上 下
91 / 115
シーズン3:後輩と共に

22話 異世界のローストビーフを食べに行く2

しおりを挟む

 次の日の夕方。
 
 前にオルディンとの釣りの時に開けた事があるので、試しに1人で遺跡のゴーレムの扉から出て見たが――。

「この樹海のどこにリーエンが居るんだろうか」

 正直来たはいいものの、何もアテは無い。レイゼンもリーエンの具体的な行先は知らなかったようだったし。
 アテもなく彷徨えば確実に迷子になり、遭難する。
 どうしようかと振り返ってゴーレムを見上げ――そして気付く。

「……レイゼンの言っていた守護神って、もしかしてこのゴーレムの事なのか」

 1000年以上前からここに鎮座していた事を考えると、植物に埋もれてはいるが全く風化も朽ちてもないその存在感に――少し圧倒される。

「とはいえ、まさかこのゴーレムがリーエンの居場所を知っている訳もないし……」

 今度は遺跡の入り口まで出てみる。
 薄暗くなった森の奥は、まるで全てを飲み込むかのようにポッカリと穴が開いているようだ。
 どこか遠くで獣の呻き声が聞こえる気がするし、やはり今日は帰るかと振り返ろうとして――に気付く。

「この光は……」

 木が薄ぼんやりと光っている……実際には、木の葉っぱが光っているのだ。
 これそのものが光を発しているのかと思い、近くに寄ってみるが――どうやらそうでは無いらしい。
 三日月のような形をした葉っぱ――ふと思いつきで空を見上げれば、地球のモノより大きく丸い月が見える。

「月明りに反応して光っているとか?」

 さらによく見れば、光っている木は点々と続いているようだ。

「少しだけ、行ってみるか」

 この木を目印にすれば、少なくともここへ戻って来れるし――最悪、金の鍵もある。
 そう思い、俺は森の中を歩いていく。
 道は無いようなものなので、スマホの明かりで照らしつつ足元に気を付けながら進んでいくと――。
 
「ここは……?」
 
 樹海の中で、何故か木が全く無い空き地へと出た。
 代わりに空き地の真ん中には丸太が立てられていて、その下には白や黄色の花が生えている。

「……誰アル!?」
「おっ」

 その丸太の近くで、スコップを片手に持っているピンク髪のエルフの少女――リーエンが居た。

「――って、オダナカさん! また樹海で会うなんて、奇遇にも程があるネ!」
「いや奇遇って訳じゃなくて……」
「ン?」

 レイゼンが2週間も町でリーエンの帰りを待っている話をすると、彼女は苦笑いしながら頬をかく。

「もっとゆっくり来ればイイのに……あの子はしょうがないネ」
「それで、あの光る木を目印に歩いてたら……ここまで辿り着いて」
「あー、ムーンツリー……」
「ここってもしかして、レイゼンさんが居た村の――」
「アリャ、その話聞いたのネ。珍しいねー、あの子が自分の事を喋るなんテ」
「……かなり酔ってましたから」

 普段の彼女はよく知らないが、ダンジョンでのあの様子が普段通りなら――決して自分の事を話したがるような性格ではないだろう。
 しかし、リーエンはスコップを持ってここで何をしていたのだろうか。

「まぁ必要な数はもうすぐ集まるから、明後日には戻る予定ネ」
「ここでは何をしていたんですか?」
「ん-……それは帰ってからのお楽しみネ。というよりオダナカさんは、1人でこんな所まで来るなんて……もう遅いし、一緒に泊まっていくヨ」

 指差す方向には簡易なテントが建てられている。
 しかし空き地の真ん中でテントで寝泊まりして、魔獣などは大丈夫なんだろうか――それはともかく、さすがに一緒に泊まるのはマズいだろう。

「えーっと。そうだ。あの遺跡の所に帰る用の準備をしてあるので、私はそれで帰ります」
「ペガサスか何かカ? 分かったヨ。でも道中で魔獣とか襲われるかもしれないし、コレ持っていくネ」

 そう言って彼女は小さな麻袋を渡してくれた。
 袋は非常に軽く、少し開けて中を見ると葉っぱのようなものが見える。

「これは?」
「魔除けのお守りヨ。魔獣にも効果あるから、気を付けて帰るネ」
「分かりました……その前に」

 俺は両手を合わせ、丸太の前で礼をする。

「――昔ここをレイゼンと掘り返したんだケド、みんな砕けてるか朽ちているかで……ここにまとめて埋葬したネ」
「……でも、今やっているのはまた別の事なんですよね」
「そうだネ」
「……やっぱり。少しだけ手伝っていきますよ」
「うーん。まぁレイゼン来ているなら、早めに終わらせた方がいいネ」

 この空き地の一部には大きく深い穴が開いており、縄梯子が降りていた。
 そこで彼女は土を掘り、岩を削っては出土した何かを探しているようだ。
 
「じゃあ、今から石を渡すヨ。要るモノ、置いて帰るモノを分けていくから、袋に入れていって欲しいネ」
「この石の山を……」

 その石はどれも灰色で、形も様々だ。
 見た目にはどの石が何かなのか判別不能だが、彼女は分かるのだろうか。

「じゃあ――いくアルヨ」

 こうしてその日の夜は、リーエンに付き合って石の分別作業を行っていくのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...