貰って……さらに魔法師にも金積んで教えて貰わんといけないんだろ?」
「学費も割と安いらしいし、このまま平和になったら俺らも魔法学校行ってみるか?」
「おめーの頭じゃ下級魔法師にすら成れねーだろ!」
「お前もな!」
「「あっはっはっ」」

 などという会話をしっかり聞いていたモナカは、早速2人の男性の下へと寄っていった。

「あのー、そのお話……詳しく教えて下さらない?」
「なんだお嬢ちゃん」
「お子様はこんなところ来る時間じゃねーぞ」
「まぁまぁ。ここのお酒は奢りますので……」

 銀貨を2枚ほどテーブルの上に置くと、途端に男達の態度は軟化する。

「おっお嬢ちゃん分かってんなぁ」
「お姉さん、お酒2つ追加ね!」

 モナカが聞き出した情報によると、魔王国領にあるという魔法学校。その場所が分かっているのは4か所。
 魔王城のある城下町、その城下町に近い交易が盛んな町、断崖絶壁に囲まれた遺跡の町。そして最後の1か所は――。
 
 ■◇■◇■◇■◇■◇■◇■


「まだ夏には早ぇーよ……」
「相変わらずの暑さ……」

 俺は再び、この砂漠地帯にあるオアシスの町へと来ていた。
 春とか一切関係無しな、雲ひとつ無い晴天。
 ギラギラとした太陽の日差しは、容赦なく町を歩く俺達に突き刺さる。
 時より風は吹くのだが、それはどこからともなく砂を巻き上げて飛んで来るので危険だ。

「本当に、ここに魔法学校あるのかなー先輩」
「それはまぁ――私も前に来た時、制服を着た学生さんは見かけましたし」

 よく考えれば異世界に日本のように学校がたくさんあって多種類の制服があるとは考えにくく――わざわざ制服を用意しているような特別な学校。
 貴族の学校か、あるいは件の魔法学校か。

「実はさっき道行く人に聞いて、魔法学校の場所を聞いたんですが……」
「さすが先輩! 頼りになるじゃん!」
「なんでも春季休暇中らしいです、その魔法学校。それで学生さんも帰省されている方が殆どだとか――」
「……」

 膝から崩れ落ちるとは正にこの事。
 
「無駄、骨……」
「――前に来た時に見つけた喫茶店で食事でもしますか」
「あ、あのっ! すいませんニャ!」

 そう背後から、可愛らしい声で尋ねられた。
 振り返ると、フードを深めに被った人物が居た――声からして女の子だろう。隙間からは白っぽい毛が見えている。

「なんでしょうか」
「もしかして、外の国の方でしょうかニャ?」

 ここは獣人が多く住む町のようなので、明らかに人間である自分達はさぞ浮いて見えるだろう。

「そうですけど……」
「良かったニャ――すいませんニャ。ワタシを、助けて下さいニャ!」

 そう言ってフードを脱ぐと、そこには美しいほど滑らかな白い毛並みの猫獣人が居た。
 
「ワタシ、魔法学校1年生のペリコって言いますニャ!」

 思わず俺とモナカは、顔を見合わせた。
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