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シーズン2 異世界の繋がり

18話 大将とラーメンを考える5

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 一方その頃――ガンドル陣営の油そば屋本店。

 内装もまた日本の割烹かっぽう料理屋のような雰囲気を出した店は、常連客にも評判だった。

 白装束の店員達。
 皆、オーガやオーク、獅子獣人といった、とにかくマッチョな見た目の種族が揃っていた。

「てめぇら! お客様がご来店されたら!」
『いらっしゃいませ!』
「お帰りになられたら!」
『またのご来店をお待ちしております!』
迷惑客ゴミの対応は!」
『ゴミ箱に詰めろ!』
「よーし。今日も朝礼始めるぞ」

 城下町、下町に合わせて既に8店舗ある油そばの店。
 油そばは、何より優れたコストパフォーマンス。麺さえ茹でられたら、ラーメン屋ほど調理のスペースはいらない。
 さらにチャーシューなどの具材、基本となるタレは全て本店で作られ、店員によって各支店に配送されるセントラルキッチン式なので、例えば調理スペースの狭いバーの居抜き物件でも営業ができる。
 そうやって隙間物件を狙い、さらに男性客が多く見込めるような場所へ開店していった。
 
 これらは全てガンドルの知恵――では無い。

「よーお疲れ様。元気にしてる?」

 扉を開けて入って来たのは、かなり小柄な女性だった。
 茶色い天然パーマの入った髪、パッチリとした瞳の幼い顔立ち。
 紺色のジャンバーと、白いパンツルックなズボンだが――背丈のせいで子供服にも見えてしまう。
 ガンドル達は威圧感しかない大男達で、その中に入るとそれだけで見えなくなってしまいそうだ。
 
『モナカ姐さん、お疲れ様っす!』
「これはモナカの姐御。最近顔見せなかったけど、どうしてたんですかい」

 いつも誰にでも高圧的なガンドルだったが、彼女の前では腰を屈めて対応する。
 適当な椅子に座ると、足を組むモナカ。

「いやー。転属になるからって引継ぎの書類作らんといけんわ、その間も業務をこなさないといけないし……なんとか目途は付いたから、こうして合間に様子を見に来たのよ」
「な、なるほど」
「なんか町の方で配ってたけど、りおらんがふぇす? ってのに出るんだってね」
「へい! 姐御にご相談しようとも思ったんですが、全然いらっしゃらないので……ウチで出る事を決めた訳です」
「いいんじゃない? 面白そうだし……なんか女を取り合ってどっかとバトルするんだって?」
「……そこに書いてある通り、ガルドっていうオレの元弟弟子がいるんですが……そいつに奪われた女を取り返す! そしてオレの方が正しかったと、バルドの奴に――」
「――ふーん。身体は大きいのに、ケツの穴はみみっちいのね」
「みみっ――」
「まぁいいわ。そういう事なら、色々手伝ってあげる。勝負なんだから、絶対勝ちなさいよ」
「そ、それはもちろん!」
「よーし。じゃ、今日はそこの彼ッピを借りようかなー♪」
「え、あ、ボクです?」
「お名前はー?」
「アランと言います……」

 モナカが指差したのは、獅子獣人。
 立派なタテガミと、割烹着からは分厚い胸板、ムキムキの腕が飛び出している。
 ちなみに彼は15歳――最近入ったばかりの若手の店員だった。
 
「……お前は今日、彼女に着いて、彼女の要望通りにするんだ。いいな」
「はい……」
「さーて。ちょっと今日はアクセサリーショップ見て回ろうかなー」

 ウキウキしながら地図を開く彼女を尻目に、男衆は深いため息を吐くのであった。

 ◇◆◇◆◇◆◇

 店を出てから、地図と道をにらめっこしながらモナカは呟く。

「さーて、この先を曲がるんだっけな」
「姐さん。アクセサリーショップとかある通りはそっちじゃねーっすよ」
 
 アランは彼女が向かおうしている方向とは、別の方向を指差す。

「――このバカっ! アクセサリーショップなんて後でいいんだよ」

 予想外の言葉に、アランは驚く。

「えぇ!? じゃあどこに行くんですかい」
「決まってるだろ。ガンドルのライバルって言う奴の、敵情視察だよ」
「えぇ!?」
「アタシと新人君なら顔も割れてないだろうし、丁度いいだろ」
「な、なんでボクが新人って分かったんです? 確かにボク、まだ入って3日ですよ」
「タテガミの長い奴はヒモで縛っとけって言うの全然徹底できてねーし、爪も長いままだし……まだ日が浅いなーって」

 その言葉に「あっ」って自身のタテガミを触る。

「す、すいません……」
「いいんだよ。これから頑張って覚えりゃ。それより、一応カップルのフリしてた方が怪しくないしさ――行こうぜ彼ピッピ♪」
「ぴっぴ?」
「あと人前で姐さんも禁止ね。ちゃんとアタシのこと、モナカちゃんって呼んでね☆」
「モ、モナカちゃん」
「はーい♪」
 
 モナカと獅子獣人のアランは腕を組み、市場へと続く道を歩いていく。
 
 果たして、フェスの行方はどうなるのだろうか――。
 
 続く。
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