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シーズン1 春夏秋冬の出会い
3話 異世界の魚料理と日本酒2
しおりを挟む「着いたぞー! 野郎ども、準備だぁ!」
「「「おぉー!」」」
「――はっ」
いっそ横になって寝ていたら、海賊の掛け声で目が覚める。
ドアの向こう側の通路を、あるいは天井の上を海賊達が忙しそうにしているのが伝わってくる。
しばらくして物音が減ったと思った直後、ドアの前に先ほどの大男がやってきた。
「出ろ」
鍵を開け、そのまま俺は両手を縄で縛られ連行された。
船の通路から階段を上り甲板へ出ると、どこかの巨大な洞窟の中に作った港が目に入った。
「こっちだ」
縄を引っ張られ、そのまま着いていく。
洞窟の奥へ奥へ歩いていく、そうすると遠くで灯りが見え――周囲が岩壁で囲まれた小さな町が姿を現した。
道行く人はみんなこの大男と同じように青いバンダナを頭か腕に巻いており、そしてみんなマッチョなあらくれ者であった。
「よーハンス。その男はなんだよ。どっかの捕虜か?」
「昨日の村から乗り込んだみたいなんだよ。ちょっとお頭の所に連れていく」
「密航者かよ。今時珍しいな――昔はよくクラーケンや人食い魚を釣るのにエサにしたよな!」
「ハッハッハッ。先代は豪快だったよな!」
もう暗雲とした気分である。
密航者というのはどこの世界も厳しい扱いを受ける。当たり前の話だ。
さらに海賊という元々無法者の集まりである――人道的な扱いを受けるかどうかすら怪しい。
(少なくとも即エサになる事は無さそうだけど……)
彼らがその気なら、俺はあの場で即海に叩き込まれていただろう。
少なくとも、お頭とやらと話をする余地はありそうだ。
「半年前だっけな。お頭怒らせてチ〇コ切り取られて海にバラまかれた奴。ありゃ傑作だったな!」
「ハッハッハッ!」
やっぱり無理かもしれない。
再び俺は連行され、この町でも1番小奇麗な建物へとやってきた。
どう考えてもお頭の屋敷だろう。
ガンッ、ガンッ――。
「お頭ァ、入りますぜー」
獅子の装飾に金属のワッカが付いたモノを鳴らしながら、扉から入っていく俺達。
床は赤い絨毯に、何かの獣の毛皮のラグが敷いてある。壁紙も上等そうなだが、それより目を引いたのはいくつもの魚拓だ。
大小色んなのが飾られているが、どれも同じ人物の名前が記されている。
大男がさらに奥の部屋の扉を開けると、そこには髑髏の装飾をあしらったゴテゴテした装飾の付いた椅子に腰掛け、テーブルの上で何かの作業をしている若い男が居た。
「おう、ハンスか。どうした」
日焼けでくすんだ金髪を青いバンダナで巻き、赤いタンクトップから覗いている二の腕にも髑髏の入れ墨をしている筋肉質な男。目の前のハンスよりも幾分か小柄だ。
部屋を見渡すと、魚拓の他にも海を描いた絵画なんかも飾られている。お頭の後ろには大きな海賊旗が掲げられている。他にも青く鈍く光る石が乗せられている木箱や、剣など刃物が飾られた棚も置いてある。
お頭は何やら難しそうな顔をしながら羊皮紙に何かを書き込んでいるようだ。
「密航者です。どうやら昨日俺らが寄った村から乗り込んだみたいで……」
「あぁん? おめぇら……ちゃんと確認したんだろうな」
「も、もちろんですよ――もしかたら積み込んだ荷に隠れていたのかも」
「それを確認できてねぇっつってんだよ!」
乱暴に近くの木箱を蹴り倒すお頭。
一撃でその木箱は粉々になり、屈強な肉体を持つハンスでさえ青ざめた。
「た、大変失礼しましたッ! 今後こういう事の無いよう、全力でチェックしますッ!」
「ふんっ……お前は下がってろ」
「へ、へい」
ハンスはプルプル震えながら部屋から出て行った。
部屋には、俺とお頭の2人のみが残された。
「……見た所、賞金稼ぎや冒険者って面には見えねぇな」
「は、はい。私は、その、食材を取り扱っている商人でして」
こうなった以上、ヘタな嘘は禁物だ。
商人というのも本当の話だ。実際、米問屋としてラーメン屋と女騎士へ卸しているのだし。
目的も正直に話すしかない。
「ほぉ」
「海賊の皆さんの町で、非常に美味しい魚が食べれると聞いて――居ても立っても居られず、船に乗り込んでしまいました」
あの白い鍵がどういう理由で船に繋げたのか。それはやはり海賊の町に何かあるのだろう。
それに青い石は見覚えがある。確か、冷気を発することが出来るのだ。そして刃物の棚には、刺身包丁や解体用の大きい包丁までズラっと揃っている。
間違いなく、このお頭は釣った魚を料理するのが好きなのだ。
よく見れば、羊皮紙には何かの料理のメニューが書いてある。
「ほぉ! 俺の店の噂も外へ漏れているのか――そろそろどっかの町に店を出すかな」
「お頭さんのお店……?」
「……お前、食材を取り扱っているって言ったよな」
「は、はい」
「酒はあるのか」
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