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シーズン3:後輩と共に
22話 異世界のローストビーフを食べに行く2
しおりを挟む次の日の夕方。
前にオルディンとの釣りの時に開けた事があるので、試しに1人で遺跡のゴーレムの扉から出て見たが――。
「この樹海のどこにリーエンが居るんだろうか」
正直来たはいいものの、何もアテは無い。レイゼンもリーエンの具体的な行先は知らなかったようだったし。
アテもなく彷徨えば確実に迷子になり、遭難する。
どうしようかと振り返ってゴーレムを見上げ――そして気付く。
「……レイゼンの言っていた守護神って、もしかしてこのゴーレムの事なのか」
1000年以上前からここに鎮座していた事を考えると、植物に埋もれてはいるが全く風化も朽ちてもないその存在感に――少し圧倒される。
「とはいえ、まさかこのゴーレムがリーエンの居場所を知っている訳もないし……」
今度は遺跡の入り口まで出てみる。
薄暗くなった森の奥は、まるで全てを飲み込むかのようにポッカリと穴が開いているようだ。
どこか遠くで獣の呻き声が聞こえる気がするし、やはり今日は帰るかと振り返ろうとして――それに気付く。
「この光は……」
木が薄ぼんやりと光っている……実際には、木の葉っぱが光っているのだ。
これそのものが光を発しているのかと思い、近くに寄ってみるが――どうやらそうでは無いらしい。
三日月のような形をした葉っぱ――ふと思いつきで空を見上げれば、地球のモノより大きく丸い月が見える。
「月明りに反応して光っているとか?」
さらによく見れば、光っている木は点々と続いているようだ。
「少しだけ、行ってみるか」
この木を目印にすれば、少なくともここへ戻って来れるし――最悪、金の鍵もある。
そう思い、俺は森の中を歩いていく。
道は無いようなものなので、スマホの明かりで照らしつつ足元に気を付けながら進んでいくと――。
「ここは……?」
樹海の中で、何故か木が全く無い空き地へと出た。
代わりに空き地の真ん中には丸太が立てられていて、その下には白や黄色の花が生えている。
「……誰アル!?」
「おっ」
その丸太の近くで、スコップを片手に持っているピンク髪のエルフの少女――リーエンが居た。
「――って、オダナカさん! また樹海で会うなんて、奇遇にも程があるネ!」
「いや奇遇って訳じゃなくて……」
「ン?」
レイゼンが2週間も町でリーエンの帰りを待っている話をすると、彼女は苦笑いしながら頬をかく。
「もっとゆっくり来ればイイのに……あの子はしょうがないネ」
「それで、あの光る木を目印に歩いてたら……ここまで辿り着いて」
「あー、ムーンツリー……」
「ここってもしかして、レイゼンさんが居た村の――」
「アリャ、その話聞いたのネ。珍しいねー、あの子が自分の事を喋るなんテ」
「……かなり酔ってましたから」
普段の彼女はよく知らないが、ダンジョンでのあの様子が普段通りなら――決して自分の事を話したがるような性格ではないだろう。
しかし、リーエンはスコップを持ってここで何をしていたのだろうか。
「まぁ必要な数はもうすぐ集まるから、明後日には戻る予定ネ」
「ここでは何をしていたんですか?」
「ん-……それは帰ってからのお楽しみネ。というよりオダナカさんは、1人でこんな所まで来るなんて……もう遅いし、一緒に泊まっていくヨ」
指差す方向には簡易なテントが建てられている。
しかし空き地の真ん中でテントで寝泊まりして、魔獣などは大丈夫なんだろうか――それはともかく、さすがに一緒に泊まるのはマズいだろう。
「えーっと。そうだ。あの遺跡の所に帰る用の準備をしてあるので、私はそれで帰ります」
「ペガサスか何かカ? 分かったヨ。でも道中で魔獣とか襲われるかもしれないし、コレ持っていくネ」
そう言って彼女は小さな麻袋を渡してくれた。
袋は非常に軽く、少し開けて中を見ると葉っぱのようなものが見える。
「これは?」
「魔除けのお守りヨ。魔獣にも効果あるから、気を付けて帰るネ」
「分かりました……その前に」
俺は両手を合わせ、丸太の前で礼をする。
「――昔ここをレイゼンと掘り返したんだケド、みんな砕けてるか朽ちているかで……ここにまとめて埋葬したネ」
「……でも、今やっているのはまた別の事なんですよね」
「そうだネ」
「……やっぱり。少しだけ手伝っていきますよ」
「うーん。まぁレイゼン来ているなら、早めに終わらせた方がいいネ」
この空き地の一部には大きく深い穴が開いており、縄梯子が降りていた。
そこで彼女は土を掘り、岩を削っては出土した何かを探しているようだ。
「じゃあ、今から石を渡すヨ。要るモノ、置いて帰るモノを分けていくから、袋に入れていって欲しいネ」
「この石の山を……」
その石はどれも灰色で、形も様々だ。
見た目にはどの石が何かなのか判別不能だが、彼女は分かるのだろうか。
「じゃあ――いくアルヨ」
こうしてその日の夜は、リーエンに付き合って石の分別作業を行っていくのだった。
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