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シーズン2 異世界の繋がり

19話 大将とラーメンを売る(初日)3

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「らっしゃい、らっしゃい」

 例の和食料理人の格好は、この祭りにおいて目立っていた。
 他がエプロンや作業服のようなツナギを着ている屋台もある中、あの純白の衣装は珍しさもあって目を引いた。
 屋台の前のテーブルに、見覚えのある調味料が並んでいるようだ。
 左からケチャップ、マヨネーズ、ラー油、カレー粉――どれも味が濃いモノばかり。

「あー、お父ちゃん。アタシ、ここの油そばっての食べてみたーい」

 客の第一陣が到達する頃に、油そば屋の前で立ち止まる1組の親子が居た。
 フリフリのレースが付いたピンクのドレスと、白く丸い帽子を被った女の子と、シックなデザインの若い男性――。
 
「よ、よーし。店長――じゃなかった、店員さん。油そば2つね」
「へいっ。ウチは並も大盛も値段は一緒ですぜ!」
「な、なーんてお得なんだ!」
「さらに色んなトッピングに、ソースも用意してあるから、色んな味が楽しめますぜ!」
「すごーい♪」

 といった寸劇を店の前でやっているのだが、少し遠巻きに見ていた客も、興味が引かれたのか少女達の後ろへ並び出す。
 ちなみに知っている人間が見れば一目瞭然いちもくりょうぜん。子供役は女児服を着てツインテールのモナカと、父親役は恐らく油そば屋の店員なのだろう。
 小さいと言われてキレていた割に、そういった役割はこなせる――その根性はプロと言ってもいいだろう。

「わーい。この赤いソースは凄いフルーティで甘い味がするー。この黄色い粉はスパイシーでおいしー♪」
「おっ、このパリパリしたモノも美味しい……チーズもたっぷりだ!」

 異世界の人らにとっては未知の調味料だが、それを美味しそうに食べる子供(成人)によるプロモーションの効果はあったようで、列が列を呼び徐々に並んでいく。

「おい、列が通路にはみ出るから、ちゃんと言った通りに成形してこい――あーん、これも美味しい♪」

 そして俺はと言うと――。

「油そば、並で1つ」
「あいよ。銅貨5枚ね」

 さっきまでのスーツ姿から、よく現場の作業員が着ているような恰好になっている。
 頭もボサボサにして、伊達メガネも掛けている。一応、念のため。
 大将の頼みで、向こうの油そばがどんなモノなのか調べて欲しいと頼まれたのだ。

「並1つお待ちっ。横のテーブルの調味料はサービスなんで、お好みの味に調節して下さい」
「どうも」

 ここの店の油そばそのものは以前も食べた事がある。
 その時と同じように太麺の上にサイコロ状のチャーシュー、脂身、みじん切りにされたハーブのシンプルな具材だ。
 タレも魚醤をベースにいくつかの油を組み合わせ、炒ったピーナッツのような木の実が細かく砕いて入っている。これにより香ばしさも加味され、食欲をそそる。

「いただきます。ずるっ、ずるる――」

 味にそこまでの差異は感じられないが、中太麺のモチモチとした食感が弱く、いつもの麺特有の匂いもあまりしない――。
 そのせいでタレや具材の一体感もまた弱くなっている……気がする。
 
「専門家じゃないからそこまで分からないけど……インスタント麵か?」

 試しにケチャップなども加えて味わってみる。
 食べ慣れた日本人なら普通に美味しい程度の感想で終わるが――。

「なんだこれ! 食べた事ない味だ!」
「たまにここのそば食うんだけど、今日のはなんか一段と美味しいな!」
「この薄いフライ、イモか!? 今度帰ったら試してみるか!」

 周りのテーブルで食べている客達には大好評のようだ。
 みんな美味しそうにこの油そばを食べているし、行列も長いまま途切れる気配は無い。

「ふむ……」

 ひとまず完食した後に、大将の店へと戻るのであった。
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